「わが母なるロージー」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|ピエール・ルメートル

「わが母なるロージー」

【ネタバレ有り】わが母なるロージー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:ピエール・ルメートル 2019年9月に文藝春秋から出版

わが母なるロージー の主要登場人物

カミーユ・ヴェンルーベル(かみーゆ・ヴぇんるーべる)
パリ警視庁の警部。本作の主人公。

ジャン・ガニエル(じゃん・がにえる)
爆弾魔。警察に対して前代未聞の取引を持ち掛ける。

ロージー・ガニエル(ろーじー・がにえる)
ジャンの母親。勾留中。

わが母なるロージー の簡単なあらすじ

本作は、カミーユ・ヴェンルーベル警部3部作の番外編となる作品です。

3部作は『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』『傷だらけのカミーユ』からなっており、本書は時系列的には2作目と3作目の間で起きた話です。

『その女アレックス』は、文学賞で10冠を達成してこのシリーズは大きな注目を集めました。

完結済みでしたが、もう一度だけカミーユ警部が舞い戻ってきたことで、話題となった作品です。

わが母なるロージー の起承転結

【起】わが母なるロージー のあらすじ①

 

恐怖の爆弾事件

5月20日17時、パリのジョゼフ=メルラン通りで爆発事件が発生します。

多数の怪我人が出たものの、奇跡的に死者はいませんでした。

政府は情報収集にあたり、警察にも緊張が走ります。

現場を訪れた爆弾処理班は、第一次世界大戦で使用された140ミリ砲弾に手を加えたものだと突き止めます。

この砲弾は不発弾として大量にフランスの地中に眠っていて、その気になれば入手するのは驚くほど簡単なのです。

一方、カミーユ警部は車のラジオで爆破事件のことを聞きながらも、彼女とのデートに向かっていました。

事件を聞きながらもデートのことで頭がいっぱいのカミーユ警部でしたが、部下から連絡を受けて事件の中心に引きずり込まれます。

爆弾事件の犯人が警察署に自首しに来て、カミーユ警部と話をしたいと要求したのです。

彼はデートを泣く泣くキャンセルして、すぐに警察署に駆けつけました。

そこには、ジャン・ガニエルがいて、他にも爆弾は6つあり、1日に1つずつ爆発するようにセットしたというのです。

【承】わが母なるロージー のあらすじ②

 

ジャンの要求

ジャンは、爆弾を仕掛けた場所を教えてもらいたかったら、こちらの要求を飲めとカミーユ警部に持ちかけます。

その要求とは、彼と彼の母親の釈放、そして逃走資金の用意でした。

ジャンの母親ロージーは、8ヵ月前にジャンの恋人を故意に車ではねた容疑として警察に勾留されていたのです。

ジャンは、その母親を釈放させ、二人でオーストラリアに逃げる計画を立てているという話をカミーユ警部にします。

この話にカミーユは戸惑います。

自分の恋人の殺害した母を釈放させるなんておかしな話で、ジャンの考えが理解できなかったのです。

また、ジャンのいう爆弾が実在するかどうかも不明で、おいそれと要求を飲むわけにもいきません。

ジャンはテロ対策班から苛烈な尋問を受けることになりましたが、その中で爆弾は幼稚園に仕掛け、9時に爆発することだけを話します。

カミーユはジャンと母親を面会させて、どの幼稚園がターゲットなのか聞きだそうといます。

ジャンはパリ以外の幼稚園に仕掛けたと言いますが、無情にも時間は9時を回ります。

しかし、爆弾は爆発しませんでした。

【転】わが母なるロージー のあらすじ③

 

ジャンの本心

時間になっても爆発が起きなかったことで、運よく不発に終わったのか、ジャンが嘘をついているのか、政府や警察内で2つの意見が出てきます。

しかし、同日の昼に、地下の共同溝を点検していた職員が爆弾を見つけます。

これでジャンの話の信ぴょう性が高まり、夜の21時に幼稚園で爆発が起きたことで彼の話ははったりでないと警察は理解します。

爆弾のことで警察が右往左往するなか、カミーユ警部は、ジャンとロージーの関係が気になっていました。

ロージーと面会したときのジャンは、明らかに心ここにあらずという感じで、自分が助け出そうとしている母親を前にしているとは思えないようすでした。

逆に、ロージーは息子が自分を見捨ていないと感激していました。

2人の反応に違和感を覚えたカミーユ警部は、ロージーがジャンの恋人を轢き殺した事件を調べ、さらにジャンの過去を深く調べていきました。

その結果、ジャンが何度も親元を離れようとしたときに、彼と親しかった人が死に、ジャンは家に留まることになった過去が明らかになりました。

【結】わが母なるロージー のあらすじ④

 

最後の爆弾

ジャンの周りで起きた死には、いつもロージーの影がありました。

ロージーは息子に異常な執着があり、自分の手から息子を奪い去ろうとする人間を何度も殺害していたのです。

そしてジャンのほうも、ロージーに依存するようになったと推測します。

爆弾事件のほうでもカミーユは意外な事実を突き止めました。

ジャンは誰も死なないように爆弾を仕掛けたことを見破ったのです。

幼稚園の爆弾は、9時をわざと21時に間違えることで誰もいない時間帯に爆発するように仕組んで、共同溝の爆弾は点検日を事前にチェックして発見されるようにしておいたのです。

しかし、このまま爆発が続けば、いつかは何かの間違いで死者がでる危険がありました。

そこでカミーユは首相を説得して、ガニエル親子を釈放させたのです。

しかし、親子をオーストラリアに行かせるつもりはありませんでした。

万全の態勢を敷き、飛行機が飛び立つとすぐに空港に戻ってくるように手配しました。

釈放されたガニエル親子ですが、ジャンはタクシーの運転手に空港とは違う道を告げます。

たどり着いたのはジャンがよく行く公園でした。

そこでジャンは母親をおろして、二人で公園内に向かいます。

そのようすを遠くで見ていたカミーユは、ジャンから「もう爆弾はない」というメールを受け取ります。

その直後、公園で爆発が起こり、ガニエル親子は爆炎の中に消えたのです。

わが母なるロージー を読んだ読書感想

カミーユ警部シリーズは『その女アレックス』で一躍有名になりました。

作者のルメートル氏は、シリーズを3作目で完結させたので、この番外編はファンにとってうれしい一冊ではないでしょうか。

本書は場面転換が多彩で、非常にスピード感があるのが特徴です。

『その女アレックス』には事件の”なぜ”の部分がクローズアップされていましたが、本書でも動機がメインの謎となっています。

ジャンがこのような計画を立て、母親と一緒に死ぬことを選んだのは、カミーユが指摘したとおり、母親に依存するように育てられたからではないでしょうか。

母親を憎みながらも同時に愛さざるを得ないジャンは、本作の一番の被害者だったのではと思います。

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