【ネタバレ有り】人間の証明 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:森村誠一 2004年5月に角川文庫から出版
人間の証明の主要登場人物
ジョニー・ヘイワード
東京で殺害された米国ニューヨーク市在住の黒人青年
棟居弘一良
警視庁麹町警察署の刑事
ケン・シュフタン
ニューヨーク市警察25分署の刑事
中山種
霧積温泉旅館の元従業員で、ダム堰堤から落とされ死亡
八杉恭子
お茶の間を賑わす売れっ子のセレブ家庭問題評論家
人間の証明 の簡単なあらすじ
警視庁麹町署の棟居刑事は、はるばる米国から日本にやってきた黒人青年の殺人事件の捜査担当となりました。点と線を結ぶような捜査を続けていく中、お茶の間を賑わす売れっ子のセレブ評論家の八杉恭子を容疑者として推測しました。物的証拠が全くない中、セレブ八杉が、罪を認めるかどうか、黒人青年の残した思い出の品を見せながら、人間性の欠片に問いかけます。
人間の証明 の起承転結
【起】人間の証明 のあらすじ①
粗末な服で身をまとった黒人青年ジョニー・ヘイワードが都内の一流ホテルのエレベーターに乗り込んできた。
顔をみると、東洋との混血のようで、とてもしんどそうだった。
エレベーターが最上階に到着し、他の乗客が降りると、青年は座り込んでしまった。
みると、胸部に深くナイフが刺されており、間もなく死亡した。
この殺人事件の捜査担当となった麹町署の棟居弘一良刑事は、このホテルまで黒人青年を乗せたタクシー運転手から、青年が「ストウハ」と意味不明な言葉を口ずさんでいたと証言を得ます。
また、青年を羽田空港から滞在先まで乗せたタクシー内から、西條八十のボロボロになった詩集が発見されました。
棟居刑事は、言語学者に助言を求め、運転手は、ストローハット(麦わら帽子)を、「ストウハ」と聞こえたのだと推測しました。
また、事件現場のホテルの最上階の形状が、遠くからみると、麦わら帽子のように見えることが分かりました。
そのため、青年は、それを見て向かったのだと考えました。
【承】人間の証明 のあらすじ②
麹町署は、ニューヨーク在住の黒人青年殺人事件の手がかりを得るため、ニューヨーク市警察に情報提供を依頼しました。
担当となった25分署のケン・シュフタン刑事から、青年がニューヨークを去る際に、「キスミー」に行くと、ハーレムの隣人に告げたという情報を、棟居刑事は得ました。
他方、棟居刑事は、タクシー内で発見された西條八十の詩集の中に、「麦わら帽子と霧積という地名」を題材にした一編の詩に着目しました。
「キスミー」とは、群馬県の霧積(きりづみ)温泉のことではないかと推測しました。
棟居刑事が霧積温泉に向かい、旅館の関係者から話を聞くと、昔、旅館に勤めていた「中山種」という老婆から、珍しい客人が来ていたという話を聞きました。
珍しい客人とは、外人のことではないか、しかも、黒人ではないかと考え、中山種の自宅に行きました。
しかし、直前に、彼女は、ダムの堰堤から転落死していました。
棟居刑事は、殺人事件と考え、中山種の本籍のある富山県八尾町へ向かいます。
【転】人間の証明 のあらすじ③
セレブ八杉恭子も同郷
家庭問題評論家の八杉恭子がお茶の間を賑わせていました。
ベストセラーの著書を出し、知らぬ人はいないという程の人気ぶりです。
夫が政治家、息子と娘はエリート学校に通う、誰もが羨む家庭を築いていました。
棟居刑事は、中山種の故郷である富山県八尾町で、情報収集に当たっていた時、この八杉恭子も八尾町出身であることを偶然発見します。
また、捜査の中、中山種が死亡した日に、政治家の夫が、群馬県で講演をしていたこと、講演会場から霧積温泉まではさほど離れていないこと、講演会に夫人である八杉恭子が同伴していたことを調べ上げます。
他方、米国側の捜査により、黒人青年ジョニーの父親が、戦後日本にいたこと、ジョニーが日本に行く前に、資産家の車に飛び込み、高額の示談金を得ていたことが判明しました。
父親は既に病死しているが、ジョニーの日本への渡航費を捻出するため、父親はこのような行動に出たのであろうと推測しました。
【結】人間の証明 のあらすじ④
八杉恭子の自供
黒人青年ジョニーと中山種の両方の殺害を巡り、棟居刑事はこう仮定しました。
すべてが推測の域であるが、恐らくそうに違いないと。
戦後の混乱時、八杉恭子とジョニーの父親は恋に落ちたのでは。
そして生まれたのがジョニーではないか。
当時、米国軍人との結婚は難しい社会情勢でした。
夫と息子と別れる前に、思い出をつくろうとして、霧積温泉に旅行したのでは。
それを知っていたのが旅館で働いていた中山種ではないか。
今や絶大な社会的地位を得た八杉にとって、過去に黒人と関係を持っていたことが世間に知れ渡るのは致命傷です。
このため、ジョニーを殺し、過去の事情を知っている中山種を殺したのではないか。
物的証拠がない中、棟居刑事は八杉恭子を事情徴収することにしました。
八杉に母性、人間としての心が欠片でも残っているのであれば、証言するはずです。
その欠片に、棟居刑事はかけることにしました。
ジョニーとの思い出の品である麦わら帽子と詩集を前にして、すべてを八杉は自供し、真実を話しました。
ジョニーは成長した自分を見て欲しいと純粋な気持ちで母親に会いに来たのだと。
しかし、八杉は嬉しさが全身に込み上げる中、現在の地位を失いたくない。
気が付いたらナイフを刺していたと。
母を思い、ジョニーは、母が犯人だと分からないように、ナイフを刺されながらも殺害現場から遠く離れていったのだと。
青年は、麦わら帽子に見えるホテルの最上階に向かって行き、母親と出会えた喜びを胸にしまい生涯を終えたのであった。
人間の証明 を読んだ読書感想
主人公の警視庁麹町署の棟居刑事の父は、戦後直後の混乱期にアメリカ兵にリンチされ死亡しました。
母は別の男を作って棟居をおいて逃げました。
アメリカ兵や母のような人間性最悪な人たちを憎みながら、刑事になりました。
人の死をおろそかにするのは許せないとの信念を持って刑事をやってきた棟居刑事と、最初は罪を認めないものの、黒人青年との思い出の品を見せられ、涙を流すセレブ八杉とのやり取りに感動しました。
八杉が母性を残していたこと、黒人青年を殺害したのが苦渋の決断であったこと、母にナイフを刺された黒人青年が、母が罪を負わないように必死になって、現場から離れていったことなど、人間性をテーマにした感動の小説でした。
中学生の息子にも読ましたいです。
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