「叛徒」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|下村敦史

「叛徒」

【ネタバレ有り】叛徒 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:下村敦史 2015年1月に講談社から出版

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叛徒の主要登場人物

七崎隆一(ななさきりゅういち)
本作の主人公。新宿署の通訳捜査官。

七崎健太(ななさきけんた)
隆一の息子。事件に関わる。

田丸茂一(たまるしげかず)
新宿署の捜査官。

王英瞬(ワンインシュン)
殺人事件の第一発見者。

黒河内沙紀(くろこうちさき)
入国管理局の入国警備官。美人で優秀。

叛徒 の簡単なあらすじ

中国語専門の通訳捜査官の七崎は、義父の死の責任を感じ、組織の中で何が正義なのか悩みます。ある殺人事件の捜査中、息子の部屋から血痕のついたジャンパーを発見します。動揺した七崎は正義に反し、被疑者の供述を誤訳します。捜査が進むにつれあらゆる利害関係が判明し、事件に巻き込まれた息子を救うため、組織を敵に回して暗躍するのでした。

叛徒 の起承転結

【起】叛徒 のあらすじ①

息子への疑惑と七崎の嘘

七崎は息子健太の不登校と妻との関係の悪化に悩まされ、過去の自分のある行いに責任を感じていました。

そんな折、歌舞伎町のホテル街の路地裏で中国人の他殺体が発見され、通訳捜査官の七崎も取り調べに参加することになります。

その日帰宅しない健太の部屋に入った七崎は、ベッドの下に隠された血痕のついた水色のジャンパーを発見します。

事件では現場から逃走した男が目撃されており、そのジャンパーの特徴と一致することに愕然とし、それを隠ぺいします。

その後第一発見者の王英瞬の取り調べが再び行われます。

取り調べ担当は田丸です。

そして王は、犯人は日本人だったと証言します。

しかし七崎は警察が息子にたどり着くことを恐れ、とっさに犯人は中国人だったと誤訳してしまいます。

男は腹部を刺されており、死の間際に覚せい剤の袋を隠ぺいしていました。

中国マフィア等の組織抗争を懸念した捜査会議が開かれ、七崎は捜査の方向が日本人犯人説に向かわず、内心安堵します。

その時田丸に誘われ、共に単独捜査します。

七崎が帰宅すると健太はいまだ帰宅しておらず、手がかりを探すため日記を読みます。

そこには健太がいじめに遭っていたことが記されていました。

PCを開くと、その検索履歴は盗撮カメラものばかりで、グループチャットも発見します。

ケン、リュウヤ、タカシ、イオリの四人が書き込み、ケンが中国人への偏見を語り、中国人を襲うことを提案し、イオリはそれを止めるも、あおられ、押し切られるという会話内容でした。

