「恐怖の仮面王/電人M」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|江戸川乱歩

「恐怖の仮面王/電人M」

著者:江戸川乱歩 1988年8月に講談社から出版

恐怖の仮面王/電人Mの主要登場人物

明智小五郎(あけちこごろう)
日本一の私立名探偵。

小林芳雄(こばやしよしお)
少年探偵団団長。明智探偵の名助手。

二十面相(にじゅうめんそう)
二十の違う顔を持つ怪盗。人を殺さない主義。

遠藤博士(えんどうはかせ)
化学者。元大学教授。大発明をして二十面相に発明の秘密を狙われる。

木村青年(きむらせいねん)
遠藤博士の研究助手。

恐怖の仮面王/電人M の簡単なあらすじ

東京に火星人やロボットが出没しては「月世界旅行をしましょう」というビラを置いていくという奇妙な出来事が起きます。

これは月世界旅行テーマパークの宣伝だったのです。

大胆な宣伝のおかげでテーマパークは大繁盛します。

一方、遠藤博士の大発明を狙ってあの二十面相がやってきたのです。

博士の息子を誘拐して引き換えに発明の秘密を明らかにしろというのです。

明智探偵、小林少年らの尽力でテーマパークと二十面相の関係がわかります。

テーマパーク内で遠藤博士の発明を使って二十面相らは無力化されます。

遠藤博士の息子も無力化されるものの無事に救出されます。

恐怖の仮面王/電人M の起承転結

【起】恐怖の仮面王/電人M のあらすじ①

火星人、出現。

火星人が東京に現れ、奇妙な文句が印刷された紙を置いていく事件が起きます。

同様に赤い目が光るロボットが現れ、これも奇妙な文句が印刷された紙を置いていきます。

電光ニュースでも奇妙な文句が流れ、町中のラウドスピーカーからも奇妙な文句が流れます。

奇妙な文句とは「月世界旅行をしましょう」とか「月世界へおいでなさい」というものです。

誰かが東京の人々を月に誘っているのでしょうか。

東京の人々が不思議がっているころ、明智探偵の助手、小林少年に電人Mだという人物から電話がありました。

Mビルに来いというのです。

小林少年がMビルの屋上に行くとロボットが現れます。

ロボットは屋上から何やら紙をまきます。

紙の文句は例の「月世界旅行をしましょう」というものです。

また、ロボットが屋上から身をのりだしたので、地上の人々が騒ぎだしました。

この騒ぎで警官がMビルの屋上に駆けつけるとロボットは逃げだしMビルのある部屋へ逃げこみます。

ところがカギがかけられドアが開きません。

ドアが開くと男が出てきてロボットは窓から逃げたというのです。

小林少年はこの男が怪しいとにらんで後をつけます。

後をつけていくと塀にかこまれた工事現場のような場所にたどりつきます。

塀についたドアから男が中に入ったので小林少年がドアの前で中をうかがっていると、男に見つかってしまいます。

男は自分がロボットの衣装を着てロボットを演じていたことを明かします。

電人Mというのは自分の上司だというのです。

また、火星人やロボットの騒ぎは月世界旅行テーマパークの宣伝だったということを説明したのです。

塀の中には山のような人工月面が隅にできていてロケットが三方から飛んで人工月面に着陸するというのです。

【承】恐怖の仮面王/電人M のあらすじ②

月へようこそ。

小林少年が月世界旅行テーマパークのことを説明されてから、しばらくすると新聞にテーマパークの広告が載り人々は驚きあきれました。

これは10000平方メートルの敷地の隅に直径50メートルの月世界がボールを伏せたようにできています。

観客が月面を探検したあとは月面の裏側に降りていきます。

すると月面の裏側はプラネタリウムとなっているのです。

テーマパークの開業から3か月後、遠藤博士の家で奇妙な出来事が起きます。

遠藤博士は化学者で自宅の研究室で長年、画期的な発明に取り組んできました。

その発明が完成し、世界中から発明の秘密を狙われるようになるのです。

ある晩、電人Mが階段からおりてきて、研究室へ向かう廊下へ逃げていきました。

廊下は行き止まりの一本道で隠れるところはないのに消えてしまいます。

さらに、遠藤博士が寝室で目覚めると電人Mの声が聞こえ「発明の秘密を明らかにしないとどうなるかわからないぞ」と脅します。

遠藤博士の息子の治郎君は学校で少年探偵団員の森田君に電人Mの件を話すと明智探偵を紹介してくれます。

明智探偵に会う前に少年探偵団団長の小林少年と話すことになりました。

小林少年は治郎君の誘拐の恐れがあるので車で見張ると約束してくれました。

その晩、研究室で電人Mと治郎君が争っている声が聞こえ急いで研究室に入ると誰もいなくなっていました。

治郎君は誘拐されてしまったのです。

小林少年たちは電人Mが治郎君を車に入れてどこかに走り去るのを目撃します。

小林少年は電人Mの車を追跡します。

車は、ある家のガレージに入ります。

ガレージの扉は閉められ、周りは囲われており外部に逃げられません。

小林少年は探偵事務所経由で警察に連絡し、警官が到着しました。

警官はガレージの扉を開けられないので、ガレージの所有者に開けてもらいます。

