【ネタバレ有り】女たちは二度遊ぶ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:吉田修一 2006年3月に角川書店から出版
女たちは二度遊ぶの主要登場人物
ユカ(ゆか)
男友達が連れてきた素性不明の女。連れてこられた日からぼくの部屋に転がり込み、ただ飯を食らう。炊事洗濯は一切せず、ぼくが帰るまでお腹を空かせて待っている。
ぼく(ぼく)
二十三歳のフリーター。居酒屋で副店長として働いている。いつまでも帰らないユカの身の回りの世話を焼くようになる。
仁(じん)
ぼくの男友達。ぼくと女の子をひっかけては遊んでいる。
女たちは二度遊ぶ の簡単なあらすじ
男友達が突然ぼくの家に連れてきた女がユカだった。一晩一緒に過ごし、翌朝降っていた雨の中を帰るのを渋っていたので引き留めるとそのままぼくの家に居ついてしまった。炊事洗濯は一切せず、ぼくの帰りをひたすら待つだけのユカ。はじめは居候しながら何もしないユカに腹は立ったものの、慣れてくると可愛いもので、お腹を空かせてぼくを待っているユカを愛しく思ったりする。ところが、あるいたずら心が芽生えたぼくは、ユカを部屋に置き去りにしたまま帰らなくなり……。
女たちは二度遊ぶ の起承転結
【起】女たちは二度遊ぶ のあらすじ①
男友達の仁ちゃんが突然ぼくの家に連れてきた女がユカでした。
ユカとは別の女の子を気に入っていた仁ちゃんは、ぼくにユカの相手をさせて、二人で消えていってしまい、ぼくの部屋にはユカとぼくが残りました。
一晩一緒に過ごし、翌朝目が覚めると外はどしゃぶりの雨。
止みそうにありません。
ユカの悲痛な声で起きたぼくは『雨が上がるまでいれば』と声をかけます。
引き留めたのではなく、その逆で、雨が上がれば帰ってくれという意味をこめて言ったのですが、その雨は三日半降り続けました。
それまでのぼくは、仁ちゃんと適当に女の子をひっかけては遊んでいて、ユカもその女の子の中の一人だったわけですが、運悪くというべきか、雨が止まないのを理由にぼくの家に居ついてしまいました。
一日目は、布団の中でいちゃいちゃして過ごし、冷蔵庫の中のショートケーキを二人でつつき飢えを凌ぎました。
二日目、冷蔵庫の中はおろか、母親が送ってくれたカップラーメンも食べつくし、お腹が減ったぼくは仕方なく夜中にコンビニへ買い出しに出掛けます。
その間、ユカは布団に転がっているままです。
三日目、ぼくはアルバイト先の居酒屋へ出掛け、帰宅したのは深夜二時前。
ユカはぼくが出掛ける前と変わらず布団に転がっているだけで、ぼくの帰りをお腹を空かせて待っていました。
【承】女たちは二度遊ぶ のあらすじ②
ユカはぼくの部屋で、ぼくの帰りをお腹を空かせて待っていました。
というのも、ユカはまったくご飯を作らなかったので、ぼくが帰りしなに買ってくる弁当をユカの命綱だったわけです。
ぼくの帰りをお腹を空かせて待っている姿は、正直胸にぐっときました。
炊事洗濯等の家事は一切せず、ただ布団に転がっているだけでしたが、それでもいつしかぼくはユカのために弁当を買って帰ることが楽しみになっていました。
どこにも出掛けず、放っておくと風呂にも入らないので、ぼくがユカの身の回りの世話をしてやるようになりました。
ユカは着替えもないので、下着はぼくのトランクスをはき、ブラジャーは着けず、上下スウェット姿で一日を過ごしていました。
二人でいる間はとりとめのない会話をしていましたが、ユカが本名なのかさえぼくは知りません。
ユカに聞いても、『結ぶに花と書いてユカ』と答える時もあれば、『理由の由に、香るって書いてユカよ』と答えたり、『ひらがなのゆか』や『カタカナのユカ』と答えが返ってくることもあり、結局わからずじまいでした。
