「探偵が早すぎる(上)」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|井上真偽

「探偵が早すぎる(上)」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|井上真偽

【ネタバレ有り】探偵が早すぎる(上) のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:井上真偽 2017年5月に講談社タイガから出版

探偵が早すぎる(上)の主要登場人物

十川一華(そかわいちか)
主人公。父の死により莫大な遺産を相続するも、一族から命を狙われてしまう。

橋田(はしだ)
一華に仕える使用人。一華へ探偵を雇うことを提案する。

千曲川光(ちくまがわひかる)
橋田が雇った探偵。事件が起こる前に事件を解決に導く。

東郷麻百合(とうごうまゆり)
大陀羅家第二子長女朱鳥の娘で長女。元彼の鏑木に一華暗殺の手伝いを依頼する。

大陀羅六強(だいだらりくごう)
大陀羅家第三子次男。若竹友成が考案した暗殺計画に目を付け、一華暗殺を依頼する。

東郷芽瑠璃(とうごうめるり)
大陀羅家第二子長女朱鳥の娘で次女。児童養護施設を抜け出した幼い兄妹を一華暗殺に利用する。

探偵が早すぎる(上) の簡単なあらすじ

父の死により、高校生の十川一華は莫大な遺産を相続します。しかし、それをよく思わない一族から遺産を狙った暗殺未遂にあってしまい、使用人の橋田は暗殺へ対抗する為に旧知の仲である探偵を雇います。その探偵は、事件が起こる前に殺害トリックを看破し、犯人を暴き出すという凄腕の探偵でした。

探偵が早すぎる(上) の起承転結

【起】探偵が早すぎる(上) のあらすじ①

早すぎる探偵の登場

高校生の十川一華は父の死により莫大な遺産を相続しましたが、父は大陀羅家当主の愛人の子であったため、正妻の兄弟姉妹達からは疎まれており、一華は彼らから遺産狙いの暗殺未遂にあっていました。

暗殺に脅える一華に対し、使用人の橋田は探偵を雇って逆に相手の罪を訴える方法を提案します。

一方、大陀羅家第二子長女朱鳥の娘である長女麻百合は、昔馴染みの鏑木秀英へ一華暗殺の手伝いを依頼します。

鏑木は一華がケガでギプスを着用している点に目を付け、アレルギー成分を含んだかゆみ止めを使用させ、アレルギーショックによって殺害する方法を提案します。

朱鳥の承認が下り、麻百合側で殺害方法の実行に移ったものの、事前に犯行を察知した探偵の手により、かゆみ止めは差し替えられていました。

鏑木の失敗は、殺害方法の策定だけを行い、その実行を他者に丸投げしてしまったことでした。

それにより、一華の周囲を観察していた探偵に実行犯の不手際が露見してしまい、そこから芋づる式に鏑木がトリックを作り出したことまで突き止められてしまったのでした。

副作用を発症する禁煙パッチを張り付けられていた鏑木は、それに気付かずに喫煙してしまったため、軽度のアレルギー症状を発症。

見事に探偵のトリック返しを受けました。

麻百合の仕組んだ暗殺は探偵によって未然に阻止されたのでした。

【承】探偵が早すぎる(上) のあらすじ②

毒蜘蛛暗殺未遂

遺産の使い道を橋田に相談する一華。

女子高生であり、まだまだ若い一華にとっては、その存在は漠然としたものでしかありませんでした。

一華は探偵といつ会えるのか、橋田に質問します。

橋田の知り合いであり、密かに暗殺を防いでみせた探偵は、未だに彼女の前に姿を現していないのでした。

次に暗殺を企てたのは、大陀羅家第三子次男の六強でした。

家族を養う身でありながら会社をクビになり、社会に対する鬱屈とした感情を抱える若竹友成に目を付けた六強は、友成が考え出した毒蜘蛛を用いた暗殺計画を採用し、彼に暗殺を依頼します。

友成は猛毒を持つシドニージョウゴグモをバイト先の同僚が違法に飼育していることを掴んでおり、日中に家に侵入して蜘蛛を盗み出します。

その際、野良猫を部屋に放し、あくまで野良猫が部屋へ侵入し、部屋内を荒らした結果、蜘蛛が逃げ出したように見せかけるという工作も行いました。

後は毒殺を実行するのみ。

しかし、そんな友成の元へ探偵は姿を現します。

毒蜘蛛の脱走は新聞に載るほどの事件になりましたが、探偵は夜行性であるシドニージョウゴグモが昼に野外へ脱走したことに違和感を覚えました。

もし毒蜘蛛が盗まれたのであれば、どういう方法で暗殺に用いられるのか。

推理の末に、一華がコンビニへ行く度に期間限定のクジを引いていることに目を付け、クジ箱の中に蜘蛛を仕込む暗殺方法、そして一華の行きつけのコンビニでバイトをしている友成に辿り着いたのでした。

