【ネタバレ有り】いちばん悲しい のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:まさき としか 2019年10月に光文社文庫から出版
いちばん悲しい の主要登場人物
我城 薫子(がじょう かおるこ)
女刑事。戸沼暁男が殺害された事件を捜査する。
戸沼 暁男(とぬま あけお)
冴えない中年男性。ある大雨の日に刺殺される。
佐藤 真由奈(さとう まゆな)
戸沼の不倫相手。思い込みが激しい性格である。
渡瀬川 瑠璃(わたらせがわ るり)
三年前、戸沼一家が参加したキャンプの事故で娘を失う。精神的に不安定。
いちばん悲しい の見どころ!
・被害者である戸沼の二面性
・明らかになる過去の事故とのつながり
・ラストに明かされるどんでん返しの結末
いちばん悲しい の簡単なあらすじ
薫子は、大雨の日に刺殺された戸沼暁男の事件を担当します。
妻子のある戸沼には、結婚を誓う真由奈という女性がいました。
痴情のもつれかと疑う薫子ですが、戸沼の妻にも真由奈にもアリバイがあります。
捜査が停滞し始めたとき、浮かび上がってきたのは、三年前に戸沼が参加したキャンプでのある事故でした。
キャンプ参加者を調べていくうちに、衝撃の事実が発覚します。
いちばん悲しい の起承転結
【起】いちばん悲しい のあらすじ①
ある大雨の日、戸沼暁男という中年男性が刺殺されます。
刺し傷は何か所にも渡り、怨恨を思わせるものでした。
戸沼は携帯電話を二つ所持しており、一つは佐藤真由奈の連絡先しか登録されていませんでした。
捜査を担当した薫子が真由奈のもとを訪れますが、真由奈は戸沼暁男の名前を知らないと言います。
真由奈は戸沼の愛人でしたが、戸沼は彼女に「高橋彰」と名乗っていたのです。
また、戸沼は彼女に自分は離婚調停中で、子どもはいないと話していましたが、実際は戸沼には二人の子どもがいて、離婚の話など出ていません。
また、戸沼は真由奈に貢ぐために消費者金融から百三十万ものの借金をしていました。
その事実を告げられた真由奈は信じることができず、パニックに陥ります。
【承】いちばん悲しい のあらすじ②
戸沼の妻は、人畜無害だと信じていた夫に愛人がいたことや、借金を作っていたことに衝撃を受けます。
二人の子どもも父親の突然の死に驚きを受け、学校に行けなくなってしまいます。
不幸はそれからも続きます。
家に落書きをされたり、ゴミを投げ入れられたりという嫌がらせが始まったのです。
その犯人は、真由奈の元同僚でした。
元同僚は真由奈にそそのかされたのです。
しかし、肝心の戸沼を殺した犯人は見つかりません。
捜査にあたる薫子も焦りを感じていました。
怨恨ではなく、通り魔の可能性すら考え始めたとき、事件当夜に犯人かもしれない女性を車に乗せたという男性が現れます。
しかし、男性は女性の顔を全く覚えていないといいます。
平行して戸沼の友好関係を調べていた薫子は、三年前に戸沼が参加したキャンプの存在を知ります。
そのキャンプは、異業種交流会で出会った人々が家族を連れて参加したというもので、戸沼の家族のほかに、戸沼の大学時代の友人が参加していました。
そのキャンプでは、参加者の女の子が川で溺れ死ぬという痛ましい事故がありました。
念のために、薫子はキャンプの参加者全員に戸沼についての聞き込みを始めます。
しかし、死亡した女の子の母親・渡良瀬川瑠璃だけが面会を拒否します。
渡良瀬川一家に何か違和感を感じた薫子は、瑠璃について調査を進めることにしました。
【転】いちばん悲しい のあらすじ③
渡良瀬川一家について調べを進めると、瑠璃が出産の際に世話になった産婆に話を聞くことができました。
そこで知らされたのは、死亡した女の子の沙耶子の母親は瑠璃ではなく、瑠璃の妹の葵であるという事実でした。
資産家の家に嫁いだ瑠璃は、不妊に悩んでいました。
しかし、奇跡的に妊娠し、里帰りをしたところで流産してしまいます。
そんなとき、臨月の妹・葵が故郷に戻ってきたのです。
葵は精神的に幼いところがありました。
瑠璃は葵を言いくるめ、葵が生んだ娘を自分の子どもとして育てました。
もちろん、夫や義母には秘密です。
その後、瑠璃の両親は相次いで病死しますが、産婆は沙耶子の出生の秘密が漏れることを恐れた瑠璃が二人を殺したのではないかと恐れます。
その犯人は葵なのではないか、という疑念も持ちました。
そんな時、瑠璃の夫が駅のホームから落ちて骨折をします。
誰かから突き落とされたかもしれない、と夫は証言をしており、薫子は三年前のキャンプ参加者が次々が次々狙われていることに気付いて警戒します。
しかし数日後、瑠璃が銃刀法違反で捕まるのです。
路上で包丁を出して誰かを追いかけているとことを保護されたのです。
薫子は、瑠璃が妹を殺そうとしているのではないかと疑います。
【結】いちばん悲しい のあらすじ④
薫子の疑惑は当たっていました。
瑠璃は妹に「葵が結婚するまで沙耶子は私が大切に育てる代わりに、それまでは沙耶子には会わないでほしい」と約束していました。
精神的に幼い葵はその約束を信じ、沙耶子は無事に育っているものだと思っていました。
しかし、キャンプ場で沙耶子が亡くなった事故を知り、瑠璃の前に姿を現します。
葵は瑠璃を責めました。
瑠璃は葵の怒りをそらすために、キャンプ場にいたほかの大人が沙耶子を助けられたはずなのに見捨てたと告げます。
瑠璃は戸沼から事故が起きたときに、「どうして親が子供を見ていなかったんだ」と責めるようなことばを吐かれたのを根に持っていました。
瑠璃の言葉を信じ込んだ葵は、娘の仇を取ろうと戸沼を殺したのです。
瑠璃の夫をホームから突き落としたのは、葵ではありませんでした。
瑠璃の夫の転落は完全なる事故でした。
しかしその時、夫は愛人と一緒にいたため、とっさに「突き落とされた」という嘘の証言をしてしまったのです。
それと同時に、薫子も事件の真相に達しました。
薫子は葵を捕まえようとしますが、葵は娘を追いかけて水死してしまいます。
葵に入水自殺をするように仕向けたのも、瑠璃の仕業でした。
いちばん悲しい を読んだ読書感想
単なる痴情のもつれかと思われた殺人事件が、次々に過去と結びついて圧巻のラストまで一直線の展開でした。
正直後味はあまり良くありませんが、ラストが気になって一気読みしてしまう一冊です。
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