【ネタバレ有り】響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:武田綾乃 2019年5月に宝島社から出版
響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編の主要登場人物
黄前久美子(おおまえくみこ)
3年生、部長、ユーフォニアム担当。本小説の主人公でコンクールの全国大会で金賞を取ることを目指している。優しい性格で2年生の頃から後輩の相談に親身にのっている。
黒江真由(くろえまゆ)
3年生、ユーフォニアム担当。3年生になって、父親の転勤に伴って北宇治高校に転入してきた。前の高校は吹奏楽の強豪校だった。
鎌屋すずめ(かまやすずめ)
1年生、チューバ担当の初心者。3年生のパーカッションパートにいる鎌屋つばめの妹で、姉をすごく慕っている。
高坂麗奈(こうさかれいな)
3年生、トランペット担当、ドラムメジャーを努める。黄前久美子の親友で演奏能力はずば抜けている。負けず嫌いで、人にも厳しいが、自分にはもっと厳しい。
響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 の簡単なあらすじ
以前は弱小校だった北宇治高校吹奏楽部は、黄前久美子が入学と同時に顧問に滝昇が就任し、1年目で全国大会出場を果たし銅賞に輝きました。2年生の時は関西大会金賞であったものの、全国大会に進めませんでした。そして、久美子は3年生。部長に指名され、全国大会金賞を目指します。そこへ、久美子と同じユーフォニアムに強豪校から黒江真由が転校してきました。部内でも3年生と後輩達の中に意識のずれが生じてきます。
響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 の起承転結
【起】響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 のあらすじ①
いよいよ、久美子にとって北宇治高校吹奏楽部の最後の1年がやってきました。
吹奏楽部の幹部は先輩の指名で決められます。
この年、部長に指名されたのが黄前久美子、副部長に指名されたのが塚本秀一、ドラムメジャーに指名されたのが高坂麗奈でした。
秀一は久美子の元恋人で、久美子が部長を引き受けることになって、久美子から恋人関係を解消したのです。
高坂麗奈は抜群の演奏能力を持ち、1年生の頃からトランペットのプロを目指しています。
そんな3人を中心に北宇治高校吹奏楽部は全国大会金賞を目指し動き始めたのでした。
そんな時、久美子のクラスに一人の転入生が入りました。
黒江真由です。
真由の前の高校は誰もが知る吹奏楽の強豪校で、毎年全国大会で金賞を取るような高校でした。
真由はその高校でユーフォニアムを吹き、1年生の時からAに選抜されている実力者だったのです。
真由は自分が吹奏楽部に入ると、今まで北宇治で頑張ってきた子に迷惑を掛けるからと、入部をためらっていました。
しかし、同じクラスの吹奏楽部の子達にすすめられ入部することにしたのです。
一方、新入部員の勧誘も進められていて、いつもなら人気のない低音パートに4人の見学者がやってきました。
釜屋すずめ、針谷佳穂、上石弥生、義井沙里です。
4人は仲良しで、同じ部活の同じパートでやりたいという理由で、競争率が低い低音パートに見学にきたのでした。
しかし、沙里はクラリネットの実力のある経験者で、初心者である他の3人を連れてきたのです。
結局低音パートにはこの初心者3人と、3年生の真由が入ることになりました。
【承】響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 のあらすじ②
吹奏楽部の外に向けての最初の大きなイベントはサンライズフェスティバルです。
このフェティバルは京都府内の学校が集まり、公園内をパレードするものです。
毎年1年生の初心者は楽器を吹かないで、カラーガードやポンポンの担当でしたが、今年は人数の関係で初心者も楽器を吹いての参加になりました。
その練習を中心的に指導するのがドラムメジャーの高坂麗奈でした。
パレードは座奏と違い、歩幅をそろえたりマウスピースが口からずれないようにしたりしないといけないので、パレードに向けてかなりの練習が必要でした。
麗奈は初心者にも一人の奏者として厳しい指導をしました。
毎日の朝練習で一番乗りなのは、1年生の沙里とすずめでした。
真面目な沙里はかなりの上級者ですが、先輩に迷惑は掛けられないと、人一倍練習をしていました。
それにすずめは付き合っていたおかげで、初心者であるすずめの実力もどんどん上達していきました。
サンフェスが近づき練習も更に厳しくなり、麗奈のスパルタな練習と叱咤に涙する初心者の1年生が続出していました。
自分にはもっと厳しい麗奈を知っている先輩達は、そんな1年生達をフォローし励ましていました。
そんな時、つばめは久美子に2人だけで話したい事があると言います。
つばめの話は、このまま行くと1年生が部活をボイコットしてしまうと言うことでした。
初心者の1年生は麗奈の指導について行けなくて、内気な子達はかなりストレスがたまっているとのことでした。
1年生の中でも経験者の沙里のような子達がフォローして、どうにか全員辞めることなく続けられているとのことでした。
久美子は沙里も麗奈と2人になるのを避けているような気配は感じていました。
【転】響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 のあらすじ③