【転】女たちは二度遊ぶ のあらすじ③
一日部屋にこもっているだけのユカに、ぼくは一度だけ仕事について聞いたことがありました。
ぼくが想像しているような風俗のような仕事じゃないという返事だけで、はぐらかれたぼくでしたが、ぼくにはユカの素性がわからなくても、いざとなったら、仁ちゃんや、仁ちゃんが連れてきたユカの友達の聞けばいいと考えていました。
ユカが居候をはじめて二か月経って、その間に一度、仁ちゃんに誘われて遊びに出掛けたことがありました。
女子高生をつかまえて、ホテルに連れ込んだぼくでしたが、脳裏に箸をくわえてぼくの帰りを待つユカの姿が浮かび、相手がシャワーを浴びている隙に自宅に電話をかけます。
電話に出たユカはお腹が減ったと情けない声です。
自分でコンビニでも行って買って来いと言っても、それなら我慢すると返すユカ。
意地を張るユカに苛立つぼくでしたが、結局、女子高生には母親が急病と嘘をついて、弁当を調達してユカが待つ家に走ったのでした。
【結】女たちは二度遊ぶ のあらすじ④
ユカは二か月間ぼくの家にずっとこもっていたわけではありません。
居座って三週間した時、ぼくがアルバイトを終え帰宅すると、いつも布団に転がっているユカの姿がありませんでした。
『やっと居なくなったか~』と誤魔化したぼくでしたが、言葉にできないほどの喪失感に襲われました。
三十分ほど呆然としているぼくのもとへユカが帰ってきました。
『どこに行っていたんだ』ど怒鳴りつけるぼくに、ユカは平然と『これは、男のあんたには買ってきてくれとは頼めないでしょ』と言ってビニール袋の中身を見せ、トイレに持って行きました。
ぼくは、ユカ居ることが当たり前になっていました。
そして、ユカは絶対自分のそばにいると信じ切っていました。
そこで、ユカを試すようないたずらを思いつきます。
家に帰らないでも、ユカはお腹を空かせてぼくを待っていてくれるかというものでした。
アルバイト先に泊まりこみ帰宅すると、案の定ユカはお腹を空かせて待っていました。
今度は二日間帰りませんでした。
私を殺す気かと怒りながら、コロッケパンを頬張るユカの姿がぼくはいとしくてしかたなくなっていました。
そして、四日間家を空けたぼくが帰宅すると、そこにはユカの姿はありませんでした。
お店で作ってきたおかゆを台所に流しながら、やりすぎたと後悔しました。
そのままユカは戻って来ず、仁ちゃんに聞いても詳細はわからずじまいでユカについての手がかりは何もありませんでした。
数年経って、ユカを思い出したのは、母親がユカのことを話題にしたからでした。
ぼくが留守の間に、電話でユカと話したという母親は、ぼくが知らなかったユカについて話してきました。
保育士をしていたけど、実の母親が亡くなり、ぼくの部屋で休養させてもらっているとユカは言ったらしいのです。
そんなこと何も知らなかったぼくは、急にユカのことが恋しくなりましたが、それはもう過去のことなのです。
女たちは二度遊ぶ を読んだ読書感想
表題作の『どしゃぶりの女』はじめ、恋愛とは微妙にちがう、ある女性たちとのかかわりを描いた11編の短編が収録された『女たちは二度遊ぶ』をご紹介しました。
他人の家に泊めてもらい、翌朝雨が降っている中帰るのは、たしかに億劫なのですが、そのまま居座るユカ。
ただ布団に寝転がって、ぼくがご飯を運んでくれるのを待つだけのユカ。
そんな女のどこがいいのか?と疑問を持った私ですが、この作品が映像化され、ユカを相武紗季さんが演じているのを見て納得。
これは可愛い。
相武紗季がお腹を減らして自分の帰りを待ってくれているシチュエーション、最高ですね。
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