「予言の島」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|澤村伊智

「予言の島」

【ネタバレ有り】予言の島 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:澤村伊智 2019年3月に角川書店から出版

予言の島の主要登場人物

天宮淳
主人公。37歳。

宗作
主人公の幼馴染。パワハラに逢い心を病んでいる。

春夫
主人公の幼馴染。旅行が好き。

宇津木幽子
高名な霊能者。故人。

宇津木沙千花
幽子の孫。

予言の島 の簡単なあらすじ

高名な占い師、宇津木幽子がある予言を残して亡くなります。その予言とは、ある日霧久井島で6人死ぬというものでした。天宮淳は、幼馴染たちと島へ向かいます。途中で「やめた方がいい。えらいことが起こる」と忠告してくる謎の女が現れ、不穏な予感に襲われます。翌朝、幼馴染の1人が亡くなった事で、予言が真実味を帯びて行くのでした。不思議な風習の残る、老人だらけの島で何が起ころうとしているのか。ホラー作家、澤村伊智の本格推理小説。

予言の島 の起承転結

【起】予言の島 のあらすじ①

予言と警告

天宮淳は、喫茶店で宗作と会っていました。

「変わらないみたいだな、淳」と笑う宗作でしたが、彼は前の会社でひどいパワハラに遭い、一ヶ月自殺未遂を起こしていました。

淳には、宗作の他に春夫という幼馴染がいます。

3人は子どもの頃からの幼馴染です。

宗作の話を聞いた春夫は、気分転換に旅行へ行こうと提案します。

春夫が旅行の行き先に提案したのが兵庫県にある『霧久井島』です。

そこは最近話題の心霊スポットでした。

22年前当時人気だった霊能者、宇津木幽子が霧久井島で心霊番組を撮影中におかしくなり、その後すぐに亡くなったと言います。

さらに幽子は『今年の8月25日から26日の未明にかけ、霧久井島で6人死ぬ』と予言を残していたのでした。

島への船を待っていると、見知らぬ女性が島で大変な事が起こるがら行くなと忠告してきます。

呆気に取られていると、女が淳を見て言います。

「お兄さんはそれだけ強力な守護霊に守られてるんだから大丈夫かもね」そして女性は淳達と同じ船へ乗り込むのでした。

船が出航する直前、団子頭の女性が走ってきました。

淳は乗り遅れそうになる彼女を助け、荷物を持ってあげます。

「どうした?」という春夫に「人助け」とそっけなく返すと、春夫は盛り上がってきたとニヤリとするのでした。

先程忠告してきた女性が霊子と名乗り、幽子の予言は絶対に当たると言い、それを確かめに来たと話します。

島へ到着すると、こちらを見てひどく驚いた顔をする老婆がいました。

老婆の話の様子から、淳達を22年前に心霊番組を撮りにきたスタッフと間違えているようでした。

側にいた老人が、老婆の勘違いを正してくれます。

老人は、淳達へ「宇津木幽子はヒキタの怨霊に殺された。

疋田山には絶対に入るな」と忠告します。

そして、予約していた旅館へ連絡をすると「じきに怨霊が下りてくるから、泊める事ができなくなった」と断られてしまいます。

仕方なく淳達はもう一軒の「民宿あそう」に泊まる事にしました。

民宿には木炭で出来た大小様々の黒いオブジェが飾ってありました。

それは『くろむし』と言い、飾るとヒキタの怨霊が来ない、島のお守りと教えられます。

そして飾られている『くろむし』は全て古畑という、町で実権を持つ島民が作ったものだと言います。

「疋田山に登るな」と忠告した老人が古畑だと分かります。

民宿には、淳が助けた江原数美、霊子、遠藤晶子・伸太郎の親子が宿泊していました。

【承】予言の島 のあらすじ②

禁忌の山

数美に、島の言い伝えについて聞かれた館主の麻生はヒキタの怨霊の話をします。

昔流刑地だったこの島へ、疋田という罪人が流されてきます。

しかし、奇病に冒された疋田は山へ追い立てられたのでした。

