【ネタバレ有り】レフトハンド・ブラザーフッド のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:知念実希人 2019年3月に文藝春秋から出版
レフトハンド・ブラザーフッドの主要登場人物
風間岳史(かざまたけし)
主人公。ボクシングの上級者。
風間海斗(かざまかいと)
死んだ岳史の双子の兄。岳史の左手に宿る。
彩夏(あやか)
隣人のお姉さん。
番田(ばんだ)
警察官。岳史にスパイをさせる。
レフトハンド・ブラザーフッド の簡単なあらすじ
岳史の左手には、亡くなった双子の兄、海斗が宿っています。確かに海斗の声が聞こえ、左手は自分の意思とは関係なく動くのに、誰も信用しません。ついには精神病院へ入院させられそうになるのです。元々、海斗の死に責任を感じていた岳史は、治療をして海斗が消される事を恐れ、家を出ます。そこで、突然起こった殺人事件の容疑者になってしまうのです。左手に宿る海斗と共に解決しようとしますが、事件にはある違法薬物がからみ、岳史は思わぬ欲望に巻き込まれていくのでした。
レフトハンド・ブラザーフッド の起承転結
【起】レフトハンド・ブラザーフッド のあらすじ①
風間岳史の左手には、死んだ双子の兄、海斗が宿っていました。
左手首より先は「海斗の支配領域」で、岳史には動かす事も、感覚すらもありません。
もちろん、海斗の声も他人には聴こえません。
精神病院へ入院させられそうになった岳史は、東京を目指して逃げました。
橋の下にテントを張り、休む事にした岳史ですが、元々そこに住んでいたホームレスにからまれます。
ボクシングのインターハイ3位の岳史は、脅して追い払おうとしますが、海斗が間に入り場を収めました。
その夜、うめき声を聞いたと海斗に起こされた岳史は、テントの外で死体を発見します。
パニックになる岳史に、海斗は逃げるように言います。
渋谷に着くと、海斗は自分達で真犯人を見つけようと言い、遺体から抜き取った財布を出します。
入っていた免許証の名前は「早川壮介」でした。
岳史は、早川の自宅へと向かいます。
まだ警察が自宅を割り出す前だったため、部屋に侵入します。
すると鍵が開いていて、部屋は荒らされていました。
隠し金庫を見つけ、暗証番号が財布にあったキャッシュカードの番号だったため、開ける事ができました。
そこで部屋の電話が鳴ります。
留守番電話から、機械処理された声が「逃げろ、すぐに警察が来る」と告げます。
その声に従い、早川のパソコンと金庫の中にあった資料を持って逃げると、すぐに警察が部屋へ入ってきました。
間一髪で逃げた岳史は、海斗の機転で手に入れた他人の身分証で、ウィークリーマンションを借ります。
早川の部屋から持ち出したパソコンを起動させますが、パスワードを要求され、諦めます。
金庫に入っていたのは、調査資料や写真、そして目薬のような容器に入った青い液体でした。
資料を読み、早川は「サファイヤ」の売買いついて調べていた事が分かりました。
マンションの隣人には、桑島彩夏が住んでいました。
岳史は別れ話がこじれ、トラブルになっていた彼女を助けました。
彩夏はお礼だと、岳史の部屋へ食事を持ってきます。
そして、目薬のような容器に入った青い液体を目にすると、それを「サファイヤ」と呼びました。
サファイヤが合法ハーブだと聞いた岳史は、販売ルートを辿ることで真犯人に行き着くかもしれないと、どこで手に入るか彩夏に問います。
彩夏に連れられて行ったクラブで、岳史はバーテンの男とサファイヤの取引をする男を見つけます。
男の名前はカズマと言い、岳史はカズマの下で働く事になりました。
【承】レフトハンド・ブラザーフッド のあらすじ②
カズマは、サファイヤは最初こそ依存性も副作用もないが、使用回数を増やすとサファイヤの奴隷になる、と忠告します。
部屋へ帰ると、彩夏と会いました。