友成は探偵の仕込んだセアカゴケグモの毒により倒れます。

またも探偵のトリック返しが決まり、暗殺は未然に防がれたのでした。

【転】探偵が早すぎる(上) のあらすじ③

非情な暗殺計画

一華はボランティアで地域のハロウィンイベントにスタッフとして参加します。

そんな一華を狙うのは、朱鳥の娘である次女の芽瑠璃。

彼女は児童養護施設から抜け出した幼い兄妹を保護し、彼らにお金をちらつかせて仕事を依頼します。

その仕事とは、兄妹にイベントに参加してもらい、サプライズとして一華をおもちゃのナイフで刺すこと。

施設を抜け出してお金の無い二人は、あくまでおもちゃで驚かすだけならと、芽瑠璃の仕事を引き受けます。

イベントは各種ゲームをクリアしてスタンプを集めると、最後には大魔王と戦えるという趣旨のスタンプラリーでしたが、一華は急遽代役として大魔王役に選ばれました。

ゲームを全てクリアしなければ一華に会うことが出来ないと知り、不測の事態に苛立つ芽瑠璃ですが、何とかゲームクリアのために兄妹をサポートし、兄妹は大魔王の元へと辿り着きます。

しかし、運悪く一華は離席しており、計画は失敗に終わりました。

業を煮やした芽瑠璃は、帰途に付いていた橋田と一華の乗る車を強引に足止めし、一華の元へ兄妹をけしかけます。

芽瑠璃の狙いは、ハロウィンの仮装として兄が被っていたカボチャ頭に仕込んでいた爆弾により、兄妹もろとも一華を殺してしまうことでしたが、何故か爆弾は起動しません。

そんな時、芽瑠璃が待機していた車中へ、いつの間にか持ち込まれていたゲーム機より探偵の声が響き渡ります。

探偵は兄妹に保護者がおらず、サイズの合わない服や装飾品を身に着けていた点から、兄妹に対する関心が無く、別の目的を持って彼らにサイズの合わない服を着せた存在がいることを推理します。

芽瑠璃が兄妹をサポートするために近くで待機していることを把握し、兄妹の隙をついて爆弾を取り外していたのでした。

探偵のトリック返しにより芽瑠璃は車ごと爆発に巻き込まれ、またも暗殺は失敗となりました。

【結】探偵が早すぎる(上) のあらすじ④

使用人の素顔

ケガが治り、ようやくギプスを外すことが出来た一華。

そんな一華へ、親戚が一堂に会する一華の父の四十九日が、今回の暗殺劇の山場になるだろうと橋田は語ります。

芽瑠璃が爆弾テロに巻き込まれたと聞いていた一華ですが、彼女はそれが例の探偵の仕掛けによるものであることを察していました。

既に自分は大陀羅本家と対立する関係にある。

そのことを悟った一華は、彼らに立ち向かうことを決意します。

そんな折、ようやく探偵が一華の前に姿を現します。

中性的な見た目の探偵は、千曲川光と名乗りました。

そして、橋田に今後の情勢について話し始めます。

一華暗殺に腰を上げているのは、大陀羅家七人兄弟姉妹の中でも、第一子長男の亜謄蛇、第二子長女朱鳥、第七子三女の天后の三人。

第四子次女陣香、第五子三男竜精、第六子四男貴人は暗殺に乗り気では無く、第三子次男の六強は探偵のトリック返しにより、毒アリに刺されて病院送りとなっていました。

亜謄蛇と朱鳥には子供がいて、そちらも参戦してくるだろう、といった探偵の話が続く中、一華は橋田の様子がいつもと違うことに気が付きます。

どこか興奮したような様子を見せる橋田は、いつも使用人として自分に使える彼女とは違うように感じたのです。

探偵とは古い知り合いだと話していた橋田。

探偵と一緒にいたときの橋田と、使用人として自分を支えてくれる橋田は、果たしてどちらが本当の彼女なのか。

一華は橋田の素顔について思いを馳せるのでした。

探偵が早すぎる(上) を読んだ読書感想

本作の見どころは、作品名にもある通り、事件が起こる前に事件を解決してしまうという、一風変わった探偵の登場するミステリーであるという点です。

まだ事件が起きていない故に、事件に繋がる事象は膨大に存在します。

そんな、砂浜の中から目当ての砂粒を見つけるようなことを、本作の探偵はやってのけてしまうのです。

その探偵の所業には、感嘆するほかありません。

また、本作はミステリーのジャンルで言うと犯人視点で物語が進む倒叙というものになっており、まだ事件を起こしていないのに、僅かな物証から暗殺未遂犯であることを突き止められてしまう衝撃を、犯人の視点から一緒に味わうことも出来ます。

下巻にて、ついに大陀羅家との全面対決です。

果たして、探偵は全ての事件を未然に解決することが出来るのでしょうか。

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