市川拓司「恋愛寫眞 もうひとつの物語」のあらすじと結末をネタバレ

恋愛写真―もうひとつの物語

【ネタバレ有り】恋愛寫眞 もうひとつの物語 のあらすじを起承転結で解説!

著者:市川拓司 2003年6月に小学館から出版

恋愛寫眞 もうひとつの物語の主要登場人物

瀬川誠人(せがわまこと)
本作の主人公である大学生。皮膚の病気にでのために塗っている薬の臭いを気にして他人から距離をおいて過ごすことが身についてしまっている。写真が趣味。

里中静流(さとなかしずる)
もう一人の主人公。誠人と同じ大学に通うが、成長が止まってしまったような幼い姿をしている。鼻炎持ちでいつも鼻を啜っていて臭いに鈍感。よく嘘をつく。

富山みゆき(とやまみゆき)
誠人と静流の同級生。誰からも愛される完ぺきな女性だが恋愛経験は乏しい

恋愛寫眞 もうひとつの物語 の簡単なあらすじ

薬の臭いが原因で他人と距離を置いて生きてきた大学生の誠人。彼はある日大学の近くで大学生と思えないほど幼い静流と知り合う。人付き合いを苦手とする2人はこのことがきっかけで友達となり交流を深めていく。同級生のみゆきに恋をしていた誠人ではあるが、自分に好意を寄せる静流への想いを徐々に強めていく。やがて2人は初めてのキスを交わすことになるが、秘密を抱えていた静流は姿を消し、それが最初で最後のキスとなった。

恋愛寫眞 もうひとつの物語 の起承転結

【起】恋愛寫眞 もうひとつの物語 のあらすじ①

オリジナルな友達との出会い

塗っている薬の影響で他人と距離を取っていた誠人の趣味は写真でした。

彼はある日大学の近くの誰も渡らないほど交通量の多い横断歩道に挑戦する同級生の静流と出会います。

静流は成長が止まってしまったように小さな体で、また独特の感性で生きていました。

オリジナルな存在に惹かれて思わずその姿を写真に収めた誠人ですが、そのことをきっかけに静流との交流が始まりましたいつも鼻を啜っていて臭いに鈍感な静流は、誠人にとって心地よく付き合える存在で2人の仲は深まっていきます。

一方で誠人は別の女の子に恋をしていました。

相手は同級生のみゆきという誰もが好きになるであろう完ぺきな女性です。

彼女は1人で過ごす誠人を自分のグループに誘い入れてくれましたが、その瞬間に誠人は恋に落ちていました。

静流もそのことはわかっていて誠人の恋を応援してくれます。

みゆきのグループの友達や静流の存在により誠人は幸せな大学生活を送ります。

【承】恋愛寫眞 もうひとつの物語 のあらすじ②

奇妙な同棲生活

そんな関係が2年も続いたころ、静流が実家から追い出されるという事件が起きます。

彼女の実母は既に他界しており、義母との仲が険悪になったために家にいられなくなったというのです。

1人暮らしをしようとする彼女ですが、あまりに幼い外見のため取りあってもらえずに困っていました。

そこで誠人は静流に一緒に暮らすことを提案します。

純粋に友達としての同居です。

静流は喜んで一緒に暮らし始めますが、それは明らかに奇妙な生活でした。

誠人はみゆきに恋をしている。

そして静流はそのことを知っていますが誠人に恋をしています。

そして誠人もそのことはわかっています。

この一見不誠実な関係ですが、あくまでも友達というスタンスの均衡状態のまま物語は進んでいきます。

そして誠人は少しずつ自分の気持ちの変化を感じていきます。

そして同時に静流にも大きな変化が起きていきます。

【転】恋愛寫眞 もうひとつの物語 のあらすじ③

生涯ただ一度のキス

幼い女の子であった静流の身体は急激に大人の女性へと成長をしていきます。

それを静流は恋をしたことによる成長と言い、また誠人を苦しめていくのです。

そんな時に静流は誠人と共に応募した写真のコンクールで入賞を果たします。

何かお祝いをしようと提案する誠人に対して静流がお願いしたのはキスをすることでした。

今まで一切の恋に関する進展がなかった2人にとって大きな出来事となります。

そしてキスをする日を約束の日、静流はその姿を写真に収めます。

静流に対する気持ちを強めつつあった誠人はこれが始まりのキスだと思っていましたが、静流にとてはこれが最後のキスでした。

その日を最後に静流は誠人の前から姿を消します。

大切な人を失った誠人は悲しみに暮れるのでした。

【結】恋愛寫眞 もうひとつの物語 のあらすじ④

静流の最後の嘘

静流は見つからないまま誠人も大学を卒業します。

そして卒業して2年経ったころ、静流から手紙が届きました。

それは静流がカメラマンとなり、その個展がニューヨークで開かれるので来てほしいという内容でした。

静流との再会を喜びニューヨークへ向かう誠人。

しかしそこで待っていたのはみゆきでした。

静流とみゆきはニューヨークでルームメイトになっていたのです。

静流は少し遠方に出ていて今はいないと伝えるみゆき。

誠人はそれを信じて、少し伸びた再会の時を楽しみに待ちます。

しかしそんな誠人の耳に信じられない事実が入ってきます。

静流は既にこの世を去っていたのです。

手紙を送っていたのは静流から託されていたみゆきでした。

静流は恋をして成長することで死んでしまう病気だったのです。

悲しみの中、誠人は静流の個展に足を運びます。

数々の写真の中に、誠人は一緒に暮らしていた頃に静流が撮った自分の写真を見つけます。

そしてまた、自分が撮った当時の静流の写真も。

それはまさに2人の恋愛写真でした。

そして最後の写真は2人の最初で最後のキスの写真だったのです。

恋愛寫眞 もうひとつの物語 を読んだ読書感想

恋することの尊さを感じさせられる物語です。

確かにこんな奇妙な恋愛関係が現実で成り立つかは疑問です。

しかしこんなにも相手のことを思いやり、心から好きになる関係があっても良いのではないでしょうか。

凄く素敵な恋愛だと思い、私は何度も読み返しています。

最後は悲しい結末ですが、そこに至るまでの2人の幸せでありながらも切ない関係に心が締めつけられます。

みゆきという完ぺきでありながらも恋愛に不器用な女性もとても愛おしくて、静流と誠人の関係を応援しつつも彼女の幸せを願ってしまいます。

会話もとてもウィットに富んでいて読んでいて心地良いのもこの作品の魅力です。

登場人物全員に感情移入することができ、自分も誰かを愛したくなるそんな優しい気持ちにさせてくれる物語です

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