「ふなふな船橋」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|吉本ばなな

「ふなふな船橋」

【ネタバレ有り】ふなふな船橋 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:吉本ばなな 2015年10月に朝日新聞出版から出版

ふなふな船橋の主要登場人物

花(はな)
本作の主人公。15歳で父母の離婚により、奈美おばさんと暮らし始める。本が大好きで、やがて本屋の店長になる。

花子(はなこ)
花の夢の中に出てくる少女。やがて実在する人物であることが明らかになる。

奈美おばさん(なみおばさん)
花の母親の妹。父母と別居した花を引き取り育てる。美人で独身。

幸子(さちこ)
花の親友。編集者である両親の手伝いをしたりタロット占いをしたりしてほとんどの時間を自宅で過ごしている。

俊介(しゅんすけ)
花の元恋人。長野の老舗の蕎麦屋の跡を継ぐべく、東京で実家の店舗のインターネット店店長をしている。

ふなふな船橋 の簡単なあらすじ

15歳の花は、今日から母と別々に暮らします。別れ際近く、母はふなっしーのぬいぐるみを買い、「いつもこのこのそばにいてあげて」と泣きました。新しい住まいで待つのは母の妹、謎に満ちた奈美おばさん。そして二人が暮らすその住まいには、悲しい秘密が隠されていたのでした。

ふなふな船橋 の起承転結

【起】ふなふな船橋 のあらすじ①

ふなっしーを抱いて新生活へ

 花は15歳の中学生です。

 父は事業に失敗し失踪、両親は離婚し母は再婚することに。

花は新しい家族と一緒に暮らそうという母親の誘いを断り、母の妹、奈美おばさんとの二人暮らしを選びます。

 別々に暮らし始める日の別れ際、母は花にふなっしーのぬいぐるみを買い、泣きながら渡します。

「ふなっしー、この子を守って、一緒にいてあげて」と。

 奈美おばさんとの生活は心地よいものでした。

母の新しい家族とも適度な距離感で行き来しながら、花は思春期を過ごします。

 奈美おばさんの家に引っ越してきてからというもの、花の夢にはよく同じ少女が現れるようになります。

彼女の名前は「花子。」

花子はいつも、大きな木の生えている庭のある古い家の絵を描いていました。

花と花子は夢の中で友情をはぐくみ始めます。

 やがて成長した花は大好きな本の仕事を志し、大きな書店に就職します。

そしてその後、系列の小さな本のセレクトショップの店長となります。

【承】ふなふな船橋 のあらすじ②

花子の願い

 恋人の俊介とのなれそめは、駅でひったくりを追い詰めた花を偶然見かけた俊介が、その逞しさに惹かれてアプローチしたことでした。

 交際二年目、「もうすぐ結婚を申し込まれるかも」そんな期待と予感を抱いて出かけたある日のデートで花は「他に好きな人ができた」と告げられたのでした。

すべてがガラガラと崩れ落ちるような絶望感に叩きのめされる花でした。

 別れを受け止めきれずに過ごしていたある日、花は夢うつつの状態で不思議な夢を見ます。

 壁に書いてあった数字を電話に打ち込んだら、あの夢の中の友達、花子に通じたのです。

花子は花に、話し出します。

自分がお母さんの再婚相手に殺されたこと、いつも描いていた絵は大好きなお父さんの住んでいる家だということ。

 そして花子は花にお願い事をします。

お父さんの家の庭の木のほらに、花子が大切にしていたふなっしーのパペットとお父さんと暮らすためにためておいたお金が埋めてあることをお父さんに伝えてほしい。

お父さんの名前は松本清文です、と。

【転】ふなふな船橋 のあらすじ③

ほどかれていく秘密たち

 奈美おばさんは花に二つの秘密を打ち明けます。

 一つ目の秘密は、おばさんと花が住んでいるマンションで、かつて起こった悲しい事件です。

「女の子が義理のお父さんに無理心中を強いられ、義父は生き残ったの」その話は夢の中で花子が語った出来事、そのままでした。

 二つ目の秘密は、失踪したと思っていた花の父親が、実はずっと花の養育費をおばさんに渡し続けていたということ。

そしておばさんとお父さんは、お母さんが再婚する少し前から恋人同士で、交際は現在進行形で続いている、ということでした。

  秘密を打ち明けられてからしばらくたったある日、花は偶然夢の中で花子が描いていた絵にそっくりの家を見つけます。

表札には「松本」の文字が。

 花の話を聞いた家主の松本さんは、花子の父親でした。

 二人は花子が夢の中で語ったパペットとお金を掘り出します。

 花子の父親、松本さんは詩人でした。

 松本さんの著書は、花が店長を務めるセレクトショップに置かれるようになります。

【結】ふなふな船橋 のあらすじ④

俊介からのプロポーズ。

どうする?花

 松本さんとばったり会って、一緒に買い物にいった先のスーパーで、花は俊介に再会します。

 花のつらい気持ちを察した松本さんに助けられ、花はその場を後にします。

 それからしばらく過ぎた頃、花のもとに俊介から会ってほしいと電話がかかってきます。

 久しぶりのデートで俊介は花に「花への思いが立ち切れられない。

結婚して一緒に長野に来てほしい」と、プロポーズをします。

けれど、二人の間にぬぐい切れない相違点を感じた花は揺れ、答えを待ってほしいと返します。

 別れ際、俊介は花を抱きしめ、キスをし、そのなつかしい感覚がさらに花を混乱させます。

 答えを出せない花は親友の幸子に話を聞いてもらい、気持ちを整理していきます。

 そして俊介との会話の中で、もし花に断られたら、今の交際相手と結婚するに違いない俊介のあざとさを感じた花はプロポーズを断ることを決めたのでした。

 花は俊介に今までの感謝とプロポーズを断る旨のメールを送信します。

 

ふなふな船橋 を読んだ読書感想

「在る」とは、いったいどういうことなのだろうか。

 読み終えて本を閉じたとき、脳裏に浮かんだのはそんな疑問でした。

 自分を生かすために、私たちはある特別な存在を必要とします。

ある時は自分が作り上げた空想の友達、またはキャラクターや物語や映画の登場人物、アイドル、アーティスト等々。

 この作品の中の花と花子にとって、それがふなっしーだったのです。

 この手に触れられるもの、確かに在ると100人中100人が答えるもの、世界はそういうものだけで成り立っているのではなく、そうじゃないものが占める割合の方が実ははるかに大きいのかもしれません。

 世界の成り立ちに対する認識までふんわりと覆されてしまう一冊でした。

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