【ネタバレ有り】ラストレター のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:岩井俊二 2018年10月に文藝春秋から出版
ラストレターの主要登場人物
乙坂 鏡史郎(おとさか きょうしろう)
主人公。売れない小説家。
遠野 未咲(とおの みさき)
鏡史郎のクラスメイト。うつ病を患い自殺する。
岸辺野 裕里(きしべの ゆうり)
未咲の妹。中学生時代、鏡史郎のことが好きだった。
遠野 鮎美(とおの あゆみ)
未咲の娘。家事が得意。
岸辺野 颯香(きしべの そよか)
裕里の娘。鮎美を姉のように慕っている。
ラストレター の見どころ!
・鏡史郎と遠野姉妹の奇妙な三角関係
・未咲と裕里の娘たちをも巻き込んだ鏡史郎の恋の行方
・すべてを受け入れた鏡史郎の優しさ
ラストレター の簡単なあらすじ
小説家になるという夢を追いかけてきた鏡史郎は、中学の同窓会で初恋相手の未咲に会えたら夢を諦めようと決意します。
しかし、会場に現れたのは未咲の妹、裕里でした。
鏡史郎は混乱しますが、クラスメイトたちは裕里を未咲だと思い込んだままで、裕里も未咲のふりをしています。
そして、同窓会での再会をきっかけに、未咲になりすました裕里と鏡史郎との奇妙な文通が始まるのです。
ラストレター の起承転結
【起】ラストレター のあらすじ①
鏡史郎は売れない小説家です。
小説家になろうと思ったきっかけは、中学時代の恋の相手、未咲の「小説家になれるよ」という言葉でした。
その言葉は呪いのように、鏡史郎に小説を書かせ続けましたが、鏡史郎は処女作で新人賞を獲得したきり、苦しい生活を続けていました。
そんな時、鏡史郎のもとに中学校から同窓会の案内が届きます。
鏡史郎は、この同窓会で未咲に再会できたら小説家の夢は諦めようと決意します。
しかし、同窓会に現れたのは未咲の妹、裕里でした。
中学時代、鏡史郎はサッカー部で、裕里はそのマネージャーでした。
裕里が未咲の妹であることを知った鏡史郎は裕里に未咲へのラブレターを届けさせていました。
そんな過去から、鏡史郎は裕里のことを知っていましたが、クラスメイトたちは裕里を未咲だと思い込んで裕里にマイクを向けます。
裕里も未咲であるかのように振舞います。
同窓会は進行し、未咲が卒業時に読み上げた答辞の録音が流されました。
鏡史郎は耐えきれずに会場を抜け出すと、裕里は彼を追いかけました。
鏡史郎は裕里を見つけて声をかけますが、裕里は鏡史郎の前でも未咲であるかのように振舞いました。
二人は連絡先を交換し、裕里はバスに乗って帰ってしまいます。
【承】ラストレター のあらすじ②
鏡史郎は裕里とメールのやりとりを始めます。
鏡史郎は、なぜ裕里が未咲のふりをしているのか知ろうとしますが、普通に聞いても答えてくれないだろうと考え、裕里が未咲になりすましていることを気付いていないという体でメールを送ります。
いつしかそれはエスカレートし、未咲への恋心を打ち明けてしまいます。
しかし、そのメールは運悪く、裕里の夫に見られてしまいます。
裕里は必死に弁解しますが、裕里の夫は激怒し、裕里のスマホを壊してしまいました。
連絡手段を絶たれ、ストレスを抱えた裕里は、未咲になりすましたまま鏡一郎に一方的に近況を知らせる手紙を送るようになりました。
手紙には裕里の住所は書かれていないので、鏡史郎は返事が出せません。
定期的に手紙は送られてきて、夫が鏡史郎からのメールの件を許してくれないこと、なぜか大型犬二頭を飼うことになったこと、突然義母との暮らしを強いられたことを恨めしく綴ります。
【転】ラストレター のあらすじ③
鏡史郎は、裕里からの手紙を受け取るうちに、未咲本人は裕里のなりすましを知っているのか知りたくなります。
鏡史郎は過去に、未咲からの年賀状を受け取ったことがありました。
鏡史郎はそこに記されていた未咲の実家の住所に手紙を書きました。
しかし、未咲はうつ病による自殺で死んでいたのです。
鏡史郎からの手紙を受け取ったのは、未咲の娘の鮎美と裕里の娘の颯香でした。
二人は未咲を装って鏡史郎に返事を書きます。
内容は、鏡史郎のことを懐かしみ、未咲や裕里のことで覚えている思い出があれば教えてほしい、というものでした。
鏡史郎はこの内容には違和感を抱かずに、未咲に対する恋心を記して返事を送ります。
しかし、未咲を騙る裕里と未咲本人から別々で手紙を受け取るようになった鏡史郎はこの状況を不思議に思い、裕里に会いにいきます。
そこで、隠し切れなくなった裕里から、未咲が死んだことを知らされます。
裕里は同窓会で、姉の死だけを伝えて帰るつもりでしたが、クラスメイトたちが自分のことを姉だと思い込むので、本当のことを言い出せなかったのです。
【結】ラストレター のあらすじ④
裕里の話で鏡史郎は全てが繋がったと思いましたが、ひとつだけわからないことがありました。
それは、実家に送った未咲への手紙の返事を、誰が書いたのかということです。
ある日、鏡史郎が母校の中学校に遊びにいくと、そこには未咲にそっくりな女の子が二人と、大型犬がいました。
それは、鮎美と颯香と、裕里がいきなり飼うことを強いられた大型犬でした。
鏡史郎は、あまりにも二人が未咲に似ているのでつい声をかけてしまいます。
二人も、鏡史郎が、未咲宛に手紙を送った人だということに気が付きました。
二人は鏡史郎に、未咲の名前で手紙に返事を書いたことを認め、謝ります。
鮎美は鏡史郎に、未咲の遺言の内容を教えてくれました。
それは、未咲と鏡史郎が中学時代に書いた答辞と同じ内容でした。
鏡史郎は、どうして未咲が遺言にそれを選んだのかはわかりませんでしたが、未咲に自分の文才を認められていたことを実感するのでした。
ラストレター を読んだ読書感想
岩井俊二らしい、不思議な恋愛物語でした。
夢を諦めかけている鏡史郎が、未咲の死を乗り越えてもう一度夢に向かって努力し始める姿勢が眩しかったです。
夢を叶えられずにくすぶってしまう鏡史郎にとても共感できました。
少し前向きになれる一冊です。
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