「シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|ボニー・マクバード

「シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊」

【ネタバレ有り】シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:ボニー・マクバード 2019年6月にハーパーコリンズ・ジャパンから出版

シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊の主要登場人物

シャーロック・ホームズ(しゃーろっく・ほーむず)
英国一と名高い諮問探偵。

ジョン・H・ワトスン(じょん・えいち・ワトスン)
医師。ホームズの友人で物語の語り手。

アイラ・マクラレーン(あいら・まくられーん)
依頼人。マクラレーン家の三男の妻。

サー・ロバート・マクラレーン(さー・ろばーと・まくられーん)
ブレイディーン領主。ウイスキーの製造をしている。

オーガスト・ベル・クラリオン(おーがすと・べる・くらりおん)
ホームズの学生時代の因縁の相手。

シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 の簡単なあらすじ

シャーロック・ホームズの長編パスティーシュになります。

フランスを訪れていたホームズとワトスンは、スコットランドの名家であるマクラレーン家の晩餐会に招かれます。

最後の料理の銀蓋を取ると、そこには人間の切断頭部が乗っていました。

被害者はマクラレーン家の使用人でした。

この事件の調査のため、ホームズとワトスンはスコットランドまで赴きます。

捜査の手伝いを任されたワトスンですが、彼はちょっとしたことからホームズの過去を知ることになるのでした。

シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 の起承転結

【起】シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 のあらすじ①

聡明な依頼人アイラ

ワトスンは、久しぶりにホームズの住むベイカー街B221を訪れました。

ホームズに快くむかえられるワトスンでしたが、そのとき、ホームズの元に依頼人がやってきます。

依頼人の名はアイラ・マクラレーン、ウイスキーで財を成したサー・ロバ—トの三男の妻です。

アイラは聡明な女性ですが、なぜかホームズは険のある態度をとります。

アイラの依頼は行方不明になったメイドのフィオナを探してほしいというものです。

メイドは以前にも一度、何者かに誘拐されて頭を剃られて戻ってきたことがありました。

二度目の失踪に心配するアイラでしたが、ホームズは彼女の依頼を断ってしまします。

翌日、ホームズは兄のマイクロフトに呼ばれて、ディオゲネスクラブを訪れます。

マイクロフトは、フランスではフィロキセラという寄生虫でブドウ農家が大ダメージを被ったと話します。

この被害はブドウを原料とする、ワインとブランデー産業まで影響が及んでいます。

ジャンヴィエ博士は、フィロキセラ問題を解決しよう研究に取り組んでいる人物ですが、彼のもとへ脅迫状が舞い込みます。

このため、フランスではフィロキセラはスコットランドのウイスキー業者の仕業ではないかという陰謀論が噴出しており、イギリスとフランスの間に緊張が走っている模様。

マイクロフトはジャンヴィエ博士の警護をしてほしいと、ホームズに頼みます。

こうして、ホームズとワトスンはフランスへと旅立つのでした。

【承】シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 のあらすじ②

皿の上には……

ジャンヴィエ博士を脅迫している有力な人物は、マクラレーン家の人間ということです。

ホームズのもとに依頼にやってきたアイラ・マクラレーンもその一族の人間です。

マクラレーン家はちょうどフランスに旅行中で、ホームズはアイラ・マクラレーンと接触しようとしますワトスンはホームズに頼まれ、アイラと接触し、ホームズとともにマクラレーン家の晩餐会に招待されます。