そこで七崎は最近歌舞伎町で頻発していた中国人が突然後ろから暴行される中国人狩りの件に思い至り、ケンの犯行にまたも愕然とし、聞き込みを開始します。

被害者の一人から彼らがマフィアの構成員を襲ってしまい、狙われていることを聞き出します。

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【承】叛徒 のあらすじ②

七崎の過去、矢田川縫製の不正発覚

被害者の身元が割れ、周志明という技能実習生だったと判明し、義父のことを思い出します。

妻は幼馴染で、両親を早く亡くした七崎にとって実の父とも思える人でした。

二年前、社長夫妻殺人事件は技能実習生の中国人が実習先の社長を殺害した事件で義父は通訳を担当し、七崎は見習いでした。

被疑者は自白せず、上から勾留期間内に自白させるよう圧力を強くかけられていた五十嵐は焦りのあまり苛烈に責め立てていました。

その様子を見てか義父は被疑者に今自白し、裁判で真実を語れば無罪になると嘘を述べ、被疑者は自殺します。

この違法行為を察した冬木弁護士に説得され、七崎は事実を記した密告書を送り、義父は自殺に追い込まれたのでした。

周の同僚の孫浩が、周と掴み合いの喧嘩をしていたために取り調べられます。

彼はアリバイがあると主張しますが、七崎はないと誤訳します。

しかし、日本語研修を受けた孫浩は誤訳を指摘します。

七崎は訂正したものの、田丸の強い視線を感じます。

孫浩のアリバイの裏を取るために矢田川縫製に出向きます。

従業員は全員中国人で、口をそろえて仕事は五時に終わると言います。

その場合孫浩にアリバイはなくなります。

七崎はある女性から本当は残業があると密告されますが、田丸にそれを隠します。

深夜に単独で矢田川縫製に潜入した七崎は、午前一時頃仕事を終えた実習生たちに遭遇し、話を聞き出します。

彼らは皆社長から違法労働を告発した者は強制送還すると脅しを受けており、送り出し機関は裏社会と関係しているため、どうすることもできずにいました。

その後、入国警備官の黒河内沙紀が王英瞬を尾行しているところに偶然鉢合わせ、彼女と飲みます。

酷な生活に耐え兼ね失踪した李春燕が、王英瞬らしき人物と口論した末に連れ去られた件で、李春燕の捜索を社長から依頼されたことを打ち明けます。

それを聞いた七崎は王英瞬はマフィアだと推測します。

【転】叛徒 のあらすじ③

健太に忍び寄るマフィアの手

マフィアの下っ端の取り調べで、ある少年が「龍虎」という組織に拉致され、その場所を聞き出すことに成功し、ガサ入れが始まります。

実は七崎は場所の店をその隣の店に言い換えて訳し、少年を単独で救うという大きな賭けに出ていました。

少年は自分はチャットのイオリだと言います。

後日、健太の縛り上げられた写真が家に届き、健太の命と引き換えに証拠品の周の携帯を渡す日時と場所が記された手紙が添えられ、七崎は思案します。

証拠品を持ち出すのは不可能なため、王の取り調べ中に偽物とすり替えます。

受け渡しにはホームレスを使われます。

七崎の嘘によりガサ入れは失敗に終わり、もう一度マフィアに真実を聞き出すことになります。

七崎は自分の嘘を隠すためにわざと脅しをかけ、逃げるように仕向けます。

七崎はイオリと中国人狩りで返り討ちにされた中国人を発見します。

彼はイオリを見るなり、この人がやったと言い、この人が別の少年を置き去りにしていたと述べます。

それを聞いた七崎は、ケンは健太ではなく、イオリが本当はケンだったことに気付き、イオリはそれを認めます。

イオリは健太と以前会った時に周と一緒にいたと証言します。

孫浩は事情聴取で、水色のジャンパーの少年について、少年は犯人ではないと主張します。

健太のことを知っていると察した七崎は少年の父親であることを明かし、供述を促します。

健太は周にカメラを渡し、周は違法労働を撮影し、実態映像を「中国人実習生を苦境から救う会」に渡そうと試みていました。

しかし孫浩は黒社会から追われることを恐れて阻止し、喧嘩になりました。

事情聴取の後、七崎の通訳を不審に思っていた田丸に誤訳を指摘されます。

田丸は健太の中国語の発音をあらかじめ調べていたのです。

七崎ははぐらかします。

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【結】叛徒 のあらすじ④

沙紀の正体と義父の死の新事実

その夜、沙紀からの電話で七崎に逮捕状が出たと聞き彼女の部屋へ行き、寝たふりをする七崎は、なぜか中国語で電話する沙紀の声を聞きます。

外出した沙紀を尾行すると、王英瞬の姿がありました。

王英瞬は「中国人実習生を苦境から救う会」の一員で、事件当日周から実態映像のデータを受け取る予定でした。

健太は「龍虎」に人質にされ、助け出した周は逃げる途中追い込まれ、とっさにデータのSDカードを携帯のものとすり替えます。

矢田川縫製の失踪者は李春燕で十人目で、失踪者十名以上の場合不正行為が認定され、三年間実習生受け入れ不可能になります。

周が「龍虎」の覚醒剤のパケを隠した理由は、自分が十人目となるために、犯罪者として失踪したと処理されないためでした。

李春燕は保護されていました。

王は七崎と沙紀を自分の根城に案内します。

しかしその直後、「龍虎」のリーダー劉が乗り込んできます。

七崎と王と李は即拉致されるも、沙紀には手を出しませんでした。

埠頭に連れて行かれ、銃口を向けられた七崎は逃走を試みますが追い詰められ、絶体絶命のところを田丸含めた警察陣に救われます。

逮捕状の件、アパートでの件などは沙紀の自作自演でした。

送り出し機関と日本の受け入れ機関はつながっており、沙紀は入国管理官の立場を利用し、送り出し機関から報酬を受け取っていたと白状します。

七崎は拉致された後警察に通報したのは沙紀だったことに礼を言います。

その後「龍虎」は一網打尽にされ、冬木弁護士に匿われていた健太と再会します。

健太は事件現場で死の間際にSDカードを託されていました。

ジャンパーの血痕は周を抱き起した時のものでした。

冬木弁護士と妻を交えて話します。

二年前の事件の際に告発の手紙は二枚届いていました。

義父は自らも告発文を冬木弁護士に送っていたのです。

七崎の暗躍に気付いていた田丸と沙紀は黙っていましたが、七崎は辞表を提出し、家族と和解します。

叛徒 を読んだ読書感想

通訳捜査官が活躍する珍しい内容のサスペンスです。

事件の解決へ向かう展開はテンポよくスピーディで、一気に読むことが出来ます。

それと同時に通訳捜査官の難しさと責任、違う国の文化同士の偏見、外国人実習生の現実など、普段意識しない問題が浮き彫りになっていくのは圧巻です。

登場人物は皆何らかの秘密を抱えており、その葛藤も見どころです。

また、警察組織の矛盾、その中で板挟みになる七崎の葛藤についても丁寧に描かれ、多くのテーマを内包した作品だと思います。

七崎が誤訳を繰り返す際の田丸との無言のやり取りや、黒河内沙紀との駆け引きなど、スリリングな場面も多く目が離せなくなります。

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