【ネタバレ有り】猿の見る夢 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:桐野夏生 2016年8月に講談社文庫から出版
猿の見る夢の主要登場人物
薄井 正明(うすい まさあき)
主人公。銀行員で、現在は女性衣料ブランドOLIVEの財務担当取締役に出向中。
浅川 真奈(あさかわ まな)
OLIVEの会長秘書。
田村 美優樹(たむら みゆき)
薄井の元部下で愛人。
薄井 史代(うすい ふみよ)
薄井の妻。
長峰 栄子(ながみね えいこ)
占い師兼セラピスト。史代の相談に乗るために薄井家に出入りする。
猿の見る夢 の見どころ!
・薄井が巻き込まれる会社のセクハラ問題の行方
・薄井家に君臨する謎の占い師
・薄井家の遺産相続問題
猿の見る夢 の簡単なあらすじ
出世を目論む銀行員・薄井は、仕事と愛人の逢瀬とで忙しい毎日を送っています。
ある日、会長に呼び出されて聞かされたのは、社長がセクハラ問題で訴えられているという件でした。
火消しに奔走する薄井ですが、時を同じくして愛人の反逆や妻の占い師連れ込み問題、実家の遺産相続問題と様々な問題が薄井に襲い掛かります。
猿の見る夢 の起承転結
【起】猿の見る夢 のあらすじ①
銀行員の薄井は出向先の女性衣料ブランドOLIVEの財務担当取締役を勤めています。
薄井は向上意識が高く、次の人事異動では役員を目指しています。
そんなある日、薄井は会長の織場に呼び出されます。
そこで聞かされたのは、社長のセクハラ問題でした。
社長は会長の義理の息子にあたり、二人の仲はあまり良くありません。
しかし、これは会社のメンツに関わる大問題です。
薄井は会長と社長の仲を取り持ちつつ、問題解決に取り掛かります。
社長からのセクハラ被害を訴えているのは、会社に入っている清掃業者のパートの女性でした。
薄井は、会長たちと今後の対策を練るために頻繁に会長室を訪れます。
会長室には、会長秘書の浅川が控えています。
薄井は次第に浅川の魅力に惹かれていき、どうにかして近づけないかと考えるようになります。
しかし、薄井には愛人の美優樹がいます。
美優樹はわがままな性格で浅川を振り回すので、薄井は美優樹との別れを考えるようになりました。
しかし、さりげなくその話題を出すと、美優樹は手切れ金を要求してきます。
美優樹と別れて浅川とどうにかなろうかと考えていた薄井ですが、泣く泣くその考えは諦め、美優樹のご機嫌を取るのでした。
【承】猿の見る夢 のあらすじ②
薄井がセクハラ問題の火消に奔走している間に、薄井の妻・史代は家に女占い師の長峰を連れ込んでいました。
何も知らずに帰宅した薄井は驚きますが、妻はそっけない態度です。
長峰は夢占いを専門とするので、史代の相談内容の夢を見るまでは薄井家に泊まり込むと知らされた薄井は怒ります。
しかし、史代は長峰のことを信頼しているので、簡単には折れませんでした。
長峰は人気のある占い師で、史代は何か月も占ってもらう順番を待っていたのです。
妻の悩みが気になる薄井は長峰からそれとなく聞き出そうとしますが、長峰は決して教えてくれません。
薄井の今後を暗示するような発言をする長峰を気味悪く感じた薄井は、長峰に家を出て行ってくれるように頼みこみます。
長峰は家長に頼まれたら家にいる訳にはいかないと家を出ていきます。
それを知った史代は薄井に怒りをぶつけ、家を出て行ってしまいます。
薄井は、家にはろくに仕事もしない次男との二人暮らしになりました。
【転】猿の見る夢 のあらすじ③
妻が家を出ていったのを好機に、薄井は愛人の美優樹との逢瀬を楽しみます。
しかしそんな時、薄井の母が亡くなります。
急いで史代に連絡を取り、薄井は母の葬儀に向かいます。
葬儀会社選びの段階から妹夫婦と口論になりつつも、葬儀は執り行われました。
しかし、その葬儀に美優樹がやってきたのです。
葬式の場に不釣り合いなほどのメイクに派手な髪色の美優樹は完全に場違いでした。
薄井の会社から派遣されて受付をしていた浅川が美優樹に声をかけたため、会社の人間にも美優樹が薄井の愛人であることが薄々知られてしまいます。
妻の史代はなにも言いませんでしたが、おそらく美優樹のことは気付かれてしまっただろうと薄井は観念します。
葬儀後、財産分与の話し合いが行われました。
薄井は長峰から、薄井にとって不都合な遺書があると告げられていました。
実際に実家に探しに行くと、全財産を薄井の妹に譲るという内容の遺書がありました。
薄井はそれを破棄し、遺産分は現金でもらうことになりました。
長峰からは、もし占いが当たっていれば成功報酬を渡すようにと言われていましたが、薄井はしらばっくれます。
【結】猿の見る夢 のあらすじ④
母の葬儀後、薄井は正式に史代から離婚を言い渡されました。
原因はやはり薄井の女性問題でした。
そして、その原因である美優樹からも別れを告げられます。
薄井は完全に変える場所を失ってしまったのです。
忙しくしていたセクハラ問題も解決に向かっていました。
清掃会社のパートの女性に、セクハラをネットで訴えるように仕向けたのは浅川でした。
社長はパートの女性以外にも多くの女性に手を出していて、浅川もその一人でした。
社長に失脚してほしいが自分の手を汚したくない浅川は、清掃会社の女性を利用したのです。
清掃会社の女性は社長よりも浅川に腹を立てていました。
薄井は浅川の二面性に驚きながらも必死で謝罪をし、無事に許してもらうことに成功しました。
これで社長にも会長にも恩を売ったとご満悦の浅川に、驚愕の事態が待ち受けていました。
会社が買収されるのです。
このままでは出向の身の薄井は職を失うかもしれません。
家も仕事も希望を失った薄井が頼るのは、もう長峰しかいませんでした。
しかし、長峰に連絡を取ろうとしても、長峰はもう捕まりませんでした。
猿の見る夢 を読んだ読書感想
主人公は仕事に女に金にと強欲で、あまり好きになれるタイプではありませんが、ドタバタと次々に発生する問題にハラハラさせられる一冊です。
主人公が成敗されていく様はとても爽快なのですが、キーパーソンである女占い師の長峰がとても不気味で、最後まで良い人なのか悪い人なのかわかりませんでした。
また、人間の二面性もうまく描いていて、陰と陽の使い方が絶妙です。
ページ数は多いですが気楽に読めるのでおすすめです。
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