「人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly?」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|森博嗣

「人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly?」

【ネタバレ有り】人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:森博嗣 2018年10月に講談社から出版

人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly?の主要登場人物

ハギリ
本作の主人公。国の特殊な機関で研究者として働いている。

ウグイ
主人公の所属する機関の戦闘・工作員。

キガタ
ウグイの部下。ウォーカロンだが行動を規制する処置を受けていない。

ヴォッシュ
ドイツの科学的な権威。

人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? の簡単なあらすじ

キョートで行われる国際会議の実行委員を務めることになったハギリ。人工知能の予想に導かれ、テロリストを引き入れることになるが、連れ去られたのはハギリの方だった。自分を守るというウグイとの逃避行、そのさなかハギリは人類の行く先をウグイに語る。無事元の生活に戻った二人は以前にはなかった気持ちを、心の中に感じるのであった。

人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? の起承転結

【起】人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? のあらすじ①

人類のための研究

キョートで開かれる国際会議の実行委員に任命されたハギリ。

その無意味さは感じつつも、会場のセッティングやホテルの手配など、ほぼ人工知能に任せつつではあるが、無難にこなしていた。

そして当日、ハギリには護衛としてキガタとアネバネ、そして特別にウグイも同行しさまざまなテロ行為やトラブルを危惧しながらも、無事パーティはスタートした。

そんな中、大手ウォーカロンメーカー「ホワイト」が画期的な医療技術を発表するという情報が人工知能からもたらされる。

それは不妊に悩む人類を再び子供が産める体にするというものだった。

ウォーカロンを作る技術で生み出された人体の部品を、時間をかけて取り込むことにより人間は再び妊娠することが出来るようになるという。

しかし今までのデータでは、それがビジネスになる確定的な情報は存在していなかった。

何らかの画期的な方法が生み出されたのか。

何故今まで黙っていたのかとハギリは人工知能に問うが、ハギリの利益には繋がらないため、また会議の準備で忙しそうにしていたからと言われ、納得するのだった。

【承】人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? のあらすじ②

予定通りの拉致

レセプションパーティが始まった。

見知った顔も多く参加し、いくつかの歓談を済ませた頃、情報局の局長から緊急の呼び出しが入る。

不穏なものを感じつつも、面会に向かったハギリは驚くべき計画を伝えられる。

ホワイトが発表するセッションを阻止することになったという。

研究の発表を許した場合、日本政府の受ける被害は甚大なものになるという。

今回の計画は日本政府の決定で、表向きにはテロ組織による身代金目的の襲撃と発表される手はずになるという。

非人道的な行いにどうにかならないか訴えるものの、決定はどうにもならず重い気持ちを抱えたまま発表の時間を迎えることになる。

そして発表直前の控室。

あくまで何も知らないスタッフとして、研究発表の段取りを説明するハギリ。

そこに何かが投げ込まれ、控室は一瞬のうちに白煙で埋まってしまう。

護衛として近くに居たウグイは咄嗟にハギリに覆いかぶさり応戦しようとするが白い煙は催眠ガスであり、気づいた時には身体から力が抜け、眠りの中に落ちていったのだった。

目を覚ました二人はどこか、牢屋のような場所に放り込まれていた。

ネットワークには繋がらず、隠し持っていた武器も奪われている。

そこに表れたのは人工知能ペガサスの端末だという少年のロボットだった。

企業の人間を拉致した際に、疑われることを避けるため自分たちも攫い、身代金との交換という形で解放されるという。

何故こんなことをしたのかと問うと、今回発表する予定だった研究結果はそもそもが改ざんされた不正なデータを根拠に築かれたものであるからだという。

そのデータは日本の企業からもたらされたものであり、放置すると被害が大きくなりすぎるのだった。

人類を救う研究は完成していなかった、そのことに落胆するハギリであった。

【転】人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? のあらすじ③

逃避行

依然監禁状態は解除されないハギリとウグイ。

することもなく話し合ううちに、この誘拐が予定通りだったのか、本来は自分たちを狙ったものではないのかという考えに到達する。

人工知能が予想もしない行動を取ることが、相手の裏をつくことになる。

二人はベッドに潜り込み仲のいい男女を演じていた次の瞬間、布団を飛び出しドアを爆破して脱出するのであった。

外に出てもネットワークに繋げば探知されて居場所を知らせることになる。

追っ手から逃れつつ逃げ込んだ場所は怪しいホテルの一室だった。

自分たちの居場所を仲間に知らせる信号は送ったものの、届くのはニ時間後。

二人は狭い部屋で人間と人工知能の行く末について語り始める。

今は便利だからと人工知能に頼っているが、その力が大きくなった時、人間は排除に動くのではないか。

そうなることを人工知能は敏感に察知し、過剰な防衛行動に移るのではないかという懸念だった。

異物を排除しようとするのが人間の本能とはいえ、理性でそれを修正できるのも人間であると未来に希望を見るのであった。

【結】人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? のあらすじ④

変化の行き先

駆けつけた味方の活躍もあり、無事二人は保護された。

今回の事件の原因は人工知能同士の対立だという。

様々な事件でたまたまとはいえ日本に大きな利益をもたらせたハギリ。

その存在は反対組織には大きな脅威として映っていた。

そのために今回のような強引な行動に出たのだという。

味方側にいる人工知能の説得により、もう同じようなことは起きないと保証され、胸をなでおろすのだった。

本部に戻ろうとしたその時、真賀田四季が突然ハギリの目の前に現れる。

今のウォーカロンの世界は四季が作ったものだ。

今の世界の状態をどう思っているのか、どうしたいのかハギリは問いかける。

何も考えたりはしない、ただぼんやり眺めていてるのだと四季は答えるのだった。

本部に戻ったハギリは眠れない日々を過ごしていた。

ウグイと二人、逃げた時のことを何度も考えるのであった。

それは楽しい時間だった。

しかし研究者として眠れないのはまずいと、精神科医に診てもらいに赴く。

ハギリは同じような眠れない悩みを抱えた患者が居ると聞かされる。

ウグイも同じように相手のことを考えて眠れず医者の元を訪れていたのだった。

人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? を読んだ読書感想

大きなシリーズの終焉である。

全ては真賀田四季が計画した掌の上の事なのかと、この世界の人達も、読者としても同じように思っていたが、世界はもはや天才の手を離れ、四季は傍観の席に座っていたのには少し驚かされた。

ウォーカロンや人工知能が存在する世界で、人間であるというのはどういうことか。

知性が自らが何者なのか考える思慮を持つなら、それこそが人間らしいということだと感じました。

それに気づいた主人公も四季と同じく、ウォーカロンや人工知能とともに世界がどうなっていくか見守っていく気持ちになったのだと思います。

そんな小難しいSFの世界の中でもハギリとウグイのお互い考えが及ばない恋物語には少し身悶えるものがありました。

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