【ネタバレ有り】新世界より のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:貴志祐介 2008年1月に講談社から出版
新世界よりの主要登場人物
渡辺早季(わたなべさき)
本作の主人公で、父親は町長、母親は図書館司書。千年後の同胞に向けた手記として本書を書く。
朝比奈覚(あさひなさとる)
早季の幼馴染で後の夫。陽気な性格で悪戯好き。
秋月真理亜(あきづきまりあ)
早季の親友。赤い髪の美少女。14歳時は早季の恋人だった。
伊東守(いとうまもる)
弱気で繊細な性格。命を狙われることに怯え真理亜と共に町を離れる。
青沼瞬(あおぬましゅん)
早季の代では成績トップ。複雑な呪力の扱いも行うことができる。
新世界より の簡単なあらすじ
呪力という超能力を手にした1000年後の日本に生まれた渡辺早季。幼年期は平和で自然豊かな町で幸せに過ごしますが、その後信じてきたことが全て覆されるほどの事件を経験し、一連の事件の?末を手記として書き残すこととします。このような悲劇を二度と起こしてほしくない、事件を風化させてほしくないという思いを胸に古代の小説の手法を真似て事件の細部まで忠実に表現しようとします。
新世界より の起承転結
【起】新世界より のあらすじ①
神栖66町に生まれた渡辺早季は、父親が町長、母親が図書館司書をしていましたが、この世界では図書館司書は大変な仕事でした。
町は八丁標に囲まれた中にあり、子供は決して外に出ては行けないと言われて育てられます。
外界にはバケネズミや風船犬のような生き物がおり、また悪鬼と業魔のような恐ろしい存在もいるそうです。
幼年期を幸せに過ごした早季は順調に成長し呪力を発現させます。
呪力は真言を授けられることにより自在に操れますが、真言は決して人には知られてはならないと教えられます。
しかし、早季はもしもの時の為に幼馴染で仲の良い覚や瞬達と真言を教え合っていました。
早季達は夏季キャンプにて、自走型端末ミノシロモドキと出会います。
ミノシロモドキは先人類の記録やこれまでの歴史を保存しており、人類が滅んだのは呪力による戦争が原因であると知ります。
また、悪鬼や業魔の正体や、何故今のように人口が激減し小さな町で隠れるように暮らさなければいけなくなったのかを知ります。
そこを僧侶・離塵に見つかり、呪力を封じられた上で連行されます。
しかし途中でバケネズミと風船犬の襲撃にあい、離塵が死亡します。
早季達は逃亡しますが早季と覚はバケネズミに捕まります。
何とか脱出した早季と覚はスクィーラというバケネズミに助けられます。
バケネズミ同士での戦争中だそうで、戦闘の最中早季は真言を使い覚の呪力を蘇らせることで窮地を脱します。
その後、瞬達と合流し瞬の呪力も復活させ、町へと帰還します。
【承】新世界より のあらすじ②
神栖66町に帰還後、全員が呪力を取り戻します。
2年後、14歳になった頃、瞬の様子がおかしくなります。
学校に来なくなり、心配した早季が瞬の家を訪れると周囲の草木まで異形化していました。
一方で業魔化する前に殺そうと教師や教育委員会は不浄猫を放ちます。
瞬は自身の呪力の漏出が抑えられなくなっており、誰にも止めることはできなくなっていました。
瞬は最後に早季のことを好きだったと告白し、一人大地に沈んで命を落とします。
瞬が消えて以降、早季達の班には最初からいたかのように稲葉良という少年がおり、皆の記憶が改竄されていました。
その後、違和感を抱きながら生活を続けていると、朝比奈覚の祖母である富子から呼び出しを受けます。
富子は倫理委員会の議長を務めており、ミノシロモドキの事件以降観察をしてきたが早季は他の者に比べて圧倒的に精神的なダメージからの立ち直りが早く、自身の後継者候補と考えていると告げられます。
早季は驚くと共に、やはり教育委員会や倫理委員会は自分達を監視していたのだなと納得します。
その後、守がいつ処罰を受けるかも分からない現状に怯えて町を出ようとします。
守を説得した真理亜は、共に町を出て生活することを決め2人は姿を消しました。
こうして、幼馴染であり小学生の頃から共に過ごしてきた5人のメンバーのうち残ったのは早季と覚だけになります。
早季と覚は守と真理亜を探しに外の世界へ出ますが、そこで過去に助けられた塩屋虻コロニーのスクィーラと出会います。
スクィーラは真理亜からの手紙を預かっており、そこには守と真理亜は遠くへ行くと書き残されていました。
巨大化したバケネズミのコロニーに危機感を覚えつつ町へと帰ります。
【転】新世界より のあらすじ③
12年が経過し、早季は26歳となっていました。
早季はバケネズミについて不吉な予感を覚えており、保健所に就職していました。
バケネズミのコロニーが巨大化し、バケネズミ同士の争いが激しくなるなど不穏な空気が漂います。
