【ネタバレ有り】三面記事小説 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:角田光代 2007年9月に文藝春秋から出版
三面記事小説の主要登場人物
飯田亜実(いいだ あみ)
町内の県立高校に通う高校一年生。幼馴染の菜摘を誰よりも大切に思っている。生々しい男女交際に嫌悪感を持ち、夏になるとナンパ目的で都会からやって来る男たちを憎んでいる。
菜摘(なつみ)
亜実と小学生の頃から仲が良い。いじめられっ子だったが、中学生になりどんどん美しい少女に成長していく。美術教師で担任の玉谷に想いを寄せている。高校は隣町の女子高に進学した。
玉谷(たまや)
美術教師で亜実と菜摘の担任。東京生まれ東京育ちだが、海しかないこの町にやって来た。
田沢美恵(たざわ みえ)
亜実と菜摘のクラスメイト。「ビョーキちゃん」と陰であだ名をつけられている。抗うつ剤を服用しており、副作用でしょっちゅう居眠りをしている。
三面記事小説 の簡単なあらすじ
亜実と菜摘は小学生の頃からの仲で、中学二年生になった今でも常に二人で一緒に行動しています。亜実は誰よりも菜摘を大切に思っていますが、近頃の菜摘は、美術教師で担任の玉谷に夢中です。何かにつけて『たまちゃん、たまちゃん』と玉谷先生の後を追ったり、亜実と二人の時も玉谷先生のことばかり話題にする菜摘。菜摘を自分だけのものにしておきたい亜実は、玉ちゃん中心の菜摘に少々不満げ。しかし、夏休みを境に菜摘が変わり始めます。置いてけぼりをくらったような亜実。そして、事件を起こします。
三面記事小説 の起承転結
【起】三面記事小説 のあらすじ①
亜実と菜摘は小学生の頃からの仲良しで、中学二年生になった今でも常に二人で行動する親友です。
体が小さく、泣き虫だった菜摘は、男子からからかわれるとすぐに泣いてしまうので、自然に亜実が菜摘を守るようになっていました。
中学生になり、菜摘は美しい少女に成長していきました。
もう男子からからかわれることもありません。
亜実だけが大事にしてきたお人形が、実は価値のあるものだった気がして、誇らしい気分でした。
そんな菜摘は、今、美術教師で担任の玉谷に夢中です。
何かにつけて『玉ちゃん、玉ちゃん』と、玉谷の後を追い、亜実と二人の時も、話題は玉谷のことが中心です。
玉谷に夢中の菜摘に、亜実はつまらないと思うこともありましたが、まだ初潮もきておらず、同い年ながらあどけなさの残る菜摘に、生々しい「女」は感じず、姉のような心持で菜摘の片思いを見守っていました。
【承】三面記事小説 のあらすじ②
亜実と菜摘のクラスメイトに田沢恵美という女子がいました。
「ビョーキちゃん」と陰であだ名をつけられている彼女は、薬を常用している副作用でしょっちゅう居眠りをしており、クラスから浮いている存在でした。
ビョーキちゃんは亜実と菜摘と仲良くなりたいのか、二人を見つけるとにこやかな笑顔で近づいてきました。
菜摘が大好きな亜実は、ビョーキちゃんの好意を苦々しく思っていました。
菜摘を独り占めしたかったのです。
しかし、棘のある亜実の態度にもめげず、事あるごとにビョーキちゃんは二人に話しかけます。
菜摘の初潮に初めて気が付いたのもビョーキちゃんでした。
体育の授業終わり、菜摘のズボンが赤く染みがついていることに気が付き、菜摘に付き添って保健室に連れて行ったビョーキちゃん。
菜摘は『ビョーキちゃんのお陰で助かったよ。
ありがとう。
』と声をかけますが、亜実は気に食いません。
菜摘の一大事に自分を差し置いて、菜摘の隣にいたビョーキちゃんを邪険に扱います。
初潮がきてから、ますます菜摘は美しくなったと亜実は感じるようになります。
以前は、無邪気に玉谷先生にまとわりついていただけに見えて光景も、だんだんとリアルな女性と男性に見えてきてしまいます。
亜実はふしだらな男女交際に嫌悪感を持っていました。
亜実の住む町は海があり、夏になると海水浴を楽しむ客で賑わいます。
若い男性客はナンパ目的で近寄って来る者が多く、学校のお便りにも、ひと夏の遊びに注意が出されるほど、この町では都会の男に遊ばれ捨てられる地元の女子が大勢います。