岳史はサファイヤの使用経験のある彩夏に使用頻度を尋ねました。
大学で化学専攻をしていた彩夏は、危険性を熟知していた為、安心します。
カズマの下で働いて二週間。
一向にカズマ以外のメンバーと接触の機会はありませんでした。
サファイヤの取引後、カズマと別れると麻布署の番田という男が接触してきました。
逃げようとする岳史でしたが、元機動隊員の番田に捕まります。
番田は岳史が殺人事件に関わっているとは知らず、サファイヤの件で声を掛けてきたのでした。
番田は、岳史にスパイになるよう持ちかけます。
そして、死んだ早川は番田の情報屋だったことが分かります。
早川は、サファイヤの製造元に近付き、その情報でサファイヤの売買を取り仕切る『スネーク』というグループから金を脅し取ろうとしていました。
岳史は、番田に協力することにします。
番田と手を組んでカズマを逮捕させた岳史は、カズマの後釜に治まる事に成功します。
岳史はスネークの幹部であるヒロキの下で働く事になりました。
そんな中、彩夏がたった一人の家族の弟をバイク事故で亡くしていたと分かります。
海斗をバイク事故で失った岳史は、同じ経験をした彩夏へ打ち明けます。
岳史と海斗には、幼馴染の少女がいました。
年を重ねると、海斗と少女が付き合い始め、岳史はショックを受けます。
海斗とその事をしっかり話そうと、バイクで展望台へ向かう矢先、転倒してしまったのでした。
気がつくと、崖から落ち掛けている海斗を左手で掴んでいました。
引き上げられず、崖へ引かれる岳史の手を海斗は振り払ったのでした。
どうしたら罪の意識から逃れられるのかと嘆く岳史に、彩夏はサファイヤを飲む事を勧めます。
止める海斗を振り切り、彩夏とサファイヤを飲んだ岳史は、そのまま彼女と体の関係を持ちます。
次の日、彩夏は岳史へ弟が乗っていたバイクをあげると言います。
岳史と、死んだ弟を重ねている彩夏に、少し不安を覚えるのでした。
サファイヤを飲むと、海斗の声が聞こえなくなり、不安からも解放されるため、岳史は度々サファイヤを使うようになってしまいます。
ヒロキの仕事を手伝う中で、サファイヤを精製出来るのが錬金術師と呼ばれる人物だけだという事が分かります。
【転】レフトハンド・ブラザーフッド のあらすじ③
海斗の提案で錬金術師の正体を探るため、取引に用いた車にスマホを隠しました。
彩夏にもらったバイクでスマホのGPSを尾行すると、そこはおる大学の中にある、プレハブ小屋でした。
身を潜める岳史でしたが、サファイヤの禁断症状で意識を失ってしまいます。
目を冷ますと、自分の部屋のベッドでした。
意識を失った岳史に代わり、海斗が身体を動かし、帰宅したというのです。
そんな事は初めてで、どうやらサファイヤの影響で、海斗の領域が広がっているらしい事が分かります。
改めて、プレハブ小屋へ向かうと、そこはすでにもぬけの殻でした。
ただ、机の上に封筒があり、そこには自宅となっているマンションへ入っていく岳史の姿が写っていたのでした。
『ずっと見ている 盗んだものを返せ』というメモに、岳史は怯えてパニックになります。
どこかへ逃げようと荷造りをしていると、彩夏が訪ねてきます。
誰かに狙われている、と打ち明けますが、彩夏はサファイヤの禁断症状による被害妄想だと言って信じず、サファイヤを飲んで妄想を止めようと誘います。
クスリと彩夏の肉体への渇望を断ち切れず、岳史はまたも関係を持つのでした。
目を覚ますと、左の肘まで海斗の領域が広がっていました。
海斗に小屋で見つけたメモを見せると、自分達を監視する錬金術師こそ、早川を殺した真犯人だろうと推理します。
そして、『盗んだもの』とはサファイヤのレシピではないか、と言う海斗の話に岳史は納得します。
もし、レシピがスネークのボスに渡れば、錬金術師は他にレシピを漏らさないように口封じされるかもしれない。
それを防ぐために、レシピを手に入れた早川を殺したのだろう、と海斗は言います。
