【ネタバレ有り】パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:内藤了 2014年4月に角川ホラー文庫から出版
パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子の主要登場人物
石上妙子(いしがみたえこ)
東京大学法医学研究室に在籍する大学院生だが、女性ながら実力がある。
ジョージ・C・ツェルニーン(じょうじ・しー・つぇるにーん)
FBIにも協力したことがある法医昆虫学者で、東大に客員教授として招かれた。
両角教授(もろずみきょうじゅ)
石上が在籍する「死因究明室」と呼ばれる研究室の責任者。
厚田巌夫(あつたいわお)
新米刑事で、今作ヒロインである石上とともに事件を追う。
千賀崎清志(ちがざききよし)
「週刊トロイ」の記者で、フリーライター。
パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子 の簡単なあらすじ
連続ドラマ化された「ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズを手掛ける内藤了によって書かれたスピンオフ作品の一つです。今回は、藤堂比奈子シリーズで群を抜いた濃いキャラクターとして登場している『死神女史』こと石上妙子の若かりし日の事件簿です。彼女が変死体専門の検視官となったのには、この事件が大きなきっかけとなっています。
パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子 の起承転結
【起】パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子 のあらすじ①
石上妙子は大学院生ですが、優れた観察眼と他の学生にはない遺体と向き合うことができる強い精神を持ちあわせた女性です。
ある日、そんな石上のもとに、野生動物に食べられ無残な状態になった遺体が運びこまれてきます。
警察による実況見聞では、どう見ても自殺体であるとされ片づけられた事案ではありましたが、解剖の結果、石上は遺体の口のあたりに小さな紙片が付着していたことに違和感を感じます。
その紙は遺書だろうと推測されたのですが、「人は首吊り自殺をするとき、足元に遺書を置くことはあっても、それを口にふくむだろうか」と。
そして、時同じくして、十代の少女の連続失踪事件が発生していることを週刊誌「トロイ」で目にするのでした。
そんな彼女たちの大学に、FBIにも協力したことがある法医昆虫学者がやってきます。
イケメンであるジョージは、女生徒や女性スタッフの好意の的になります。
石上は両角教授から彼の世話係を任されるのでした。
【承】パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子 のあらすじ②
この一連の謎を解き進めるにあたって、石上に協力する人物が3名登場します。
まずは、石上にコンタクトをとってくる謎のフリーライターです。
彼は、失踪している多くの少女たちの足取りを追うべく独自の調査をしており、石上や警察側がまだ知らないようなヒントを与えてきます。
次に、石上と同じように最初の事件に違和感を覚えていた新米刑事厚田です。
刑事としての情熱だけでなく、彼には人としての思いやりやバランス感覚があり、人間として癖のある石上と終始うまくコミュニケーションもとれる人物です。
ラボだけの机上の空論を展開するのでなく、現場へと彼女を導き、今後の彼女のワークスタイルに影響を与えます。
最期がジョージです。
彼は、遺体に発生した虫を観察・分析し、彼女をサポートします。
そして、研究一筋だった彼女を女へと変えていきます。
そんな時、ジョージの母が来日します。
彼の母はとても厳格な人で、ジョージは尊敬しているものの、母の束縛から解けない男でもありました。
【転】パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子 のあらすじ③
一連の誘拐された少女達の多くは、犯人によって殺害されていました。
その理由は、本当に身勝手で許されざるものでした。
彼は、夢見る年頃の少女たちが惹かれるような人物(美術教師、画家)といったものを装い、甘い言葉をささやいては彼女たちと交際をしていきます。
そして、少女たちがちらりと大人の高圧的であったり、薄汚い部分を彼に向けた瞬間、自分のコントロールが効かないと感じて、豹変して殺害するのでした。
その犯人とは、いったい誰だったのか。
それは、石上たちに数多くのヒントを与えていたフリーライターの千賀崎でした。
厚田達警察の捜査で、彼が幼少期に母親との関係で辛い経験をしてそういった性格になってしまったことも判明します。
しかし、殺された被害者遺族からすると納得いく由もなく、ある被害者の婚約者が千賀崎を石上の目の前で殺めます。
死者と向き合う日々の彼女にとって、目の前で人が死んでいくのを見るのは衝撃的でした。
そんな彼女を支えたのは、ジョージだったのです。
【結】パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子 のあらすじ④
法医昆虫学者ジョージは、石上と出会い、愛し合うことで、ようやく母の呪縛から逃れることができる日々を送っていました。
しかし、それは予想外の逃れ方でした。
ジョージは自分の滞在先に来た母を殺害し、それを研究対象である昆虫たちに食べさせていたのです。
違和感を感じた石上は、厚田に頼んで一緒に彼の住まいを訪れます。
扉を開け進むにつれ、嗅ぎなれた臭いを感じます。
それは、まぎれもなく「死臭」でした。
彼女たちは意を決して最後の扉を開けると、そこには様々な虫が群がり食され続けているジョージの母の遺体がありました。
ここにもまた、一人、母親との誤った関係性から抜け出せずにもがいた男がいたのでした。
彼女のお腹には彼の赤ちゃんが宿っており、その子は将来異常殺人犯の子供として世に知られるかもしれませんが、彼女はなんの罪もない「命」を産もうと決心するのでした。
そんな彼女に新米刑事厚田がそっと寄り添って、この物語は幕を閉じます。
パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子 を読んだ読書感想
サスペンスとして連続少女誘拐事件の傍らで、石上とジョージとの淡い恋愛が唯一の救いだったのですが、最後の最後で、予想外の悲しい結末になるとは思いませんでした。
よく、男の人にとって、「母親は最初の恋人」といいますが、その呪縛から逃れられなかった二人の男と彼らに恋した女性たちの心の傷が今作品のテーマかと感じられました。
ジョージとの子供を「産もう」と決意した石上の母として、人としての強さに驚かされました。
ジョージのことは許せない反面、仕事一筋だった彼女が本当に愛した人だったからこそ、そういう結論に至ったのかもしれません。
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