【ネタバレ有り】人狼ゲーム のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:川上亮 2013年8月に竹書房文庫から出版
人狼ゲームの主要登場人物
仁科愛梨(にしなあいり)
主人公。控えめな性格であり、元クラスメイトの友広を頼りにする。
多田友広(ただともひろ)
冷静に人狼ゲームへ挑む。愛梨のことを守ろうとする。
井上このみ(いのうえこのみ)
真理絵とは姉妹。
井上真理絵(いのうえまりえ)
このみの姉。予言者をカミングアウトする。
藤木毅(ふじきたけし)
不良。予言者を宣言し、真理絵と対立する。
人狼ゲーム の簡単なあらすじ
仁科愛梨は目を覚ますと知らない場所にいて、そこには同じ北摂高校に通う男女10人がいました。突如人狼ゲームの開始が宣言されて、命をかけるゲームに愛梨達は参加させられます。一人、また一人と命を落としていく中、愛梨は人狼の正体を見抜き、何とか生き残ることに成功します。しかし、それが序章に過ぎなかったことを愛梨は知ることになるのでした。
人狼ゲーム の起承転結
【起】人狼ゲーム のあらすじ①
仁科愛梨はバイトの帰りに突如連れ去られ、知らない施設の中で目を覚まします。
そこには愛梨と同じように施設に連れてこられた同年代の男女がいて、全員が同じ北摂高校に通っている生徒のようでした。
全員が混乱する中、スピーカーから声が流れ出します。
ここにいるメンバーで人狼ゲームを行ってもらう。
これはその全てが撮影・中継されているショーであり、最終的に生き残った陣営には一億円を払う用意がある、とスピーカーの声は告げます。
突然のことに愛梨達は困惑しますが、スピーカーの声は構わずにルールを説明していきます。
ゲームは村人と人狼の二つのチームの戦いです。
毎日二十時に投票を行い、最多票を集めた人間を吊るします。
人狼は夜の間に一人を襲うことが可能で、投票と襲撃を繰り返して最後まで生き残った陣営が勝利となります。
説明の途中で猪瀬尚子が席を立ち、ばかばかしいと話を一蹴します。
しかし、直後に尚子は倒れ、傍目にも死んでいることが窺えました。
ゲームの進行を阻害する行為は死につながると、無慈悲にもスピーカーの声は説明します。
全員の首には金属製の輪がはまっており、それが尚子の命を奪ったのであろうこと、そして、これがただのゲームではなく、本当に命を掛けるゲームであることに全員が気が付きます。
スピーカーの声は人狼側はゲームのスペシャリストであることを最後に告げ、説明を終了します。
愛梨の役職は村人でした。
命がかかったゲームということもあり、疑心暗鬼となりつつも、愛梨達はなんとか自己紹介を済ませます。
尚子の死体を彼女に割り当てられていた個室へ運んだところで、一同は一旦解散するのでした。
尚子の死により、生き残っているのは九人になっていました。
【承】人狼ゲーム のあらすじ②
愛梨の元を訪れた川崎文隆が、藤木毅へ投票しないかと呼びかけます。
文隆は色々と理由を話しますが、本心としては不良である毅への個人的な恨みがあったのでした。
愛梨は元クラスメイトで顔見知りであった多田友広へ相談を持ち掛けます。
友広は味方を作ることも戦略だと言い、こんな状況でも合理的に生き残る術を模索しているようでした。
その日の投票は票が割れたものの、最終的には文隆が吊るされました。
複数人に協力を呼びかけたものの、彼自身の周りを見下した性格を一同は快くは思っていなかったのです。
翌日、下林勇平が部屋で死亡しているのが発見されます。
昨夜の投票で勇平が愛梨に票を入れていたことを理由として、自分を疑う相手を殺したのではと、愛梨は人狼を疑われます。
恐怖のあまり、愛梨は自室に逃げ込みます。
その際、テレビ画面に表示される文章を愛梨は見つけます。
それによると、愛梨のバイト先を閉店させる要因となった万引き犯の正体が勇平であったということでした。
愛梨を心配して部屋を訪れた友広は、自身も同じような文章を見つけたと明かします。