関節が曲がり、自力で山から降りられなくなった疋田は、顔に無数のイボができ、舌は口から飛びだし、蛙のような呻き声で鳴くようになりました。

疋田の怨念は山に籠り、入った者を殺し、そして時折山から下りてくると言うのです。

春夫は話を聞きながら、虚ろな表情で『くろむし』を見つめるのでした。

翌朝、淳は「春夫がいない」という宗作に起こされます。

外は豪雨でしたが、淳達は春夫を探しに行きます。

そして、海に浮かぶ春夫を見つけるのでした。

淳は周囲の家に助けを求めますが、どこの家も戸を開けてくれません。

110番をすると、島の駐在である橘が来ました。

男3人で春夫の遺体を引き上げます。

橘が遺体を改め、「外傷は無く死因は溺死だ」と告げます。

そして遺体にブランケットを掛けると胸元に『くろむし』を立て、これは島の作法で次に遺体に触れられるのは葬儀関係者だと言い、帰っていきます。

そこへ、霊子と数美がやってきます。

霊子は「幽子様の予言の通りだ」と言い、淳は激高します。

すると数美が間に入り自分は看護師だと、春夫の遺体を調べようします。

村の作法だからと止めますが、数美は構わず遺体を確かめます。

そして溺死ではなく、春夫には外傷があると言います。

そして「22年前には、遺体への風習はなかった」と言います。

春夫の死に責任を感じていた宗作は「春夫の仇をとる」と橘の家へ向かいます。

宗作を追いかける前に、数美が数珠を出し春夫に手を合わせます。

霊子が「それは幽子様の数珠だ」と驚愕します。

数美は本名を宇津木沙千花と言い、幽子の孫だと明かします。

沙千花は小さい頃から幽子の撮影に同行する事が多く、22年前のこの島の収録にも来ていたと言います。

橘の家に着くと宗作の姿はなく、橘は殺されていました。

側には『くろむし』が転がっていて、それで殴られたようです。

すると、淳の携帯に宗作から着信があります。

「ヒキタの怨霊だ。

予言は当たる」そう言うと電話は切れてしまいます。

宗作を探しに、開いたままの勝手口を出ました。

左には疋田山の入口があり、登る事にしました。

【転】予言の島 のあらすじ③

島の秘密

ぬかるんだ道を歩きながら、沙千花が淳を呼びました。

「どうしたん?」と声を掛けますが、答えません。

淳が「沙千花さん?」と呼びかけると、彼女は足跡が2つあると言います。

足跡を辿って行くと、古畑とぐったりとした宗作がいました。

側へ行こうとしますが、古畑は様子がおかしく「こっちへ来るな、触んなババア」等と叫ぶと、高笑いして走り去りました。

宗作は、外傷はすり傷のみにも関わらず気絶したままでした。

沙千花は、幽子も疋田山へ入り同様の症状で倒れた為、一人でもう一度山へ向かいます。

民宿あそうに、島の老人達がやってきます。

橘の死体を発見し、橘の家に向かう宗作を島民が見ていた為、宗作を出せと詰め寄ります。

老人達の態度に怒りがこみ上げ「春夫を殺して宗作を昏倒させたのは、お前達だろう」と責めますが、老人はあっさりと「そんなところだ」と認めます。

すると、突然島のサイレンが鳴り響きます。

同時に、老人達の携帯に一斉にメッセージが届き、それを見た老人達は帰って行きました。

沙千花は山から帰ってくるなり、「怨霊が下りてくる。

島民達も避難していて、ここは見殺しにされかけている」と言います。

淳は宗作を背負い、他の宿泊者達と逃げました。

見ると老人達が川を渡り、疋田山とは別の山を目指していました。

淳達も後を追います。

すると自分達のすぐ後ろを歩いていた二人の老人が、急に苦しみ始め、死んでしまいます。

助けると自分達も危ない、という沙千花の言葉に従いひたすら山頂を目指します。

山頂に到着すると、そこには避難所がありました。

老人にどこまで知っているのかと問われた沙千花は、怨霊の正体を話します。

そもそも幽子は、実際に霊能力があるわけではなく、事前調査や話術で情報を引き出し、それを霊視で知ったかのように振る舞うのが上手だっただけでした。

