「汚れた雪」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|アントニオ・マンジーニ

汚れた雪

著者:アントニオ・マンジーニ 2020年2月に東京創元社から出版

汚れた雪の主要登場人物

ロッコ・スキャヴォーネ(ろっこ・すきゃヴぉーね)
アオスタ警察本部の副警察長

イタロ・ピエロン(いたろ・ぴえろん)
ロッコの部下。

レオーネ・ミッチケ(れおーね・みっちけ)
山荘のオーナー。

ルイーザ・ペック(るいーざ・ぺっく)
レオーネの妻。

ルイージ・ビヨーナ(るいーじ・びよーな)
スキー場の圧雪車班チーフ。

汚れた雪 の簡単なあらすじ

ロッコは生粋のローマっ子。

生まれてからずっとローマで育ち、ローマの警察に勤めていた凄腕刑事です。

しかし、不祥事を起こしてしまい、アルプス山脈近くのアオスタ警察に左遷されてしまいます。

寒く、ローマとまったく違う環境で働くことになったロッコは不満いっぱいです。

そんな彼が、地元スキー場で起きた殺人事件の捜査を指揮することになったのです。

頼りない部下たちを率いて、ロッコの捜査が始まります。

汚れた雪 の起承転結

【起】汚れた雪 のあらすじ①

スキー場のバラバラ死体

イタリア北部にあるシャンポリック・スキー場で遺体が見つかりました。

運悪く、遺体は雪を被っていたため、スキー場の雪をならしていた圧雪車に巻き込まれ、バラバラになってしまっていました。

この殺人事件の捜査を担当するのは、アオスタ警察本部の副警察長ロッコ・スキャヴィオーネです。

ロッコはもともとローマでめざましい活躍をしていた刑事ですが、懲罰人事でアオスタに飛ばされたのでした。

ロッコは慣れない雪山に悪態をつきながら現場へと向かいます。

遺体は見事にバラバラで、被害者は男であるということがかろうじてわかる程度でした。

検死の結果、被害者は夜の7時頃に死んだことがわかりました。

気管からは丸められたバンダナが見つかっており、これが死因だと判明します。

また、被害者の胸にはイスラム語のタトゥーが彫られていました。

検死の途中で、警察署から連絡が届きます。

ルイーザ・ペックという女性がやってきて、夫のレオーネが昨晩出て行ったきり戻ってこないというのです。

ロッコは警察署に戻り、ルイーザと話をします。

レオーネの胸にはイスラム語のタトゥーがあるという話が出て、それが検死のときに確認したものと同じだとわかって、圧雪車に巻き込まれた遺体がレオーネだと判明しました。

【承】汚れた雪 のあらすじ②

怪しいスキーインストラクター

遺体の身元がわかったことでロッコは本格的な捜査を始めました。

まず、ルイーザから話を訊き、レオーネが兄のドミニコを電話で口論をしていたことを突き止めます。

また、スキー場の圧雪車班のチーフのルイージから、ルイーザが妊娠していることと、ルイーザにはオマルという元婚約者がいて、現在スキースクールのインストラクターをしていることを聞かされます。

捜査中のロッコの元へ、友人のセーバが訪ねてきます。

二人がレストランで食事をしているときに、セーバは麻薬を輸送するトラックがやってくるという話をします。

二人はその麻薬を拝借する計画をたてるのでした。

翌日、ロッコはドミニコ夫妻から話を訊きます。

レオーネとの口論の原因は、レオーネが共同名義の不動産を現金に換えたがっていることでした。

事情聴取のあと、ロッコはスポーツ用品店にいき、スノーブーツとレオーネが使っていた手袋を購入します。

さらにスポーツ用品店の店員のアンナリータから、事件現場には監視カメラがあることを教えてもらいます。

レオーネは部下を連れて、画像データが保存されている事務所へ向かいます。

そこには30分ごとの画像データが保存されており、事件当日の18:00の画像だけ、スキースクールの扉がわずかに開いていることを発見します。

ロッコはスキースクールのインストラクターで、扉の鍵を持っているオマルの家を訪れます。

オマルは留守でしたが、ロッコは彼の家に押し入ります。

そこには、元婚約者のルイーザが写真が未だに飾られていました。

ロッコは、オマルがまだルイーザに執着していることを見てとります。

【転】汚れた雪 のあらすじ③

ロッコの裏の仕事

オマルの家からの帰り道、ロッコと部下のイタロはレストランに寄ります。

そこでロッコは、イタロに麻薬輸送車の話を聞かせて、一枚噛まないかと誘います。

イタロは喜んで協力すると請け合います。

食事のあと、ロッコは判事の元へ行き、捜査の進捗を報告します。

ロッコはレオーネが手袋をしていなかったことに注目していました。

ロッコは、レオーネは殺される直前に煙草を吸っていたから手袋を外したという推測をたてていました。

しかし、レオーネと同じ手袋を買ってみると、煙草を吸うには片方を外すだけで事足りたのです。

その後、科捜研のチーフに話を聞くと、現場からはレオーネ以外の血液も発見されたということと、現場にあった煙草の残骸がマルボーロではなかったこと、ライターが発見されなかったことが判明します。

