「オーダーメイド殺人クラブ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|辻村深月

オーダーメイド殺人クラブのネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|辻村深月

著者:辻村深月 2011年5月に集英社から出版

オーダーメイド殺人クラブの主要登場人物

小林アン(こばやしあん)
ヒロイン。中学2年生。クラスでも上位の女子グループに所属。

徳川勝利(とくがわしょうり)
アンのクラスメート。 美術部員で絵が上手い。女子からの人気はイマイチ。

徳川先生(とくがわせんせい)
勝利の父親。 3年の学年主任で担当教科は英語。

斉藤芹香(さいとうせりか)
アンの友人。クラスの女子のリーダー。

櫻田美代(さくらだみよ)
音楽専科の教師。 徳川先生の恋人。

オーダーメイド殺人クラブ の簡単なあらすじ

リア充の女子たちとうまく付き合っていた小林アンは、ある日を境に仲間はずれにされてしまいます。

すっかり学校が嫌になったアンが自分の殺害を依頼したのは、クラスでも「イケてない男子」の烙印を押されていた徳川勝利です。

徳川の人間的な魅力と複雑な家庭の事情を知ったアンは、死の誘惑を振り切って生きることを決意するのでした。

オーダーメイド殺人クラブ の起承転結

【起】オーダーメイド殺人クラブ のあらすじ①

ヒレラルキーてっぺん女子が昆虫系男子に急接近

雪島南中学校に通っている小林アンはバスケットボール部に所属する2年生で、3組の中でもヒエラルキーのてっぺんにいる斉藤芹香と一緒に行動していました。

芹香が好きだった野球部の男子生徒との間にトラブルを起こしたしたことがきっかけで、アンは2学期に入ってからクラスで孤立していきます。

放課後に独りぼっちで帰宅するようになったアンが、ひそかに言葉を交わすようになったのは徳川勝利というクラスメートです。

父親は同じ雪島南中学で3年生の学年主任をしている英語教師、無造作なヘアースタイルに不格好な猫背、極度に口数が少ないために何を考えているのか分かりません。

これまでは芹香とふたりで「昆虫系」と読んでバカにしていたアンでしたが、意外にもたくさんの本を読んでいて大人みたいな話し方に圧倒されてしまいました。

夕暮れ時にサイクリングロードの近くにある河原で小動物を虐殺している徳川を目撃したアンは、突発的に「私を、殺してくれない?」とお願いします。

【承】オーダーメイド殺人クラブ のあらすじ②

殺され方をオーダーメイド

ふたりはありきたりな少年犯罪として忘れ去られてしまうのではなく、10数年後も語り継がれていくような派手な殺され方をあれこれと考えていました。

アンは新聞に掲載されている殺人事件の記事をスクラップブックにして、徳川は死体のスナップショットばかりを集めた外国の写真集を参考にして。

いつしか秘密のクラブ活動のように熱中していき、休みの日には秋葉原の写真スタジオにまで出掛けてしっかりと予行練習まで行います。

学校ではアンに対するいじめは陰湿になっていく一方でしたが、授業もバスケ部の練習も休むつもりはありません。

我慢してでもアンが学校に行くのは、彼女が殺された時のショックを芹香や取り巻きの生徒たちに存分に思い知らせてやるためです。

12月に入って最初の月曜日、中学2年生がオーダーメイドした殺人は年度末のニュースとしても世間を騒がすでしょう。

徳川と話し合って決めた決行日の12月6日、アンは待ち合わせの河原へと向かいます。

【転】オーダーメイド殺人クラブ のあらすじ③

朝日を浴びてそれぞれの道をいくふたり

午前2時の約束の時間になって大幅に遅れてやってきた徳川は、突如として「他にやらなければならないことがある」と言い出しました。

徳川が本当に殺したかったのはアンではなく、徳川先生とお付き合いをしている若い女性教師の櫻田美代です。

中学生になる前に徳川の実の母親が亡くなってしまったこと、1年ほと前から櫻田が徳川家に上がり込んで身の回りの世話をするようになったこと、櫻田が徳川先生の子供を妊娠していること。

アーミーナイフを握りしめて激白する徳川が櫻田のもとに行かないように、アンは腕を回して力いっぱい抱き締めます。

誰かを殺すなら私を殺してからにして、私を殺せないなら誰のことも絶対に殺さないで。

徳川の手からこぼれ落ちたナイフは月明かりを弾いて足元で輝いていて、東の山の向こうに広がっている空がうっすらと明るみ始めてきました。

いつもと変わらない朝を迎えたふたりは別々の方向へと歩き出して、それ以後は卒業するまで口を利くことはありません。

【結】オーダーメイド殺人クラブ のあらすじ④

殺人ノートとの別れと東京への旅立ち

芹香はいつの間にかアンを無視するのを止めて、以前のようにあいさつを交わしたりお互いの着ている服や持ち物を褒め合ったりするようになりました。

櫻田はアンたちが3年生に進級するのと同じタイミングで、他の中学校への異動が決まります。

徳川先生とのスキャンダルが生徒たちの間では有名になっていましたが、腹部の膨らみはそれほど目立っていません。

アンは必死に勉強して学区内でも屈指の進学校へ入学して、高校卒業後は都内の大学の英文学科へ合格しました。

引っ越しの準備に追われていた春休みのある日に、数年ぶりにアンの自宅を訪ねてきたのは徳川です。

見違えるようにがっしりとした体格で背が高くなっていた徳川は、中学生時代にふたりで殺人計画を書き留めていた1冊のノートを差し出します。

あの12月6日に死にきれずに生き残ってしまったアンは、これから先の余生をなるべく楽しく生きる覚悟です。

何年も浪人するというのが当たり前の美大に一発合格したという徳川に、アンは東京での連絡先を教えてもらうのでした。

オーダーメイド殺人クラブ を読んだ読書感想

「リア充」「昆虫」などとお互いに好き勝手にレッテルを張り合う、今どきの中学2年生の教室の風景が思い浮かんできます。

ふとしたきっかけからスクールカーストの最下位へと転落していく、主人公・小林アンが痛々しかったです。

学校にも家庭にも居場所がなかったアンに救いの手を差し伸べていく、徳川勝利の大人びたまなざしが印象的でした。

ランクインや格付けばかりで人間関係を築き上げてきたアンが、初めて他人と一対一で向き合うことの大切さに気づいていく瞬間をうまく捉えています。

自分や憎い相手を傷つけることばかり考えていた中学生の男女が、ラストで踏み出す小さな一歩も忘れがたいです。

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