「乙霧村の七人」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|井岡瞬

著者:井岡瞬 2014年12月に双葉社から出版

乙霧村の七人の主要登場人物

戸川稔(とがわみのる)
「乙霧村の惨劇」の犯人。犯行当時32歳。

松浦貴一郎(まつうらきいちろう)
松浦家の当主で「乙霧村の惨劇」の犠牲者。事件当時73歳。

松浦英一(まつうらえいいち)
松浦貴一郎の孫。「乙霧村の惨劇」でひとりだけ生き残った。事件当時12歳。

泉蓮(いずみれん)
立明大学文学部教授。「乙霧村の惨劇」のノンフィクションを執筆。文学サークル『ヴェリテ』の顧問。

友里(ゆり)
立明大学四年生。文学サークル『ヴェリテ』所属。小説の主な語り手である「わたし」。

乙霧村の七人 の簡単なあらすじ

二十二年前、乙霧村の松浦地区で、一家六人のうち五人が殺されるという事件が起きました。

今回、立明大学文学サークルの一行は、サークル活動の一環として、いまは無人となったその部落を訪れます。

悪質ないたずらをして遊ぶうちに、謎の男が現れ、斧を持ってサークル員たちを追いまわしはじめました。

雨がふり、夕暮れが迫るなか、彼らは男から逃れることができるのでしょうか……。

乙霧村の七人 の起承転結

【起】乙霧村の七人 のあらすじ①

文学サークル、乙霧村へ

乙霧村は、信州の山間にある村です。

二十二年前、村を支配していた松浦一族の家に、戸川稔が押し入り、当主夫婦を含む五人を惨殺しました。

生き残ったのは、当時十二歳だった松浦英一ただひとり。

それから二十二年後のいま、〈わたし〉(=友里)を含む、立明大学文学部の文学サークルの六名が、車に乗り、乙霧村を訪れました。

サークルの顧問を務める教授が、乙霧村の事件をノンフィクションで出版しており、現場を見学してみようとしたのです。

深い山間の村に入り、途中までは車で入れましたが、その先は歩きです。

途中の橋は、不思議なことにだれかが手入れした跡がありました。

奥まったところに位置する松浦地区は、いまは無人の集落となっていました。

現場の松浦家に入ってみると、そこにも誰かが手入れしている気配がうかがえました。

そうこうするうち、サークル員の酒井玲美が、頭に斧を突きたてられて倒れているのが見つかりました。

皆が暁天するなか、それはパーティーグッズを使ったいたずらだと種明かしされます。

と、そこへ、正体不明の男が現れ、「何をしている」と詰問したのでした。

【承】乙霧村の七人 のあらすじ②

白いカッパを着た男

男は、おもちゃの斧を頭に刺した玲美を見て、おののきます。

玲美が、これはおもちゃだと言うと、怒り出しました。

男が振った特殊警棒に当たって西崎浩樹が倒れ、意識を失います。

そのときぽつぽつと雨がふりだし、男は「雨がふると、あいつが来る」と言って去っていきました。

サークル員たちは協力して、意識を失った浩樹を空き家に運び入れました。

車を橋のところまで持ってくるために、新堀哲夫が出ていきます。

ところが、哲夫はすぐに戻ってきました。

「逃げろ」と叫んでいます。

哲夫はあの男に追いかけられていたのです。

男は雨よけのために白いカッパを着て、手には本物の斧を持っていました。

みなが逃げ出します。

〈わたし〉は熊よけの鈴を捨てて続きます。

しばらくはみんないっしょに逃げていましたが、逃げるにつれ、散り散りになっていきます。

〈わたし〉は以前捻挫した足首を、またしてもいためてしまい、走るのも困難な状況です。

〈わたし〉は部落のはずれにある橋をめざしました。

ところが橋に着いてみると、そこには、あの男がつれてきたらしい犬がつながれ、さかんに吠え立てるではありませんか。

おまけに、グループのなかで一番仲の悪い飯田昌枝がやってきて、〈わたし〉を犬のほうへ突き飛ばして逃げていきました。

〈わたし〉はほうほうの態でそこから逃げ出しました。

それからは、ほかのメンバーに出会ったり、別れたりしながら逃げ惑い、最終的には松浦家の納屋へと入りました。

そして、事件当時、ひとりだけ助かった英一と同様に、二階へのぼります。

しかし、白いカッパの男は二階にのぼってきます。