夏祭りの夜、皆が花火絵を楽しみに待っているところで遂に人間の呪力を恐れ従順であったバケネズミが大挙して襲撃してきます。
襲ってきたのはスクィーラ率いる塩屋虻コロニー傘下のバケネズミで、様々な策略と火縄銃や毒矢などの武器を使い攻撃してきます。
神栖66町の住人は最強の呪力の使い手鏑木と日野を中心に守りを固めます。
大量のバケネズミを操り同士討ちをさせる日野ですが、バケネズミの不意打ちをくらい倒れます。
鏑木により一旦敵を追い払い体制を整えます。
5人ひと組となり行動することとし、早季と覚は3人組を見つけて共に病院へと向かいます。
病院で捕虜となっていた医師達を助けると、悪鬼によりほとんど皆殺しにされたため早く逃げるように言われます。
助けたうちの1人は何も言わずに全力で逃げ出しますが、いきなり炎に包まれます。
悪鬼が戻ってきて殺戮を再開したのでした。
何とか悪鬼の目を盗み、早季と覚は逃げ出します。
早季は悪鬼の出現を鏑木氏か富子に伝えなければと考え、町の中心部へと戻ります。
富子に会うことが出来ましたが、大怪我をしており、報告の最中に再び敵襲がありました。
富子は自分を置いて逃げるように言い、早季には緊急時の集合場所である清浄寺へと行くよう指示します。
襲ってきたバケネズミの集団は数百人の人を殺しますが、鏑木氏の反撃で全滅します。
しかし、悪鬼がやってきて、鏑木氏は殺されてしまいます。
最強の呪力使いと言えども、直接相手に呪力を及ぼせる悪鬼が相手ではどうすることも出来ませんでした。
また、早季は悪鬼の姿を見て、真理亜と守の子供だと分かります。
【結】新世界より のあらすじ④
早季と覚は清浄寺へと逃げ延びます。
早季の両親は図書館司書として、命にかえても知識を守る役割があるとの責任感から早季に手紙を残して入れ違いに町へと戻っていました。
早季は手紙からサイコ・バスターという生物兵器の情報を得ます。
サイコ・バスターは旧世界の戦争で壊滅した東京にあるようですが、東京は地獄と化しており誰も近寄ろうとはしない地です。
清浄寺にはバケネズミ最大の大雀蜂コロニーの将軍奇狼丸が囚われていました。
早季と覚は奇狼丸に面識があり、話を聞くとかつて東京へ行った経験があるということなので共に連れていくこととします。
悪鬼により仲間を殺されからくも逃げ延びた鳥獣保護官の乾も加え4名で東京へと向かいます。
怪物のように進化した生物が多数おり、悪鬼達も追跡してくる中、東京の地下を探索します。
追っ手が二手に別れた為、早季と乾、覚と奇狼丸の二手に別れ、早季達はサイコ・バスター捜索部隊となります。
途中で乾が犠牲となりつつ、早季はサイコ・バスターを発見します。
小休止の後、早季は妙な感覚と共に消された記憶を取り戻し瞬の名前を思い出し、崩壊した荒野に突如現れた瞬の幻影が早季を導きます。
朝日を浴びて瞬の姿を一瞬見失うと、そこには奇狼丸がおり覚も近くの洞窟に隠れていました。
合流した3人は悪鬼を倒すため決死の作戦を行い、サイコ・バスターを使用して悪鬼を倒そうとするものの失敗します。
本来の悪鬼と違い愧死機構の対象がバケネズミになっているのではないかと推測し、奇狼丸が人間に化けて攻撃を受けると愧死機構が働いて悪鬼が遂に倒れます。
早季と覚はスクィーラを捕らえて町に戻り、主導者と切り札を失ったバケネズミ達は敗北します。
その後、覚が研究の中でバケネズミは元は呪力を持たない人間であったという衝撃の事実を発見します。
10年後、覚と結婚した早季は1000年後、より良い世界になっていることを祈りながら手記を終えます。
新世界より を読んだ読書感想
非常に長大な作品であり、あらすじだけでは書ききれない細かい設定や描写が山ほどあります。
このような世界観を作り出す貴志祐介という作家の才能に感服致しました。
非常に独特かつよく出来たストーリーであり、SF小説としてとてもオススメの作品となっています。
17歳以下の子供には人権がなく簡単に処分したり、呪力が発現しない子供は消されてしまったり(バケネズミに変えられる)、大人達はバケネズミが元は人間だと知っている人もいるはずですが容赦無く皆殺しにしたりというダークファンタジーになっています。
呪力という超能力は決して便利なだけの能力でなく、むしろ制約も多くて使いにくいような気がします。
また、その能力を人類が得たことで、争いが起きたり怪物が増えたりし、結果として世界の人口は9割以上減っておりほぼ絶滅寸前の所まで来てしまっています。
しかもバケネズミによる反乱で神栖66町の人の多くが死に、最強の呪力使いも殺され、町の再建は難しいのではないかと思えます。
そんな厳しい状況でも早季と覚は子供と将来に希望を持っており、本当にメンタルが強いなあと感心しました。
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