それは、轢き逃げにより自身にケガを負わせた犯人が、井上このみであるというものでした。
ここに集められたメンバーには繋がりがありました。
誰かが誰かを恨む理由がある。
憎しみの関係性があったのです。
そんな友広の推理を証明するように、他のメンバー間で言い争いが始まっていました。
生存者は、残り七人です。
【転】人狼ゲーム のあらすじ③
誰かが誰かを恨んでいる。
その関係性を図にすると、最終的には一つの輪になるのではないか。
そのことに気付いた愛梨は、またも友広へと相談を持ち掛けます。
この恨みによる関係性が、人狼の正体を掴む手掛かりにならないかと考えたのです。
友広は、人狼側はゲームのスペシャリストである以上、個人的な恨みで行動することはないだろうと答えましたが、友広を信頼して相談を持ち掛けてきた愛梨へ好意を示します。
お互いが信頼し合っていることを確認した二人は、次の投票へと向かいます。
投票間近に井上真理絵が予言者であることを宣言し、町村誠一郎が狼であることを皆に伝えます。
そのカミングアウトに対し、すぐに毅が自身が予言者であると反論します。
そして、誠一郎は村人であると真っ向から対立しました。
真理絵と毅、どちらかは狼であり、偽物の予言者です。
緊迫する雰囲気の中、最多票を集めたのは誠一郎でした。
その選択は、多くの人間が毅が人狼であるとみなしたことと同義でした。
生存者は、残り六人です。
【結】人狼ゲーム のあらすじ④
翌日襲撃されたのは稲葉瞳でした。
彼女は毅に恨みを抱いていたため、投票が集まるのを避けるために毅が襲撃したのではないかと友広が指摘し、やはり大勢は毅が人狼であることを疑っていました。
その日、このみの部屋へ向かった愛梨は、このみが整理していたそれぞれの投票先を見て、違和感を抱きます。
票が集まるのを避けるため、人狼同士は投票し合わない可能性が高い。
しかし、誠一郎は初日に毅に投票しているのです。
毅が本当の予言者であれば、必然的に真理絵が人狼になります。
このみは信頼している姉である真理絵が人狼であると信じたくはありませんでしたが、断腸の思いで真理絵へと投票し、彼女が吊るされることになりました。
翌日死んだのは毅です。
つまり、村人である愛梨から見て、人狼は友広かこのみのどちらかだったのです。
愛梨は選択を迫られますが、投票先に選んだのは友広でした。
友広のことを愛梨は信頼していました。
友広はそんな愛梨のことを守ろうとしていました。
庇護されること、それは友広にとって都合よく動かせる駒でもあったことに愛梨は気づいたのです。
ゲームは村人の勝利に終わります。
首輪の力により意識を失う直前、愛梨はスピーカーの声が前半戦終了だと告げたのを聞きました。
次に目を覚ましたとき、周りには同年代の男女がいて、人狼ゲーム開始のアナウンスがスピーカーから流れます。
役職カードに書かれていたのは人狼。
同じ生き残りであるこのみと視線を交わし、彼女もそうであることを愛梨は理解します。
スピーカーの声は告げます。
人狼側はゲームのスペシャリストであると。
その意味を理解した愛梨は、残酷なショーを生き残るために、次なる獲物の物色を始めます。
冷徹にゲームを進めていた友広。
愛梨もまた、先のゲームで心が麻痺しきっていたのでした。
人狼ゲーム を読んだ読書感想
本来の人狼ゲームは論理的に考えることが重要であり、時には自分が吊られることを作戦とすることすらあります。
この作品の面白いところは、本当に命が掛かっているからこそ、感情的にならざるを得ない、そんな登場人物達の心理模様を描いているところです。
誰かが誰かを恨む関係性という要素もまたそれに一役買っていて、本来論理的である人狼ゲームに人間ドラマを落とし込むことで、非情に凄惨な世界観を描き出している点が魅力的です。
そして、なんといっても物語のラストで明かされる残酷なショーの仕組み。
この作品を象徴するような結末となっています。
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