すると、車には誰も乗っていないのです。

治郎君は、どこに連れさらわれてしまったのでしょうか。

【転】恐怖の仮面王/電人M のあらすじ③

木村青年の正体。

小林少年たちは探偵事務所に戻りました。

明智探偵に今夜のことを報告します。

さらに、遠藤博士宅での一連の奇妙な出来事についても報告しました。

明智探偵は今夜の件も以前の件も調べてみると言います。

少年探偵団のメンバーのポケット小僧君に遠藤博士宅の調査を依頼します。

ポケット小僧は翌日に調査をして、明智探偵に報告します。

いよいよ明智探偵が遠藤博士の家を訪問します。

出かける前に親友の警部に協力を頼みます。

明智探偵は謎のカギは「四角な窓と、秘密の箱です」といいます。

木村青年の部屋のベッドの底に大きな箱があり中には電人Mの衣装が隠されていたのです。

テープレコーダーもあり天井の空気穴に隠されたスピーカーへ配線が伸びていました。

これで博士の聞いた電人Mの声も治郎君と電人Mの争う声らしきものもテープレコーダーにあらかじめ録音され都合のよいときに再生されたことが明らかになったのです。

電人Mが二階から降りてきて研究室へと向かう廊下へ逃げ去り、消えてしまった件も研究室の付近の木村青年の部屋に入ったということで解明されたのです。

つまり電人Mの衣装を脱ぐと出てきたのは木村青年ということです。

明智探偵がことを明らかにすると木村青年であったはずの人間は正体を明らかにしました。

それは、あの二十面相だったのです。

警部が二十面相に治郎君の居場所を聞くとガレージの秘密の解明をしないと治郎君を返せないと勝手なことを言います。

仕方なく一同でガレージに向かうことになりました。

明智探偵が調べた結果、ガレージの床がエレベーター状に上下するしかけになっていることがわかり下には広い部屋がありました。

しかし、治郎君はここにもいませんでした。

二十面相に治郎君の居場所を再度、聞きますが答えません。

そうしているうちに大きな黒い鳥が現れ二十面相をつかんで飛びさってしまいます。

【結】恐怖の仮面王/電人M のあらすじ④

博士の決断。

ガレージの底の部屋から続く二十面相の隠れ家がポケット小僧の調査で明らかになりました。

長いトンネルが続いていて二十面相の居室や種々の部屋があるのです。

最終地点は月世界旅行テーマパークとなっていたのです。

治郎君も無事であることがわかり、二十面相も治郎君に危害を与えないらしいこともわかります。

明智探偵事務所で明智探偵、遠藤博士、小林少年は今後どうするか相談します。

二十面相には大勢の部下がいて、どう対処したらよいか適当な案がうかびません。

遠藤博士は自分の発明を使うことを決意します。

博士の発明は5日間だけ人間を無力化させるもので、発明の作用自体は5時間で停止するというものです。

博士は銀色の玉に作用の元になる原料を入れればよいと説明し、時限式になっているといいました。

博士は小林少年に銀色の玉を託すことにしました。

ある場所に銀色の玉を置いてきてほしいというのです。

曜日は金曜日。

なぜなら二十面相と部下は金曜日に一度、テーマパークのプラネタリウムで会議をするからです。

場所はテーマパークの人工月面の頂上のクレーター内に埋めてほしいというのです。

小林少年は博士の依頼を実行しました。

問題の金曜日の晩になりました。

二十面相は部下の前で演説をしています。

二十面相は上機嫌です。

部下たちは祝辞を次々と述べます。

すると、どういうわけか二十面相も部下たちも全員、そこに崩れ落ちてしまったのです。

翌日の夜明けです。

明智探偵、遠藤博士、少年探偵団員、警察関係者の総勢七十人近い人々がテーマパークに集まりました。

明智探偵がプラネタリウムの入口を万能鍵で開けます。

内部に進んでいくと二十面相と部下が倒れていて、全員が警察によって収容されます。

プラネタリウムにある秘密扉から二十面相の隠れ家につながる通路を行くと途中の部屋で博士の息子の治郎君は見つかります。

遠藤博士は発明の秘密を封印することを決意します。

恐怖の仮面王/電人M を読んだ読書感想

おなじみ明智探偵と怪人二十面相の物語です。

今回の二十面相は変わった扮装で登場します。

電気の国というのが二十面相の今回のテーマとなっていて謎解きとは別に興味深いものになっています。

物語の中心人物は化学者の遠藤博士で世界が変わるほどの発明をします。

一定時間のあいだ人間が無力化されるのです。

このアイデアが子供向けの雑誌連載の小説で使われたのは先進的だと感じました。

事件の舞台となる月世界テーマパーク自体は現実にあってもおかしくない気がします。

VR技術を使えば比較的、容易にできるかもしれません。

月世界テーマパーク内に高級なプラネタリウムが設置されていて物語の重要な場面となっているのですが、初出の雑誌連載時には存在しない仕様のもので江戸川乱歩の想像力はすばらしいと思います。

書籍中では月世界旅行の見世物と表記されているのですが、あらすじでは月世界旅行テーマパークとしました。

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