【ネタバレ有り】でっちあげ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:福田ますみ 2010年1月に新潮社から出版
でっちあげの主要登場人物
川上 譲(かわかみ ゆずる)
小学校教諭。体罰の冤罪被害を受ける。
浅川 和子(あさかわ かずこ)
川上の担任する児童の母。川上を体罰教師として訴える。
浅川 裕二(あさかわ ゆうじ)
川上が担任している児童。問題行為が多い。
でっちあげ の簡単なあらすじ
主人公・川上は優柔不断なところもありますが、誠意を持って児童を指導している小学校の教諭ですが、ある年、担任している児童の母から、子どもが川上によって体罰を受けているとの苦情が入ります。もちろん川上に身に覚えはありません。この一件は、学校だけでなく、マスコミや社会を巻き込んだ大事件となるのでした。
でっちあげ の起承転結
【起】でっちあげ のあらすじ①
家庭訪問の時期になりました。
小学校教諭の川上は順調にクラスの家を回っていますが、ある日、担任している浅川の家から「今日が家庭訪問のはずだがまだか」との連絡が入ります。
川上が確認したところ、家庭訪問の日は間違いなく翌日でした。
しかし、この日しか時間が取れないという浅川の希望があったため、時間は20時を回っていましたが、浅川の家庭訪問に出向きます。
浅川の息子、裕二はクラスの中でも協調性がなく、クラスメイトに対して暴力をふるうこともあるような問題児でしたが、親との関係性を大切にする川上はそのことには触れず、当たり障りのないことだけを母親に伝えました。
川上は裕二の学校での暮らしぶりを伝えたので、家庭訪問を切り上げようとしますが、母の和子は関係のない話を続けます。
裕二の祖父がアメリカ人であることや、裕二は幼いころにアメリカに住んでいたこと、和子自身が翻訳や通訳の仕事をしている話が続いたため、川上は仕方なく相槌を打ち続けるのでした。
【承】でっちあげ のあらすじ②
浅川家の家庭訪問の内容はいささか奇妙でしたが、川上は浅川家とは良好な関係を築けたと感じます。
しかし数日後、裕二の両親が学校に乗り込んでくるのです。
両親が言うことには、川上が家庭訪問において、裕二にアメリカ人の血が流れていることに対して差別的な発言をしたこと、また、日ごろから学級内において川上が裕二に対して暴力をふるっていると言うのです。
川上は校長と教頭に対して、そんなことは言ってもいないし、体罰をふるったこともないと説得しますが、保護者に対して及び腰の校長たちは、川上の味方になってくれません。
川上自身も、自分が本当に暴力をふるってしまったのかと自問自答をします。
そして、どうしても裕二が言うことを聞かなかったり、クラスメイトに暴力をふるったときは、軽く頬をはたいたことがあると白状するのです。
川上にはそれが体罰だという自覚はありませんでしたし、後から考えても怪我につながるような力加減ではありませんでした。
しかし、学校側は、この事実を体罰とみなして浅川一家に謝罪をしました。
【転】でっちあげ のあらすじ③
川上は浅川一家に対して謝罪をしましたが、浅川一家は彼を許しませんでした。
裕二は川上によって心身共に傷つけられたと主張し、裁判を起こしたのです。
これを聞きつけたのが全国のマスコミでした。
川上はマスコミに追い回され、六か月の停職に追い込まれます。
これは冤罪だと信じる川上はかたくなに辞職は拒みましたが、世論は浅川家の味方についているため、裁判では勝ち目がありません。
そこで、必死に川上は自分の弁護士を探すのでした。
数多くの弁護士が、勝ち目のない裁判を嫌がって断りましたが、ようやく川上側にも弁護人がつきました。
その弁護人が調べるところによると、浅川一家は、アメリカの血が流れていないどころか、両親ですらアメリカで長期間暮らしたことがないというのです。
また、浅川の両親、息子は川上による体罰のせいで、深刻なPTSDに悩んでいると主張していますが、その症状はカルテ上にあるだけで、苦しむ彼の姿を見たものは誰もいないのです。
この事実により、世論は一変しました。
【結】でっちあげ のあらすじ④
川上と弁護人による懸命な調査により、浅川による主張はほとんどが虚偽であるということが証明され、訴えは棄権されました。
しかし、市と学校側は、軽い体罰はあったと認めてしまいます。
これは、体罰がなかったと主張してしまえば、最初に学校側が体罰を認めて謝罪をしたことが嘘だったということになります。
学校側は責任逃れのために、川上を悪人扱いしたのです。
川上はこれが日本の学校の在り方で、仕方のないことだと考えますが、どうしてもやるせなさを覚えます。
また、騒動から解放された川上は違う学校に赴任することになり、クラスを持ちます。
ようやく、川上も普通に仕事をする権利が与えられたのです。
同時に、裕二にも聞き取り調査が行われました。
裕二の証言内容は、母の和子と異なる点が多々ありました。
これにより、完全に川上の体罰問題は和子によるでっちあげであると証明されたのです。
この騒動の一番の被害者は川上ですが、和子の狂言によって学校生活を大きく狂わされた裕二も被害者だったのです。
でっちあげ を読んだ読書感想
最悪のモンスターペアレントの物語だと思いました。
一人のモンスターによって、一人の教師の運命が大きく狂わされるのです。
また、親は子のためを思って、教師の悪行を誇大解釈しているのかもしれませんが、それによって子どもの将来も影響を受けます。
これは実際にあった事件をテーマにした小説なので、こんなことが日本で実際に起きたのかと思うとぞっとしました。
教師の立場や地位がこれ以上低くならないことを願うばかりです。
また、学校という閉鎖的空間だけでなく、マスコミの拡散力にも恐怖を感じました。
もし自分が冤罪に巻き込まれたらどうしたらいいのかと思います。
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