「でんでら国」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|平谷美樹

でんでら国

著者:平谷美樹 2015年1月に小学館から出版

でんでら国の主要登場人物

善兵衛(ぜんべえ)
本作の主人公。頭の切れる知恵者。60歳になったので、村の掟により食い扶持を減らすため<御山参り>と称される老人ばかりの山村<でんでら国>で暮らすことになる。

舟越平太郎(ふなこしへいたろう)
別段廻役を務める代官所の役人。穏田探しを命じられ、善兵衛たち老人が暮らす<でんでら国>に近づく。

竹次(たけじ)
でんでら国の住人。昨年御山参りした。少々知恵が浅い。

三造(さんぞう)
平太郎に使われている密偵。

弥五郎(やごろう)
平太郎に使われている密偵。

でんでら国 の簡単なあらすじ

江戸時代末、陸奥国の外館家は南部家から五千両を工面するように命じられます。

困った外館家は飢饉の年ですら厳しい年貢を滞りなく納めた大平村に目をつけ、穏田探しに奔走することになります。

大平村では<御山参り>という名のうば捨ての掟があります。

捨てられた老人達が向かうのは<でんでら国>という理想郷です。

この理想郷を守りたいパワフルな老人達と、なんとしても穏田を見つけたい役人達との戦いの物語です。

でんでら国 の起承転結

【起】でんでら国 のあらすじ①

知恵者善兵衛<でんでら国>へ 廻役平太郎<大平村>へ

大平村では60歳になるとすべての役割をとかれ御山参りと呼ばれるうば捨ての掟によって村を離れ山に入らなければなりません。

知恵者として生きてきた百姓の善兵衛も60歳になったので御山参りに出ます。

御山のむこうには捨てられた老人達の村<でんでら国>があり、ここは元気な老人も体が弱った老人も童返り(認知症)老人も力を合わせ助け合って生き生きと暮らしています。

善兵衛はうきうきとでんでら国入りします。

とき同じ頃、本家筋の南部家から御用金の調達を命じられた外館家は何とか五千両を捻出するため、飢饉のときでさえ年貢を滞らせることなく納めた大平村に目をつけます。

届け出をしていない開墾を疑われたのです。

穏田です。

この時代穏田は死罪です。

西根通代官所に勤める舟越平太郎は代官の田代に命じられ大平村の穏田探しに出ることになりました。

供は密偵の三造と弥五郎です。

三造と弥五郎はもともとは百姓で、平太郎の父、満右衛門に拾われたという経緯があります。

その満右衛門は60歳、隠居して5年、ときどき息子平太郎の顔も忘れるようになってきています。

【承】でんでら国 のあらすじ②

知恵比べ

平太郎は大平村の名主、庄兵衛の家に逗留し、庄兵衛や、白雲寺の住職、蓮雲にも話を聞きますが、棄老も穏田も否定しかわされてしまいます。

平太郎は一人で山の麓から探索を始めますが、住民数の割に広い大平村は一人では手に余ります。

三造、弥五郎に加え、手下4人増やします。

物の怪や亡魂の類が苦手な平太郎は、善兵衛や竹次のいたずらのような邪魔だてにおびえながらも探索を続けます。

そんな中、弥五郎が沢で小屋を見つけ、でんでら国の千太と出会います。

千太と話し、歳も聞きだしたものの、弥五郎が目を離したすきに千太は消えてしまいます。

粗忽者の竹次の小細工があだとなり、平太郎の頭が回り出し、ある策を講じるため一旦、撤退します。

8日ぶりに自宅に戻った平太郎は痴呆症の父満右衛門を目の当たりにし、仕事に没頭して父のことを忘れていたことに罪悪感を覚えます。

善兵衛たちは、次に平太郎達が多人数でもどってくることに備え、策を講じ、仕掛けを準備します。

【転】でんでら国 のあらすじ③

善兵衛と平太郎の出会い

平太郎が一旦退いて再び大平村に出直したのは、桜が散り、桃が咲く頃でした。

この時期は田に水を入れる代掻きが行われるからです。

代掻きが行われると濁った水が流れてきます。

その支流をたどって穏田を見つけようとしたのです。

相手を油断させようと一人で大平村に来た平太郎はようやく濁った支流を見つけます。

しかし、でんでら国の見張りを請け負う少女鰍(かじか)に見つかり鰍の遣う狼に驚かされ、滝に落ちてしまいます。

足を折り、動けなくなった平太郎を鰍はでんでら国に運びます。

平太郎は、老人達に世話をされ介護されます。

歩けるようになるとでんでら国の中を見聞してまわりました。

10日以上経っても戻らない平太郎にしびれを切らした代官所の田代は足軽ら50名以上を率いて大平村に入ってきました。

山狩りをする田代達をでんでら国の爺婆、大平村の面々があの手この手で翻弄します。

狼にカモシカ、ツキノワグマまで使い挙げ句の果てに動物の糞で田代達を襲い、田代を人質にとってしまいます。

しかし、平太郎にはでんでら国の存在を知られてしまっています。

田代を奪おうが、でんでら国に検地が入ることから逃れられるでしょうか。

外館家は何がなんでも五千両を必要としています。

【結】でんでら国 のあらすじ④

でんでら国の亡者が領主を救う

5つの棺、座棺の桶、田代と平太郎の乗った籠、十数名の老人達の葬列が、お鈴、太鼓、シンバルのような法具を鳴らし、「亡者の野辺送り」と声をあげながら、城下に入ります。

城内で領主、外館師直に5つの棺から五千両を出し見せつけます。

でんでら国を忘れてもらう代わりにこの五千両を差し出すと善兵衛は言います。

ただ五千両は、奥州金と呼ばれる偽金でした。

正規の小判、一分金より金の純度の高い奇妙な偽金。

つまり、でんでら国には金山があり偽金作りをもしていたことが判明します。

しかし純度の高い偽金を鋳つぶし再生させて使えば問題はありません。

領主は交換条件を飲み、五千両を手にします。

しかし再生の手間を省いたことなどから公儀の知るところとなり、でんでら国を公儀に明け渡すという筋書きが作られてしまいます。

後日、田代や平太郎が足軽を従え大平村に入ってみると百雲寺の住職と若い僧と寺男以外誰もいなくなっていました。

またでんでら国ももぬけの殻でした。

善兵衛たちは先を見越して新しい村を開墾していたのです。

元のでんでら国は幕府が入植者を募り、その後、金山の村として賑わいました。

さて平太郎ですが、実は、新しいでんでら国を突き止めていました。

それは自分が暮らしてみたでんでら国が老人にとっての理想郷だと認めていたからです。

そう、父満右衛門をでんでら国に託すためでした。

でんでら国 を読んだ読書感想

百姓や老人を人とも思わない侍達を知略で翻弄させる善兵衛たちにワクワクが止まりません。

どんな終焉が幸せなのか、認知症、老いについても考えさせられますが、重いわけではなく軽やかに読み進められます。

でんでら国には安心して老いていけるシステムが充実しています。

例えば、でんでら国に入った老人はまず子犬を飼い始めます。

童返り(認知症)になったときの介助犬になるのです。

年寄りどうしが暮らすでんでら国では老いや死は「明日は我が身」なので気を遣うことなく助け合って生きています。

百姓の生きるための知恵というより、でんでら国は人の理想郷のようです。

百年に一人と言われる知恵者、善兵衛は理想のリーダーです。

こんな上司のもとで働きたいと思わされました。

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