22年前、幽子はただのカマシとして、怨霊の存在に言及したのですが、島民達はある秘密を守る為、下手をしたら命に関わるのを承知で山へ入る事を許可したのです。

幽子や宗作が倒れたのは、疋田山に不法投棄された産業廃棄物が発生させる硫化水素によるものだったのです。

大雨の直後に西側から強風が吹くと、ガスは疋田山を超えて集落へ下りてくる、島民はこれを怨霊と呼んでいたのです。

大雨の日は出歩かず、西風が強く吹いたら橘がサイレンを鳴らし、避難をする事になっていました。

それに気づいたのが春夫でした。

【結】予言の島 のあらすじ④

真実と呪縛

春夫は橘の元へ行き、秘密を知られ焦った橘が春夫を殺したのでした。

そして、橘を殺したのは様子がおかしかった古畑かもしれないと言います。

そこへ古畑がやってきました。

古畑は身なりこそ薄汚れ老人のようでしたがまだ32歳、22年前子どもだった沙千花と遊んだ事がありました。

古畑は両親はずっと怨霊に祟られて死んだと知らされていたのに、春夫と橘の会話で島の秘密を知り、ショックを受けたのです。

気がつくと、橘を殺していたのでした。

心を病んでいる古畑は、死に場所を求め集落へ戻ります。

放っておけず古畑の元へ行こうとする沙千花に、淳も一緒に行くと決めます。

古畑の住んでいる学校に着くと、すでに首を吊って死んでいました。

ずっと幽子の力が信じられず、予言がはずれるのを確認する為に島を訪れていた沙千花は、予言が当たりかけている事と古畑の死に、ショックを受けパニックを起こします。

「これで5人。

26日の夜明けまでにあと1人死ぬ!」しかし淳に宥められ、落ち着きを取り戻した沙千花は顔を洗ってくると、トイレに向かいます。

トイレからの不穏な音に、淳が駆けつけるとそこには血塗れの沙千花が倒れていたのでした。

瀕死の沙千花が淳を呼びます。

「なに」と聞くと、沙千花はこちらを睨み「私は淳さんって言ったの」と言います。

そして「自分が死んだら数珠を外して捨てて欲しい」と言うと息を引き取ります。

ガスが引け、数人の島民と回復した宗作が駆けつけます。

なぜ沙千花を殺したか問われ、『私』は答えます。

「あと一人になったから。

自分の手で誰か殺せばそれで6人。

もう誰も死なないから」淳が「おかんはそう考えて沙千花さんを殺したんです」と、『私』を見ていいました。

「俺が聞かれた事を先に答え、人との会話に割り込み、常に後ろに付いてきた」と淳は責めるように言います。

淳の母である『私』には当たり前の事なのに。

霊子に「強力な守護霊」と揶揄されたり、老婆に宇津木幽子と撮影スタッフと間違えられたが周りの目は気にならない。

春夫も宗作も、私を受け入れてくれていました。

突っぱねたのは沙千花だけでした。

淳への呼びかけに、私が答えると彼女は無視しました。

どちらが答えようと変わらないのに。

淳に頭がおかしいと言われました。

思わず激昂し、わめき散らしますが淳はもうこちらを見もしません。

沙千花の命と引き換えに、呪縛から解き放たれた淳は、遺言通り数珠を引き千切るのでした。

予言の島 を読んだ読書感想

一読目はミステリー、二読目はホラーという文句に引かれ読んでみました。

最後のオチは、意味が分かると本当に戦慄します。

まさにホラーでした。

叙述トリックと言えばそうですが、変化球がすごく少しズルい書き方だとは思いました。

しかし二読すると、伏線は確かにたくさん十分過ぎるほど張られているのが分かり納得しました。

そうなると、今度はオチが強すぎてミステリーとしては肝心の「島の秘密」の印象が薄まったように感じました。

ミステリー小説よりも、ホラー小説として面白く感じました。

この作者の別作品も読んだ事がありますが、幽霊等の怖さはもちろんですが、人間の薄気味悪さや怖さを書くのが本当に巧妙だと思いました。

誰かに勧めたくなる小説でした。

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