初野晴「退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ)」のあらすじと結末ネタバレ

脱出ゲーム

【ネタバレ有り】退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ) のあらすじを起承転結で解説!

著者:初野晴 2008年10月に角川書店から出版

退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ) の簡単なあらすじ

穂村千夏(チカ)は、清水南高校の1年生。

吹奏楽部のフルート奏者である、「黙っていれば美少女」な女の子。

幼なじみであるホルン奏者の上条春太(ハルタ)と、部活漬けの青春を送っている真っ最中。

良き友、同志でありながら、少々不思議な「ライバル」でもあるふたりの目標は同じ。

それは、顧問の草壁先生を吹奏楽の甲子園「普門館」に連れて行くこと。

個性豊かな面々が巻き起こすさまざまな事件に首を突っ込みながら、部活や青春を謳歌するチカとハルタの青春が描かれる。

退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ) の起承転結

【起】退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ) のあらすじ①

ハルタとチカの青春

チカとハルタは吹奏楽部に所属する1年生。

明るく溌剌とした性格の少女。

中学校まではバレーボール部に所属していた彼女は、高校入学を機に「女の子らしくなろう」と決意し、吹奏楽部に入部しする。

担当楽器はフルートだ。

女の子らしさがふんだんに詰まった楽器だから。

そんな彼女と気の置けない間柄であるハルタは、成績優秀な美少年である。

ふたりは廃部寸前の高校の吹奏楽部で9年ぶりの再会を果たす。

それから部員を集めどうにか立て直し、日々部活に精進しているのだ。

吹奏楽部顧問の草壁先生は、チカの好きな人だ。

温和でやさしい先生には、どこか不思議な影がある。

将来を嘱望された指揮者でありながら、なぜかその道を捨てて教師になっているのだ。

でも、いつだって生徒にまっすぐ向き合い、親身に指導してくれる…そんな草壁先生に憧れるチカは、いつか必ず先生を普門館に連れて行きたい!と決意し精進する日々を送る。

【承】退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ) のあらすじ②

結晶紛失事件

ある日、ハルタが登校拒否になる。

チカが彼の自宅を訪ねるとハルタは「学校をやめる」と言うのだ。

その理由は、「携帯電話に撮りためていた好きな人の写真を、見られてしまったから」……。

チカのフォローにより何とかその件は解決したのだが、また別の問題が学校では起きていた。

科学部で保管されていた劇薬・硫酸銅の結晶が、どこかにいってしまったというのだ。

誰かに盗まれてしまったのではないか?だったら警察に行くべきではないかと提案するハルタに対し、チカはうなだれてそれはできないと答える。

学校では文化祭が近い。

そんな問題が起きたら、文化祭が中止になってしまうではないか!チカは頭脳明晰なハルタの知恵を借りにやってきたのだ。

【転】退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ) のあらすじ③

結晶泥棒の正体

ハルタはどうにか学校に戻り、吹奏楽部にも復帰する。

チカの友人であり科学部の希(のぞみ)は、やはり文化祭は中止になってしまうのだろうか…と不安を隠さない。

ハルタは冴えた頭脳で犯人を探り、ある日ついに犯人が分かったと言う。

ハルタが理科室に呼び出した犯人は、生物部の女子生徒。

硫酸銅の結晶は彼女が持ち出し、すでに飽和溶液になっていた。

つまり、もう結晶ではないのだ。

チカは彼女を問い詰める。

「あんな猛毒だってわかっていて盗んだの?」しかし、硫化銅は彼女にとっては毒ではなく薬なのだとハルタは言う。

彼女は、白点病に侵されたコバルトスズメ(海水熱帯魚)の姿を見るのがつらく、どうにかして治したいと思っていた。

海水魚の白点病の市販されている特効薬は高価で、なかなか一介の女子高生の手に入るような代物ではない。

だけど、硫化銅の水溶液が特効薬になり得る……。

彼女はそんな情報を得た。

彼女が硫化銅の結晶を盗んだのは「治す」ため。

生き物を愛し慈しむ気持ちからだったのだ。

【結】退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ) のあらすじ④

不思議な三角関係

硫化銅の結晶紛失事件は無事に解決し、文化祭も無事に執り行われる運びとなった。

吹奏楽部の演奏がつつがなく終わり、ステージ袖で女子生徒に囲まれている草壁先生を見ながらチカは思う。

「彼女たちの好きとわたしの好きは、次元が違う。」

深刻な部員不足だった清水南高校の吹奏楽部の現状を見たチカは草壁先生と一緒に部員集めに奔走し、ずっとそばで見続けていた。

だからこそ、このステージを心から先生と喜びあえる権利が、わたしにはあるのだと、チカは思う。

しかしひとつ、気がかりなことがあった。

それは、草壁先生をずっとそばで見てきて、恋をしてしまったのは、チカだけではないということだ。

チカはハルタを見る。

ハルタもまた、ぽうっとした視線を草壁先生に向けていた。

そう。

チカとハルタは恋のライバルだ。

携帯に撮りためていた先生の写真のことをクラスメイトにからかわれても、一切否定も言い訳もしなかったハルタ。

そんな彼を見つめてチカは不安にかられるのだ。

もしかしたらいつかハルタに、先生をとられてしまうんではないか。

想像を絶する三角関係の最中にいるふたりは、「卒業までは抜け駆けなし」という不思議な協定を結んで…今日も青春を謳歌している。

退出ゲーム(ハルチカ・シリーズ) を読んだ読書感想

「ハルチカ・シリーズ」は、謎解き要素を多く含む物語です。

ハルタが探偵役となり、学校で起こるさまざまな騒ぎや生徒の悩みを解決していきます。

彼の広範囲に渡る知識には脱帽もの。

魅力的な登場人物が多く、ひとつひとつ丁寧に設定された関係性も魅力的です。

オーボエ奏者の成島美代子の「弟の形見」をめぐる物語、サックス奏者マレン・セイの入部をめぐる演劇部との対決、トロンボーン奏者の中学生・後藤朱里が再現したい不思議な色「エレファンツ・ブレス」にまつわる不思議なお話…。

魅力的なエピソードがつまっていますので、ぜひひとつひとつ楽しんでください。

そして、この物語最大の特徴は「三角関係。」

先生をめぐる三角関係自体は珍しくないストーリーですが、男性をめぐる男子生徒と女子生徒の三角関係は少し珍しいかもしれませんよね。

それでも2人は「先生を普門館へ連れて行く」という共通の目標に向けて努力する日々を送ります。

三角関係でありながらどろどろとした関係性に陥らない、あくまでさわやかな関係性。

2人と先生のこれからからも目が離せませんね。

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