「キリン」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|山田悠介

キリン 小説

著者:山田悠介 2010年9月に角川文庫から出版

キリンの主要登場人物

(麒麟)
ジーニアスバンクによって生まれた男の子。心優しく真面目な子

(秀人)
麒麟の兄。麒麟と同じくジーニアスバンクで生まれた男の子。ずば抜けた頭脳の持ち主であるが感情があまりない。

(厚子)
麒麟と秀人の母親。ジーニアスバンクの精子を競り落とし二人を生んだ。

(鳥居)
ジーニアスバンクを立ち上げた人物。天才が増える世の中を望んでいる。

(熊野)
天才養成学校の講師。麒麟のことをとても執着する。

キリン の簡単なあらすじ

皆川厚子は二人の子供を身ごもります。

麒麟と秀人です。

秀人は厚子の望み通り育ちますが、麒麟は厚子から見放され天才養成学校という施設に入ります。

11年後、麒麟と秀人は再開します。

秀人は自分が鳥居の息子であることを知り、麒麟の父親も判明します。

秀人は鳥居を殺害したことを自首します。

数年後、秀人は刑務所で生活を送り、麒麟は厚子と一緒に行った動物園の絵を秀人が描いのを見て、涙を流し幕を閉じます。

キリン の起承転結

【起】キリン のあらすじ①

 

二人の子ども

皆川厚子は保険会社に勤務していました。

営業成績の悪い厚子は、社員から馬鹿にされて悔しい思いをしてきました。

そんな厚子は、ジーニアスバンクという会社の噂を耳にします。

その会社は天才を作るためにあらゆる優秀な人間の精子を集めていました。

会社を立ち上げたのは皆川という人物で、優秀な人間が増えることを強く願っていました。

その会社が精子を売るためのオークション会場を開き、厚子はクローバー113という精子を競り落としました。

その精子はIQ180の天才数学者の精子で、厚子は今まで馬鹿にしてきた人間たちを見返してやろうと思うのでした。

厚子は子どもを身ごもり、名前は秀人にしました。

秀人は驚異的な速さで頭脳が成長していき、厚子の思い通りの子どもとなります。

秀人はわずか3歳にして小学校高学年の問題を解くようになります。

その後も驚異的な頭脳の発達を見せる秀人ですが、秀人の容姿に満足いかない厚子はまた新しい子どもを身ごもるために、精子を競り落とします。

その精子はハート333で、ノーベル賞受賞者の精子です。

厚子は二人目の子どもを身ごもり、麒麟という名前を付けます。

厚子は麒麟に大きな期待を寄せ、麒麟の成長を見守るのでした。

【承】キリン のあらすじ②

 

成長

麒麟は順調に育ち、1歳の時には正確な言葉のやり取りが出来るようになり、歩けるようになる頃には小学生の算数問題を解くようになっていました。

そして容姿もきれいな男の子に育っていったのです。

そして時が流れ、秀人は8歳、麒麟は4歳になります。

そんなときに、「ザ・ジーニアス」という全国から集められた天才があらゆる特技を見せ、グランプリを競う大会が開かれます。

秀人はこの大会に参加します。

様々な分野の天才の子どもたちが特技を披露する中で、秀人は偏微分方程式を解くと言います。

秀人はすべての問題を解き、会場全員を驚かせました。

そして見事にグランプリに輝きます。

秀人は世間から注目を集め、会場に来ていた皆川も秀人に将来、世界を驚かせる天才になることに大きく期待を寄せていました。

そして麒麟も秀人と同じく価値のある人物だと思っています。

鳥居の期待通り、麒麟は驚異的な速さで頭脳が育ち小学6年生までのカリキュラムをすべてマスターしていました。

【転】キリン のあらすじ③

 

