【ネタバレ有り】橋を渡る のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:吉田修一 2016年3月に文藝春秋から出版
橋を渡るの主要登場人物
新宮 明良(しんぐう あきら)
ビール会社の営業課長。妻と甥と三人で暮らしている。
赤岩 篤子(あかいわ あつこ)
都議会議員の妻。夫が賄賂を受け取っていることに気付き、悩んでいる。
里見 謙一郎(さとみ けんいちろう)
ジャーナリスト。婚約中の薫子の浮気に気付き、嫉妬から薫子を殺してしまう。
橋を渡る の簡単なあらすじ
舞台は2014年の日本です。ビール会社に勤める明良や、都議会議員の妻、篤子はそれぞれの悩みを抱えながらも生きています。ジャーナリストの謙一郎は婚約者の浮気を知り、殺害してしまうのですが、警察に捕まって搬送される途中に、未来の日本にタイムスリップします。
橋を渡る の起承転結
【起】橋を渡る のあらすじ①
ビール会社に勤める明良は、甥の孝太郎と妻の歩美と幸せに暮らしています。
孝太郎の両親は海外に出張中のため、孝太郎が高校を卒業するまでは、明良の家で孝太郎を預かるという約束なのです。
歩美はギャラリーを営んでいるのですが、ある日、強引に自分の作品を売り込んでくるアーティストがやってきます。
彼のほとんどストーカー的な売り方には困惑しつつも、周辺の美術界隈では、彼の才能を認める方向に動いていき、歩美は業界から干されそうになります。
そんな時、明良の家の前に、酒や米が放置されるようになります。
不安に思った明良たちは警察に相談するのですが、警察も犯人を見つけることはできません。
被害はないのだからと、酒と米を警察に預かってもらい、平穏は暮らしが戻ったのは束の間、孝太郎の彼女が妊娠をします。
どう責任を取ろうかと悩む明良ですが、とんとん拍子に孝太郎の結婚が決まります。
そして、米や酒を家の前に置いた主は、孝太郎たちの出産を祝うプレゼントではないかと孝太郎は考えるようになるのでした。
【承】橋を渡る のあらすじ②
都議会議員の妻、篤子は夫の動向を心配していました。
当時、都議会では、女性議員に対するセクハラヤジが社会問題となっており、そのヤジを飛ばしたのが夫ではないか、と疑っていたのです。
ママ友の間でも、その問題は時折浮上しており、篤子は肩身の狭い思いをしていました。
しかし、セクハラヤジ問題は次第に周囲の記憶から消え、他のゴシップが話題をさらうようになり、篤子は一安心します。
しかしそんな時、夫が旧友と頻繁に会うようになります。
不審に思った篤子が注意して見ると、夫は旧友から不正なお金を受け取っていたのです。
旧友はレンズの開発に関わる仕事をしていて、夫はそのレンズの入札価格を旧友に教える代わりに、お金をもらっていたのです。
その事実を知ってしまった篤子は、いったんは何も知らないということにして夫の悪事に目をつぶろうとしますが、どうしても耐えられなくなり、ついに夫の悪事を週刊誌に売った後で、自殺を図るのでした。
【転】橋を渡る のあらすじ③
ジャーナリストの謙一郎は、忙しい仕事の合間を縫って、婚約者の薫子との縁談を進めていきますが、ある日、薫子が浮気をしていることに気付いてしまいます。
その相手は、謙一郎が以前所属していた和太鼓サークルの団長でした。
団長と薫子は以前不倫関係にありましたが、謙一郎が薫子を奪ったことにより、ふたりは別れたはずでした。
薫子は、謙一郎と結婚したほうが幸せになることはわかるが、どうしても浮気相手のことが忘れられない、謙一郎との縁談は破談にしてくれと泣きつきます。
謙一郎はいったんすべてを許すふりをし、薫子を旅行に誘いますが、そこで薫子のことを殺害してしまいます。
薫子を殺した謙一郎は逃亡生活を送りますが、すぐに警察に捕まってしまいます。
しかし、警察に送還される途中に、謙一郎はタイムスリップをします。
そこは、70年後の日本でした。
人間以外に、ロボットや、サインと呼ばれる遺伝子操作をされた人間が存在する社会に怯える謙一郎は、元の世界に逃げ帰ろうと奔走します。
【結】橋を渡る のあらすじ④
謙一郎がタイムスリップした先は、人間の次にサイン、サインの次にロボットという身分の差が生まれていました。
人間は結婚相手にサインを選び、それに加えて人間とも恋愛関係を楽しむというのが一般的となっていました。
この人間というのが、この物語の序盤に登場した明良や篤子の子孫にあたります。
彼らは自分の結婚相手としてサインを持っていました。
サインは人間の所有物であり、サイン同士で恋愛関係になることはタブーとされていましたが、あるとき、二人のサインが恋愛感情を持ってしまいます。
二人とも結婚相手がいましたが、二人はどうしても耐えられず、二人で逃亡することにします。
するとそこに、70年前からタイムスリップしてきた謙一郎に出会います。
彼らは逃亡するすがら、謙一郎をもとの世界に戻す手伝いをしようと、一緒に行動するようになります。
謙一郎の記憶をたよりに、謙一郎は過去の世界に戻ることができますが、謙一郎の婚約者殺害という罪は消えないのでした。
橋を渡る を読んだ読書感想
最初は家族の物語なのかと読み進めていくと、いきなり登場人物がタイムスリップをしたり、ロボットやサインという遺伝子組み換え人間が出てきたりするので驚きました。
思っていたジャンルと違う話ではありましたが、ストーリーの運び方が上手かったので、さくさく読むことができました。
ただ、序盤の2014年の日本の話が長かったような気はします。
伏線なのかよくわからない部分がたくさんあったので、そこはもうすこし省いても良かったと思います。
終盤はひたすらSFだったので、もう少し読み手に知識があれば面白かったのかなとも思いました。
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