バベル九朔(万城目学)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

バベル九朔

【ネタバレ有り】バベル九朔 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:万城目学 2016年3月に角川書店から出版

バベル九朔の主要登場人物

九朔満大(きゅうさくみつひろ)
テナントビル「バベル九朔」の管理人。小説家を目指し執筆中。

九朔三津子(きゅうさくみつこ)
バベル九朔のオーナー。満大の母

九朔初恵(きゅうさくはつえ)
ミシン工場の社長。満大の伯母

九朔満男(きゅうさくみつお)
満大の祖父。バベル九朔の創立者。

バベル九朔 の簡単なあらすじ

九朔満大は祖父が残したテナントビル「バベル九朔」の管理人業務をこなしながら、小説家デビューを目指し執筆活動を続けています。ある日正体不明のカラス女との遭遇をきっかけにして、不条理な世界へと迷い込んでしまうのでした。

バベル九朔 の起承転結

【起】バベル九朔 のあらすじ①

管理人業務は意外に大変

九朔満大は大手ハウスメーカーに勤めていましたが、ある日突然に小説家を志すために退職してしまいました。

創作活動の場所に選んだのは、祖父の満男が70年前に打ち立てたテナントビル「バベル九朔」です。

地下1階にスナック、1階に中古レコード店、2階に居酒屋、3階に絵画ギャラリー、4階に探偵事務所。

満大は5階の一室に管理人として転がり込んで、目下小説の新人賞一次選考突破を目指して執筆に取り組んでいます。

店子の家賃滞納問題に空き巣被害、水上メーターの異常数値。

管理人としてのルーティンワークに追われて疲れ果てていた上に、突如としてビルの屋上に出現したカラス女を目撃したショックで4日間ほど引きこもり状態になってしまいました。

【承】バベル九朔 のあらすじ②

祖父が贈った言葉と絵

3年間かけて書き上げて後はタイトルを決めるだけだった長編小説の応募締切は、4日の間に過ぎてしまいました。

自己嫌悪から落ち込んでいた満大の下に、久しぶりに母親の三津子からの電話がかかってきます。

バベル九朔の店子の中でも30年を超える古株、3階のギャラリー経営者・密村が家業を継ぐために賃貸契約を解除するとのことです。

満大が密村にお別れの挨拶に行くと、今は亡き祖父の意外なエピソードを知ることになります。

何をやっても長続きしなかった若き日の密村に贈った「くたばるまでここでやれ」というアドバイス、祖父が自ら描いてプレゼントした湖の中央に黒い塔が聳える風景画。

祖父の絵を見た満大は、今月の異常な水道使用量との関連性に気付きました。

【転】バベル九朔 のあらすじ③

絵の中の大冒険

満大が絵画の中央部分に指先から触れた途端に、巨大な塔が見下ろしている湖の中央に立っています。

大量の水道水が流れ込んでいた先は、祖父が遺した絵の中にある湖でした。

バベル九朔の管理人室に戻ろうとした満大に話しかけてきたのは、真っ黒なワンピースを身にまとった10歳くらいの女の子です。

彼女の名前は九朔初恵。

満大の伯母にあたり現実の世界では65歳を迎えているはずでしたが、絵の中では何時までも年を取ることはありません。

初恵を追いかけて塔のらせん階段を登っていく満大は、過去にバベル九朔に入居しながら店を畳んでいった数々のテナントを目撃します。

消え失せた初恵に代わって出現したカラス女から、祖父が創り上げたバベルの秘密が語られました。

【結】バベル九朔 のあらすじ④

究極の選択

普通の人間には持ちえないパワーを秘めた祖父に、バベルの作り方を教えたのはカラス女です。

テナントの中で夢破れた若者たちの挫折感を吸収しながら、バベルはこれまで成長を続けてきました。

崩壊が始まったバベルを存続させるためには、祖父の血を受け継いだ満大が絵の中に留まらなければなりません。

「戻る」といって元の世界へ帰りバベルを見捨てるか、「ここにいる」といってバベルの中で管理人として生きるのか。

究極の選択を突き付けられた満大が「ここにいる」と宣言した瞬間に、5階の管理人室へと辿り着きます。

1600ページを超える自信作ながらもタイトルが決まらなかった原稿用紙の束の表紙に、満大は「バベル九朔」と書き込むのでした。

バベル九朔 を読んだ読書感想

「人間、どんなものにもすぐ慣れる」というセリフが心に残りました。

ビルの裏手が駅の高架に接していて朝から晩まで騒音と振動に見舞われる悪条件の中でも、ものの数日で順応してしまう主人公の適応力が溢れた言葉になります。

サラリーマンから作家への異例の転身を目指していく奮闘ぶりには、若き日の著者自身の姿を彷彿とさせるものがありました。

何時しか原稿用紙に物語を書き連ねることが、日常生活の一部となっていく様子が圧巻です。

時には夜中過ぎまで全てを放り出して小説に心血を注ぎ込み、昼過ぎにようやく目覚めて紅茶とパンで朝食を楽しむ自堕落さも憎めません。

何者でもなかったモラトリアム青年が、心から熱中できるものを見つけた瞬間が感動的です。

コメント