〈わたし〉は男に呼びかけました。

「もう終わりにしてください、英一さん」と。

【転】乙霧村の七人 のあらすじ③

事件の真相を探る

英一さん、と呼びかけたことで、白いカッパの男は動きを止めました。

やはり彼は、「乙霧村の惨劇」でたったひとり生き残った松浦英一なのです。

英一が納屋を出ていくのを〈わたし〉は追いました。

〈わたし〉が足を引きずっているのを見た英一は、おんぶして車まで運び、駐在所へ連れていってくれました。

すぐに警察署へ連絡が行き、隠れていたサークル員たちが助け出されました。

みな、たいした怪我はしていません。

ただ、浩樹だけが行方不明です。

そうして、事件から十日たったとき、行方不明中の浩樹が、ニセ学生であることがわかりました。

改めて考えてみると、浩樹の写真がまったくないのでした。

乙霧村でみなが写真を撮っていたときも、浩樹は巧みに撮影から逃れていたのでした。

わたしはことの真相を探るべく、聞き取り調査を始めます。

二十二年前、生き残った英一を引き取った斉藤家の邦江に話を聞きました。

英一を引き取ったのは財産目当てだと言われたけれども、貴一郎が全部飲んでしまい、ろくな財産などはなかった、と言います。

また、犯人の戸川稔についても聞きました。

稔の母、民子は、貴一郎の製材所で働き、貴一郎にもてあそばれ、彼の子をはらみました。

それが英一です。

英一が幼いころ、民子は、同じ製材所で働く男を夫にあてがわれましたが、その後も貴一郎との関係が続きました。

やがて、事故で働けなくなった夫は、会社をクビになります。

そして、働き続けた民子が死ぬと、夫は自殺しました。

その後、稔は失踪し、あの日に戻ってきて事件を起こしたのです。

〈わたし〉はサークル員にも話を聞きました。

その結果、今回の旅行メンバーがかなり不自然に集められたことを知ります。

【結】乙霧村の七人 のあらすじ④

意外な真相

〈わたし〉はさらに聞き込みを続けます。

再び斉藤家の邦江さんに話を聞きました。

彼女は浩樹を知っていました。

今回の事件の少し前、浩樹が英一を訪ねてきたといいます。

その少し前、大学生たちが松浦地区に入って、バーベキューの失敗から火事を出すという騒ぎがありました。

そしていままた、立明大学の学生たちが松浦地区を訪れようとしているので、協力して懲らしめてやろう、と稔が英一に持ち掛けた、というのです。

〈わたし〉は執念をもやして、とうとう浩樹に話を聞くことができました。

浩樹は、頭のいかれた文学サークルの面々をこらしめるために計画した今回の事件を説明してくれました。

そんな浩樹は、戸川稔がどこかへ失踪している間、ある女性との間にできた子供でした。

稔は女が妊娠していることを知らずに、松浦地区へもどって、事件を起こしたのでした。

ただし、真相は、「乙霧村の惨劇」として知られるものとは違っていました。

稔は、貴一郎の妻の手引きで戻ってきて、長年の憤懣から、文句を言おうとしただけなのです。

しかし貴一郎は頭に血をのぼらせ、妻と孫娘を殺し、稔を傷つけました。

稔は喜一郎を返り討ちにし、その後もどってきた貴一郎の息子と相打ちになったのでした。

英一は利発な子で、こうした事件のすべてを覚えていたのでした。

乙霧村の七人 を読んだ読書感想

二部構成になっています。

第一部は、乙霧村を訪れた文学サークルの一行が、謎の人物に追い掛け回されるという、ホラー映画によくあるような話になっています。

第二部は、一転して、事件のあと、〈わたし〉が調査を続け、真実にたどり着く、というミステリの造りになっています。

つまり、一冊で、ホラーとミステリの両方を楽しめる作品なのです。

そう聞くと、もしかすると、どっちつかずになるのではないか、と心配する人がいるかもしれません。

そこは大丈夫です。

ホラーとしても、主人公は助かるのだろうか、とハラハラドキドキしながら読むことになりますし、ミステリ部分でも、隠されていた仕掛けに、あっと驚くことになります。

どちらも充分に楽しめるエンタメ小説だと言えるでしょう。

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