【ネタバレ有り】蟻の菜園ーアントガーデンー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:柚月裕子 2015年8月に宝島社文庫から出版
蟻の菜園ーアントガーデンーの主要登場人物
今林 由美(いまばやし ゆみ)
フリーライター。ある結婚詐欺事件を調べるうちに、30年前に起きた未成年事件にたどり着く。
片芝 敬(かたしば さとし)
千葉の地本新聞社の報道記者。由美と同じ事件を追っている。
円藤 冬香(えんどう ふゆか)
結婚詐欺と殺人の容疑で逮捕されるが、アリバイがあるために捜査を難航させている。
蟻の菜園ーアントガーデンー の見どころ!
・由美と片芝の絶妙なタッグ
・一見無関係に思える二つの事件を結ぶ謎
・解き明かされる歪んだ姉妹愛
蟻の菜園ーアントガーデンー の簡単なあらすじ
フリーライターの由美は、ある結婚詐欺事件について調べ始めます。
それは、容疑者の円藤冬香が婚活サイトで知り合った男から金銭を巻き上げた挙句、殺人を犯したというものでした。
しかし、冬香には確固たるアリバイがあり、捜査は難航しています。
由美は新聞記者の片芝に協力を仰ぎ、独自の取材を始めます。
そこから見えてきたのは冬香と東北とのつながり、そして30年前の未解決の事件でした。
蟻の菜園ーアントガーデンー の起承転結
【起】蟻の菜園ーアントガーデンー のあらすじ①
フリーライターとして働く由美は、次の取材対象を探していました。
興味を持ったのは、一件の未解決結婚詐欺事件でした。
容疑者の円藤冬香は婚活サイトで知り合った男性を騙して金銭を奪い、その後病死や自殺に見せかけて三人もの男性を殺しました。
しかし、冬香が事件に関わっているという証拠はあるものの、殺人事件発生時の冬香には確固たる証拠があるために捜査は難航していました。
冬香は目を引く美貌を持った女で、その気になれば金持ちと結婚することもできたのに、どうして結婚詐欺を働かなければならなかったのか。
由美は強い興味を持ちました。
この事件を捜査するにあたり、仕事仲間から紹介されたのは、千葉の地方紙の新聞記者の片芝でした。
片芝はぶっきらぼうで横暴な性格でしたが、由美に的確な情報とアドバイスを与えてくれました。
由美は片芝との協力関係を築き、次第に事件の真相に迫っていきます。
【承】蟻の菜園ーアントガーデンー のあらすじ②
由美と片芝は、円藤冬香が児童養護施設で育ったことを突き止めますが、冬香の両親がどうしていなくなったのかは依然不明のままでした。
施設を出た冬香は介護職に就き、真面目に働いていた中での突然の事件でした。
冬香の同僚によると、冬香は東北出身の入居者の東北なまりを聞き取ることができたため、大変重宝されていたそうです。
また、冬香の同級生によると、時折冬香は東北の方言を使うことがあったそうです。
しかし、冬香が東北に住んでいたという情報はありません。
由美と片芝は、事件に東北が関係しているのではないかと疑い始めます。
そんな時、事件の日に冬香の携帯電話に着信があったことが判明します。
電話をかけてきたのは、江田知代という女性でした。
由美は江田に話を聞きに行きますが、江田は「間違い電話をかけてしまった」と言い張り、冬香との関係を否定します。
しかし、調査の中で江田の出身が東北であることが明かされます。
【転】蟻の菜園ーアントガーデンー のあらすじ③
捜査を続ける中で浮かび上がってきたのは、30年前の未解決の事件でした。
それは、東北に住む沢越早紀という少女が父親をナイフで刺した後、行方不明になったという事件でした。
早紀は父親と妹の冬香と共にワゴン車で暮らしていました。
父親は現場仕事を転々とし、酒に酔っては早紀と冬香に暴力をふるいました。
早紀が大人の体になるにしたがって、父親は早紀に性的虐待も犯すようになりました。
我慢の限界に達した早紀は父親をナイフで刺してさ迷い歩いているところを、一人の老人に保護されます。
老人は早紀の境遇を知っていました。
老人は市役所勤めの知り合いに頼み、戸籍を偽造させて、早紀に新しい人生を与えました。
早紀の新しい名前は円藤冬香となり、関東の児童養護施設に送られました。
残された妹の冬香も東北の児童養護施設に送られますが、父親の怪我とアルコール依存症が完治した頃に再び父親に引き取られました。
最初の数年は優しかった父親ですが、次第に虐待が始まりました。
そして、冬香までも性的虐待の被害に遭います。
そんな時、死んだと聞かされていた姉の早紀が、冬香のもとに現れたのです。
父の暴力を聞いた早紀は、父を殺すことを提案し、二人は自殺を装って父を殺害しました。
冬香は父親から解放され、再び施設で暮らし始めます。
冬香は過去と決別するために、名前を知代に改名しました。
【結】蟻の菜園ーアントガーデンー のあらすじ④
知代の名を手に入れた冬香はレストランのオーナーの江田に見初められ、結婚します。
結婚生活は順調でしたが、常に父親の暴力の記憶がよみがえります。
その記憶から逃げるために、冬香はパチンコを始めました。
次第にギャンブル中毒になっていった冬香は、生活費も貯蓄も使い果たしてしまいます。
夫にそれを知られたくない冬香は、出会い系サイトで出会った男から金を巻き上げることを考えます。
出会い系に登録をしていることを誰にも知られたくなかった冬香は、姉の名前「円藤冬香」の名前で出会い系を始めます。
何人もの男から結婚をだしに金を巻き上げますが、次第に男たちも冬香が結婚をするつもりがないことを見抜き、金を返せと冬香に迫ります。
困った冬香は姉に泣きつきました。
姉は自分の名義で出会い系をした冬香のことを叱らず、二人で男を殺そうと持ち掛けます。
それからは、三人連続で冬香と早紀は男を殺しました。
しかし、警察に疑われてしまい、出会い系サイトの名義を持つ「円藤冬香」が逮捕されてしまいます。
実際に手を汚したのは妹の「江田知代」でした。
そのために「円藤冬香」にはアリバイが存在していたのです。
事件の真相を突き止めた由美は、もし30年前に早紀と冬香の虐待がなければ、と痛感します。
由美はこの事件に絡めて、児童虐待をテーマにした記事を書き始めました。
蟻の菜園ーアントガーデンー を読んだ読書感想
過去と現在が複雑に入り組んだ、読み応えのあるストーリー展開でした。
事件を解決するのが警察ではなく、新聞記者とフリーライターというのも、話に深みがでて良かったと思います。
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