異変

厚子は二人の子どもが順調に育っていることに満足し、会社でも馬鹿にされることも無くなりました。

そんなある日、麒麟の背中に大きなシミのようなものが出来ます。

厚子は心配になり、病院に連れていきますが、どこにも異常は見当たりませんでした。

そして麒麟が塾から帰ってきて、麒麟が受けたテストを見ると、ほとんど点が取れていませんでした。

中学生の問題になると急に問題が解けなくなってしまった麒麟は、厚子から酷い仕打ちを受けるようになりました。

厚子は落胆し、麒麟も嫌な毎日を送るようになった頃に、二人の男性が厚子の元に訪れます。

男性二人はジーニアスバンクの関係者で、麒麟を天才養成学校に送る相談をしました。

厚子は麒麟を天才養成学校へ送ることにしました。

天才養成学校には麒麟と同じような子どもが大勢いました。

この学校はジーニアスバンクの子どもが失敗した際に、それが世間に知られないように隠蔽することが目的で鳥居が考案した学校でした。

麒麟は熊野という人物に出会い、そこで20歳まで毎日10時間勉強するのだと言われました。

その中で自分の得意な分野を見つけ伸ばすのだと言います。

そして麒麟は絵の才能を開花させ、麒麟は画家を目指すように熊野に言われ努力するのでした。

麒麟は梨沙や悠輔といった仲間を見つけ、長い期間天才養成学校で生活を送るのでした。

【結】キリン のあらすじ④

 

真実と別れ

麒麟が天才養成学校に入ってから数年後、秀人は厚子の元を離れ、アメリカのロックヒルズ大学の教授となり講義を行っていました。

秀人は3週間後に東京で世界数学サミットで研究成果を発表する予定でした。

麒麟は秀人が日本に来日することを知り、11年ぶりに秀人と再会しました。

しかし秀人は倒れ、病院へ運ばれます。

秀人はアルツハイマーと診断されました。

ショックを受けた麒麟の元へ麒麟が画聖展で最優秀賞を獲得したことことが伝わります。

それから何日かして麒麟は厚子と再会します。

厚子は麒麟が画聖展で最優秀賞を獲得したことを知り、一緒に暮らそうと言います。

麒麟は厚子のことを許し、二人で秀人の元へ向かいます。

秀人は目を覚ましており、自分が書いた論文にミスがあったことがアメリカから知らされ、自分は本当に天才の子どもなのかと疑い真実を確かめるために鳥居の元へ向かいます。

鳥居の家に向かった秀人は鳥居の日記を読んで愕然とするのでした。

麒麟も野口と鳥居の元へ向かいます。

そこには血を流して倒れた鳥居がいました。

野口は麒麟にこの場から去るように言います。

麒麟は厚子と梨沙や悠輔がいる自宅マンションへ向かいました。

そこへ突然秀人が現れ、自分が鳥居の息子だという真実を知り鳥居を殺害したことを伝え、自分を生んだ厚子を殺害しようとします。

秀人の携帯に一本の電話がかかり、野口から秀人の腹違いの兄と合わせたいことを伝えます。

そこへ向かうとそこには熊野がいました。

熊野は秀人の父親が鳥居であること、そして麒麟の父親が自分であることを告げます。

真実を知った麒麟にジーニアスバンクのことを警察に告げ秀人は鳥居を殺してしまったことを自首します。

それから数年が経ち、秀人は刑務所で生活し始めました。

もう厚子や麒麟のことは覚えていませんでしたが、昔厚子と麒麟と一緒に動物園に行った時の絵を描いて麒麟は涙を流し、秀人のいる刑務所を後にします。

キリン を読んだ読書感想

この物語は、優秀かそうでないかで差別されてしまう少し悲しい物語でした。

麒麟は天才の遺伝子を引き継いだはずなのにという期待をされて生まれたのにそうではなかったと親から見放されてしまったので辛いと思います。

しかしそんな逆境の中でも諦めず自分には絵の才能があることを見つけ開花させていきました。

さらに自分のことを見放した厚子や秀人のことをずっと家族だと思っていたので、心の優しい子なのだと思いました。

厚子の二人の子どもは天才の子ではありませんでしたが、二人とも自分なりに努力したと思います。

この物語では、天才の遺伝子を引き継いでいることが全てではないということが分かりました。

自分なりに努力して新しい才能を開花させることが出来ると作者は伝えたかったのだと思います。

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