これでロッコは、レオーネが手袋をはめなかった理由に見当をつけました。

スキーインストラクターのオマルには出頭命令が出ていましたが、未だに署に顔を出しにきませんでした。

業を煮やしたロッコは、スキーインストラクターたちのたまり場になっている酒場に行き、オマルを見つけます。

反抗的な態度をとるオマルを殴りつけて、ようやく話を聞き出すことに成功します。

事件当時、オマルはルイーザに会いに行っていたのです。

レオーネの宿泊事業がうまくいかず、ルイーザはオマルに十万ユーロの借金をしていて、オマルは返済の催促をしていたのです。

ロッコは、オマルを殴って出た鼻血をティッシュで拭き取っており、それを分析にかけるために密かに持ち帰ったのでした。

その日の深夜、ロッコ、イタロ、サーバは、麻薬輸送トラックの摘発計画を実行します。

コンテナから87人のスリランカ人と大量の武器を見つけるという想定外の事態があったものの、隠された麻薬を発見し、いくつか懐に収めることに成功します。

【結】汚れた雪 のあらすじ④

事件の真相

ロッコが持ち帰ったティッシュについた血を検査した結果、バンダナに付着していた血液型は、オマルのものと判明します。

同時に、レオーネは圧雪車に轢かれるまでは、雪の中でかろうじて生きていたことがわかりました。

捜査も大詰となったところで、ロッコの元に驚くべき知らせが届きます。

レオーネは不妊治療の精密検査を受けていて、無精子症と診断されていたのです。

それなのに妻のルイーザは妊娠していた、これは不倫相手がいることを意味します。

ロッコは、レオーネの葬儀でレオーネの妻ルイーザと、スキー場の圧雪車班のチーフのルイージを逮捕します。

不倫相手はルイージで、彼がレオーネを殺害したのでした。

レオーネが両方の手袋を外していた理由は、巻き煙草を吸おうとしていたからです。

そして、ルイージはいつも巻き煙草を吸っており、レオーネを襲う直前に自分の煙草を勧めていたのです。

また、彼は圧雪班のチーフなので、部下に指示を出して圧雪車を自分の思いどおりに動かせます。

ルイージはレオーネを気絶させ、気管にバンダナを押し込み、その身体に雪を被せてから、レオーネがいる道を通るようにと部下に指示してレオーネを圧殺させたのです。

ルイーザも殺人に協力していました。

ルイーザは、オマルと親しい関係で、彼からスキースクールの鍵をかすめとるのはたやすいことでした。

その鍵を使えば、スキースクールに侵入して彼のバンダナを盗むことができます。

ルイーザは自分はレオーネが殺されるとは夢にも思わなかったと言います。

もしものときのために、携帯電話にルイージがレオーネを埋めた写真がある、それを見せるから助けてほしいと、ルイーザはロッコに頼みます。

ロッコは、写真は見るがルイーザを助けるつもりはない、と告げて彼女の前から去っていきました。

汚れた雪 を読んだ読書感想

酒と女が大好きで、それなりの地位にいながら法律に反する仕事もするという型破りな刑事ロッコの活躍を描いた警察小説です。

ロッコは十分にキャラが立っているのですが、彼の周りにいる人物も強力な個性派ぞろい。

ジャーナリストに奥さんを取られたためすべての記者を憎む警察長コルシ、機嫌の上下が激しく独自の政策を事あるごとに披露する判事のバルディ、真面目なのにロッコの悪事にほいほい手を貸す部下のイタロなど、魅力的なキャラクターたちが話を盛り上げてくれます。

一番面白かったのは麻薬を摘んだトラックのガサ入れをするシーン。

不法入国した87人のスリランカ人がぞろぞろ出てきたときは、ロッコと同じように唖然としました。

スリランカ人たちが凍えないように、近所の家に連れて行ったり、不法入国を見逃したりとロッコの優しい一面も垣間見える場面でした。

警察小説としての水準も高く、被害者が手袋をしていなかったことから真相に迫る展開は見事です。

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