久美子のところには1年生から様々な相談が入ります。
部員の喧嘩、居残り練習しない子がいるなど、久美子は丁寧に相談に乗っていました。
部員みんなに北宇治を好きになって欲しいという願いからです。
そんな時に事は起こりました。
低音の1年生3人とクラリネットの沙里が同日に部活を休んだのです。
2人の1年生指導係と一緒に久美子も沙里の様子を見に行くことにしました。
沙里の家につくと低音パートの1年生3人もその場にいたのです。
沙里が体調を崩したことは事実で、心配した3人が送ってきたのでした。
久美子は沙里と2人で話したいと他の子達を外に出てもらいました。
そこで久美子が問うたのは「本当の理由は何?」でした。
沙里は自分が叱られるのは平気だが、人が叱られているのを見ると息苦しくなると言います。
そして、103人全員を完璧にする必要があるのか、音楽の楽しさを知るまで待てないかと思っているのでした。
一方、麗奈が正しいことも分かっていて、泣いている子を励ましてきた。
そして楽しいと言ってくれる子も出てきた。
でも本当にそれで良かったのか不安になっているのでした。
久美子は沙里が人知れず周囲を支えてきた自分の努力を、誰かに認めてもらいたいのだと確信し、沙里の今までのフォローと努力、沙里の人となりに感謝を伝えました。
次の日、久美子達より前に沙里とすずめは朝練習に来ていました。
そして、サンフェスが終わり、コンクールに集中できる時期がやってきました。
コンクール出場のためのオーディションは今まで京都大会の前に行う1回だけでした。
しかし、久美子、秀一、麗奈はそれだと緊張感が持続しないし、その後上達した子達が評価されないということから、各コンクールの前にそれぞれオーディションするのが良いと考えていました。
それは真由が所属していた強豪校がそうしていたという話を久美子が聞いていたからです。
【結】響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 のあらすじ④
コンクールの自由曲にはトランペットとユーフォニアムのソリがあります。
真由はオーディション辞退を言い出します。
北宇治で長くやっている子がコンクールに出るべきだし、ソリも吹くべきだと言うのです。
久美子たちは、真由も含めて北宇治の一員だしベストメンバーを組むために参加すべきだと説得しました。
真由の実力は確かなものでした。
久美子は自分がソリに選んでもらえるか自信が無く、不安な日々を過ごしていました。
部員の中には久美子が吹くことが部のためには良いと思っている部員も少なからずいました。
そしてオーディションは行われ、ユーフォニアムは久美子と真由と2年生の久石奏が選ばれ、ソリは久美子でした。
チューバは3年生の加藤葉月2年生の鈴木美玲そして1年生初心者の釜屋すずめでした。
予想外の人選でした。
結果発表後久美子は美玲に呼ばれました。
美玲はチューバの選考に納得できないようでした。
チューバの2年生には中学校からの経験者の鈴木さつきがいました。
テクニックの面では明らかにすずめより上であるさつきが選ばれないのは納得できないというのです。
久美子もすずめが選ばれ驚きましたが、滝の判断を信じていました。
美玲は部活・さつき・すずめの事を思って久美子だけにこの話をしているのです。
それが美玲の優しさでした。
そして、3年生にとって滝は弱小校を強豪校にしたカリスマだが、2・3年生は強豪校の北宇治しか知らなく、3年生ほど滝を絶対視できないことを覚えておいて欲しいと言って、美玲は滝を信じることにします。
そして、久美子は1人で滝にその人選について尋ね、滝なりの考えがあることを知りました。
しかし、久美子は少しでも滝を疑ったことに後ろめたさが残り、とても麗奈に話すことはできません。
コンクールに向けて一生懸命に練習する部員の姿の中に、ユーフォニアムのソリを練習する真由の姿がありました。
京都大会を勝ち抜けば再びオーディションです。
響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 を読んだ読書感想
久美子は自分で物事を決めるのが苦手で、常に人に流されてきた人間です。
高校生になり色々な人に出会い、様々な成長を遂げてきました。
久美子の知っている北宇治高校吹奏楽部にはカリスマ性のある先輩達がいました。
1年生の時の副部長だった田中あすかはみんなから特別だと思われていた先輩です。
2年生の時の部長であった吉川優子はどんなことにも一直線で行動力のある先輩でした。
しかし、久美子は2人のようなカリスマ性はありません。
ただ、誰にも優しく後輩には慕われていました。
そんな久美子のところに後輩達はやってきては相談していきます。
久美子の囁くほんの一言が後輩達に安心感を与えています。
それは今までの北宇治高校吹奏楽部にはない人心掌握術なのだと思います。
鈴木美玲が言うように1・2年生は顧問である滝のカリスマ性を知りません。
滝も今まで自分が強引と言って良い程引っ張ってきた吹奏楽部を、生徒に任せようとしています。
そんな変化の時代の北宇治高校には久美子のような部長が必要だったのでしょう。
まだまだ久美子は成長の道のりを歩いています。
真由の出現で久美子の心は揺れています。
オーディションの滝の選択にも心が揺れます。
進路も自分で決められず悩んでいます。
人に流されてきた自分がまだ時々顔を出します。
久美子はその道のりをどこまで歩んでいくのだろう。
後編が楽しみです。
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