カズマが釈放された事で、岳史の裏切りがスネークにバレてしまいます。
スネークのメンバーに囲まれ、殴られた瞬間、岳史と海斗は入れ替わります。
何とかその場は逃げ出し、身体も岳史の物へと戻りますが、サファイヤの影響で左の首筋まで海斗の領域は広がっていました。
番田に容疑者であることがバレ、逃亡します。
身を隠す事になった岳史は海斗に言われ、サファイヤの禁断症状を克服します。
海斗は、サファイヤのレシピを隠しているのが、早川の殺害現場に住んでいるホームレスだと気づきます。
すぐに向かった岳史は、サファイヤのレシピを手に入れるのでした。
【結】レフトハンド・ブラザーフッド のあらすじ④
レシピの筆跡が彩夏の筆跡と一緒だと気づいた海斗は、彼女こそ錬金術師であると言うのですが、岳史は認めようとしません。
無実を証明するため、彼女の部屋へ忍び込みますが、逆に彼女が錬金術師だと分かります。
しかも、彼女の部屋には最近まで別人が住んでいたことが分かります。
早川のパソコンに仕込んだGPSで、岳史の居所を突き止めた彩夏が、元々その部屋に住んでいた住人から買い取ったのです。
さらに、タンスから血のついた早川の手帳を発見します。
愕然とする岳史の前に、彩夏が現れます。
彩夏は錬金術師である事は認めましたが、殺人は必死で否定します。
しかし岳史は聞く耳を持たず、部屋を飛び出します。
「早川の手帳の中に、彩夏の個人情報がたくさん書かれていた」という海斗の言葉に、岳史は違和感を覚えます。
早川の手帳をそこまで詳しく見る時間はなかったはずなのです。
そこで岳史は、海斗にも早川の殺人が可能であると気づきます。
岳史が眠っていれば、海斗は体を自由に使う事ができるのです。
海斗はあっさりと殺人を認め、全ては岳史と入れ替わる為にやった事で、彩夏に罪を着せると言います。
そんな中、スネークのボスからメッセージが入り、彩夏が攫われたと分かります。
海斗は、これは彩夏がレシピと引き換えにボスに頼んだ罠だと見抜きますが、岳史はそれを承知で彼女の元へ向かいます。
スネークのボスは、初めて彩夏と行ったクラブのバーテンでした。
レシピを手に入れたボスはサファイヤを独占する為、錬金術師の彩夏と裏切り者の岳史を始末しようとします。
しかし、遠くからパトカーのサイレンが聞こえた為メンバーは逃げていきました。
彩夏と二人になると海斗は殺人の罪を着せると言い、彼女を殺そうとします。
岳史は彩夏を守る為、海斗の本体である自分の左手を切り落とすのでした。
気を失った岳史でしたが、目を覚ますともう海斗の声は聞こえませんでした。
番田によると、早川を殺したのは彩夏で間違いないと言います。
混乱する岳史の元へ、海斗から手紙が届きます。
そこには、全ては岳史に左手を切り落とさせる為の嘘だった事、早川を殺していない事が書かれてありました。
自分はずっとお前の中で生きている、という海斗の言葉に岳史は涙を流すのでした。
レフトハンド・ブラザーフッド を読んだ読書感想
左手に死んだ兄が宿る、という設定が斬新で読んでいて面白かったです。
岳史は、海斗が本物なのか、それとも自分が好きな作り出した願望なのか混乱し、違法薬物であるサファイヤに溺れていきます。
岳史は、強くて少し単純な半面、海斗への依存心も強く脆さがあるのが人間的でした。
ただ、あっさりサファイヤにのめり込んでいく様はイライラさせられました。
彩夏がミステリアスで性的で、岳史と同じく闇が深くダークヒロインという感じで良かったと思います。
そして何より、左手に宿り実態がないのに、海斗の存在感と兄弟愛は読んでいて感動しました。
ラストを読んだ後でもう一度読み返すと、要所要所で岳史への気遣いが分かり、さらに面白かったです。
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