「海神の島」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|池上永一

海神の島

著者:池上永一 2020年9月に中央公論新社から出版

海神の島の主要登場人物

汀(なぎさ)
長女。男を手玉に取りながら夜の街で働いている。

泉(いずみ)
本作の主人公。次女。研修者。男と同等に、男に頼りたくなくて自分の力で何事もタイプ

澪(みお)
三女。地下アイドル。女に嫌われるぶりっこな性格。

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海神の島 の簡単なあらすじ

汀・泉・澪の3姉妹は、祖母に宝を見つけたら大金を与えると言われ、宝探しに行きます。

大金を得る代わりに墓守の仕事もついてまわりますが、3人はお金のことが先決で宝探しにくりだします。

宝を見つけたのは澪で、大金を寄付して祖母孝行をするという結末です。

海神の島 の起承転結

【起】海神の島 のあらすじ①

海神の島にある宝探し

汀・泉・澪の3姉妹は沖縄県出身です。

祖母に墓守を頼まれますがそのときは3人とも断りました。

三人には将来の夢があったからです。

汀はホステスになること・泉は研究者になること・澪は映画にでることでした。

墓守をしている暇はありません。

しかし後に、危篤になった祖母から宝を見つけて墓守をすると大金を得られると知られます。

同時期に3人汀は、店を構えること、泉は舟を購入すること。

澪は地下アイドルから脱却して映画に出ることの資金として大金をほしがります。

大金を得るためには祖母に言われた宝を見つけてくることが条件です。

しかし大金を得ると同時に墓守の仕事もつきまといます。

そして宝がなんなのか。

どこにあるかはわかっていません。

わかるのは祖父が宝に関係している、という事実のみでした。

墓守のことは後で考えることにしてにして三姉妹は相手に出し抜かれないようにそれぞれの方法で宝探しに繰り出します。

お金のある汀は人を雇いながら、泉は公平に勝負をすることが好きなので地道に。

澪は地下アイドルでお金がないので仕事をしながら細切れの時間で探します。

【承】海神の島 のあらすじ②

姉妹喧嘩

宝探しは難航します。

宝の場所も宝が何かもわかっていないので、三姉妹はそれぞれ別の検討をつけた島に向かいます。

しかし、海神島が何かすらわかりません。

長女汀は、お金を使い、目をつけた島に向かいます。

 次女泉は考古学者なので自分の船を持っているので、それを使って、島に向かいます。

三女澪は島に行くお金はありません。

地下アイドルの嫌なファンから送られてくるファンレターに涙しながら、警察に職務質問をさせたれたり、ファンレターの中に骨が入っていたりと難航しています。

マネージャに渡されたのは夜行バスの片道切符です。

長女汀と次女泉ははじめから澪を相手にしていません。

互いをライバルだと思っているので、宝探しをする一方で、相手の妨害も始めます。

違うやりかたで宝を探していたのに、いつも到着する場所は同じになります。

そして一番遅れていた澪もそこに到着しますが、宝だと思って提示したそれは勾玉で祖母が提示した宝ではありませんでした。

振り出しに戻り、3人は鑑定場所からちりぢりになります。

【転】海神の島 のあらすじ③

海神島の正式名称

一度宝をはき違えた3姉妹は再び宝のある島の場所から徹底的に調べ直します。

突き止めた海神島の本当の名前は尖閣諸島でした。

もし本当にそこに宝があるとしても、沖縄出身の人間が、ましてや日本人が簡単に立ち入れる場所ではありません。

そこで、長女汀はアメリカの、次女泉は中国の力を借ります。

長女汀はクラブのママなので色目を使い、男を落として尖閣諸島入りを果たします。

次女泉は中国軍相手にフェアに交渉して、自分自身がボンベを背負い、研究に必要な情報を手に入れるという約束で命をかけて水に潜り尖閣諸島入りを果たします。

一方澪は、船がうろついている海もなんのその、泳いで尖閣諸島入りを果たしたのでした。

海神島でついに宝を手に入れた次女でしたが3人そろえば姉妹喧嘩の始まりです。

なぜか味方だと思っていた軍が長女汀と次女泉に襲いかかります。

あれはどこの国の軍だといぶかしがったところで、棚からぼた餅の方式で澪が宝の骨を手に入れます。

地位アイドルの澪相手にファンレターを送っていた相手は台湾の偉い人でした。

【結】海神の島 のあらすじ④

優勝者澪

宝を手に入れた澪は鑑定をしてもらって本物という証明ももらいました。

いざ大金が手に入るというそのときになって、澪は大金を寄付する約束をします。

宝探しに精一杯になっていた3姉妹は危篤になっていた祖母の死に間に合いませんでした。

昔から澪は何もやってきませんでした。

長女汀は若いころから琉球舞踏を習い、最年少の舞妓芸妓になって、さっさとお得意様と上昇結婚して、東京にクラブを持ち始めます。

次女泉も、両親に反対されていたのにもかかわらず、留学できたのは祖母のおかげでした。

それで今の考古学者のの立場があります。

三女澪は昔から祖母にかわいがられていませんでした。

なぜなら澪が本気を出さないからです。

本気を出して初めて祖母の口利きでテレビCMに出ることができました。

上の姉たちは既に自立しています。

地下アイドルで生活ができないときも祖母からの仕送りでやっていけていました。

澪は恩返しとして大金を寄付することに決めたのです。

映画の主演は大金がなくても、自分の力で役を取ってみせると、ようやく三女澪が本気になって物語は終わります。

海神の島 を読んだ読書感想

池上永一の作品は面白いのが多いけど、遅筆なところが難点です。

そして小難しい歴史の話をしている印象でした。

だから、主人公が沖縄出身の人でも現代日本が舞台の話なんて書けるのだろうかと期待半分に読み進めました。

暗い話の中でたまにふざけることが多い印象だったので、初めから軽さに寄せていたことが意外です。

尖閣諸島や沖縄の基地問題など、重い題材も扱っていますが、三姉妹の喧嘩やコミカルな台詞の応酬がそれを払拭して、決して社会派を気どりたくは無いのだという作者の意思が見えました。

物語のメインは宝探してこれは娯楽として楽しんでほしいという作者のメッセージなのだと思います。

その中で沖縄の問題も頭の隅に置いてほしいということだと感じました。

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