亜実の姉もそのうちの一人で、夏がおとずれる度に、都会からやって来た男と簡単に恋に落ち、いいように弄ばれ捨てられることを繰り返しています。
愚かな姉だと馬鹿にしつつ、いつしか亜実は都会の男たちを憎むようになっていました。
【転】三面記事小説 のあらすじ③
夏休みになり、いつものように菜摘の家に遊びに行った亜実は、菜摘の母親から、菜摘が一人で東京に行ったことを教えられます。
寝耳に水だった亜実は混乱します。
大の仲良しで、なんでも包み隠さず話してきた私たちなのに、どうして菜摘は、自分に黙って一人で東京に行ってしまったのか?高校を出て、東京の大学に進学したら東京の青山に二人でアパートに部屋を借りて暮らそうと計画まで立てているのに、どうして一人で行ってしまったのか?菜摘は果たして本当に一人なのか?夏の間、東京に帰ると言っていた玉谷を追いかけて、今は二人で過ごしているのではないか?という疑いが頭に浮かび離れなくなります。
そこへビョーキちゃんから電話がかかってきます。
菜摘が東京へ遊びに行っていると菜摘の母親から聞いたビョーキちゃんは、『亜実ちゃんと一緒かと思ったけど、違ったんだね』と余計な一言を言ってしまいます。
イライラしていたところへさらに燃料を投下され、怒りに震える亜実は『ねえ、あんたって、いっつもなんかの薬のんでるんでしょ?なんのビョーキなの?』と、ビョーキちゃんに意地悪な質問をします。
受話器の向こうが一瞬静まりかえりましたが、ビョーキちゃんは、亜実が自分を心配しているのだと解釈したのか、熱心にうつ病について説明をはじめます。
鬱陶しくなった亜実は一方的に電話を切ってしまいました。
菜摘が東京から帰ってきたのはそれから数日経った頃でした。
【結】三面記事小説 のあらすじ④
東京から帰ってきた菜摘は、親戚の家に泊まりに行っていたとだけ言って、詳細を話してはくれませんでした。
そして、夏休みが明けると、一学期のように玉谷先生にまとわりつくことはしなくなりました。
玉谷先生に給食を運んだり、ノートを届けたり、玉ちゃん係を率先してやっていた菜摘でしたが、その役はビョーキちゃんがやるようになりました。
亜実は、夏休みで菜摘が変わったと感じるようになります。
無邪気で、自分にはなんでも話してくれた菜摘はいなくなってしまったかのように思い、絶望的な気持ちになります。
そして菜摘の口から、近々、玉谷先生が教師を辞めて、この町から出ていくことを聞きます。
なんでもないことのように話す菜摘がひどく落ち込んでいるように見える亜実はどうにかして菜摘を元気づけてあげたくなると同時に、玉谷に対して、夏が訪れる度にこの町へやって来ては、いいように遊んで去って行く都会の男が重なってみえ、復讐心が芽生えます。
亜実は菜摘に、『ビョーキちゃんが服用している抗うつ剤を、玉谷先生の給食に混ぜ込んで弱らせれば、この町を出ていく気力も起きない』と持ち掛けます。
亜実の提案にすがるように乗った菜摘は、ビョーキちゃんから入手した抗うつ剤をすり鉢で粉々にし、給食に混ぜ込みます。
翌日体調不良で欠勤した玉谷先生。
怖くなった菜摘はビョーキちゃんに計画を話してしまいます。
ビョーキちゃんは自殺未遂を起こし騒ぎになり、亜実と菜摘の計画が公になります。
事件後、玉谷先生は東京に戻り、二人は三年生になり別々のクラスになり、以来口をきかなくなってしまいます。
高校も別々の学校に進み、町ですれ違っても声を掛け合うことはしません。
亜実は、隣に菜摘がいなくなってしまった現在、心にぽっかりとした空洞ができたような気持ちで毎日を過ごしています。
三面記事小説 を読んだ読書感想
実際に起きた事件をもとに、作者の角田光代さんが想像を膨らませて書きあげた『三面記事小説』。
今回はその中から、担任教師の給食に薬物を盛った女子生徒たちを描いた『永遠の花園』をご紹介しました。
概要だけ読むと、反抗目的の嫌がらせに思える事件ですが、角田さんは女子生徒の恋心が引き起こした事件に見立て、多感な中学二年生の心情を緻密な描写で書きあげています。
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