次にホームズとワトスンは、ジャンヴィエ博士の元を訪れますが、博士は脅迫を深刻に受け止めていません。

ところが、博士の研究室が爆破されます。

この混乱に現れたのが、フランス政府に雇われた探偵ジャン・ヴィドックですが、ホームズは先ほどの爆発が彼の仕業であるとすぐに看破します。

ヴィドックは自分がフランス政府からの仕事を続けるために、博士の身に危険が迫っていると見せかけたのでした。

ヴィドックを警察に引き渡したあと、ホームズたちはマクラレーン家の晩餐会に出席します。

マクラレーン家との間にぎくしゃくとした雰囲気を作りながらも晩餐会は進み、最後のデザートがやってきます。

ところが、その銀蓋を開けると、人間の切断頭部が乗っていたのです。

その頭は行方不明のメイド、フィオナのものでした。

この事件を調査するために、ホームズとワトスンはスコットランドにあるマクラレーン家の古城を訪れます。

地元では、マクラレーン一家は家族に不幸が続いていたため、呪われた一族と言われていました。

サー・ロバートの妻のエリザベスは不慮の事故で凍死、長男のドナルは戦場で死亡、長女のアンは三歳のときに行方不明になりそれっきりになっていたのです。

マクラレーン・ウイスキーは、王室御用達の品に選ばれるかどうかの大事な時期であり、サー・ロバートは醜聞を恐れていました。

そのため、警察の介入なしで、ホームズに単独捜査を命じます。

【転】シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 のあらすじ③

ホームズ、古城で捜査を開始する

ホームズは早々にフィオナがサー・ロジャーの母親違いの娘だと突き止め、最初の誘拐はサー・ロバートがウイスキー製造の責任者クープに命じて行ったものと看破します。

余計なことには首を突っ込まず、殺人事件の捜査だけをしろと命じるサー・ロバートですが、ホームズは訊く耳を持ちません。

捜査の最中に、長男ドナルがオーガスト・ベル・クラリオンという人物と友人だったと知り、ホームズは驚きます。

それからホームズはドナルの戦地での写真を手に入れようとやっきになります。

エディンバラに軍役に就いていたワトスンの友人がいたため、ワトスンはドナルの写真があればをもらってくるようにホームズから頼まれます。

ワトスンは目的地に着くと、写真のコピーをもらうことにします。

コピーには時間がかかり、辺りをぶらぶらしていると、ホームズが通っていたフェテス校を見つけます。

興味本位で、入って行くと当時のホームズをよく知る校長補佐に呼び止められます。

ワトスンは、学生時代のホームズの話を聞いていると、オーガスト・ベル・クラリオンの耳にしました。

オーガストは、ホームズを憎んでおり、二人の間にはたびたびトラブルがあったのです。

また、ホームズは大学進学後に殺人罪で裁判にかけられたことも聞かされます。

ワトスンは衝撃を受けつつも、写真のコピーをもらって古城に戻ってきました。

ところがホームズの姿が見えません。

敷地管理人がやって来て、ホームズが氷室の穴の中に閉じ込められていると伝えられます。

ホームズは凍死しそうでしたが、間一髪のところで助けられます。

そして、穴の中にはフィオナの胴体と、彼女に恋心を抱いていた青年の遺体も見つかりました。

フィオナの遺体を調べた結果、彼女の死は事故死で、頭部は何者かが悪意を持って切断したということがわかりました。

そして、ワトスンが持ち帰った写真にはドナルの姿はなく、隊でドナルと呼ばれていた男はオーガストだったのです。

【結】シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 のあらすじ④

因縁の相手

王室関係者を招いて、マクラレーン・ウイスキーをお披露目するときがやってきます。

大樽を開けるとそこには遠征先で死亡したと言われていたドナルの死体が入っていました。

混乱の中ホームズはクープを捕まえて、ドナルの死を説明します。

ドナルは友人のオーガストに殺害され、クープが樽の中に遺体を隠したのです。

クープが遺体の処理に手を貸した理由は、ドナルを唾棄していたからです。

ドナルは六歳のときに、妹のアンを地下水槽に投げ捨てて殺害していたのです。

クープは自白を続けますが、肝心なところを前に、激昂したサー・ロバートによって撃たれてしまいます。

真相を解明出来損ねたと落ち込むホームズでしたが、ワトスンが黙って自分の過去を探り出したことを知って激怒し、ロンドンに帰れと言い放ちます。

ホームズの態度に腹を立てたワトスンでしたが、アソルメアにホームズが裁判にかけられた事件の被害者の祖母がいることを思い出します。

ワトスンは気を変えて、その老女の元を訪れることにしました。

そこでワトスンは、ホームズとよい仲だったシャーロットという女性が死んで、彼に嫌疑がかけられたことを聞かされます。

シャーロットはスカーフで首を吊った状態で見つかり、遺体は”ピーナッツ”という愛称のいとこの少女が発見しました”ピーナッツ”の現在の名前がアイラ・マクラレーンだと知ったワトスンは急いでホームズの元へ戻ります。

アイラは、ホームズがシャーロットを殺したと思っていましたが、すべてはオーガストの陰謀でした。

オーガストはウイスキー製造の従業員として働いていていました。

フィオナの首をフランスまで送ったのも、すべてはホームズをスコットランドにおびき寄せるための計画でした。

ホームズたちがアイラと対峙しているときに、オーガストはついに姿を現します。

ホームズはオーガストと格闘の末、彼をナイフで刺し、学生時代からの因縁に決着をつけるのでした。

シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊 を読んだ読書感想

まさに正統派のパスティーシュです。

フランスのブドウ農家を襲った寄生虫など、当時の時代背景を詳しく調べて、それを物語の中にうまく落とし込んでいます。

舞台や小道具にも隙がなく、読み進めていると19世紀末期のイングランド・フランス・スコットランドの情景が鮮明に浮かび上がってきました。

領主階級の家が行っているウイスキー製造業を背景に置き、殺人事件や幽霊騒動をストーリーに絡めていくという試みは面白いと感じました。

ホームズの二次創作のなかには、原作設定を軽視して、好き勝手に描いている作品もありますが、これは原作ホームズシリーズで明らかになっている情報を元に、ホームズの過去のストーリーを見事に描き出しています。

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