「ココナッツ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|山本文緒

「ココナッツ」

【ネタバレ有り】ココナッツ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:山本文緒 2000年7月に角川書店から出版

ココナッツの主要登場人物

桜井実乃(さくらいみの)
ヒロイン。 中学生。父・豹助と姉の花乃の3人暮らし。

熊田洋介(くまだようすけ)
父・大五郎と母の花江に育てられる。 「黒木洋介」の芸名で歌手を続ける。

桜井実乃(さくらいみの)
洋介の彼女。 フリーター。

永春(えいしゅん)
洋介の高校時代の同級生。 高校卒業後に実家の寺を継ぐ。

小野(おの)
洋介のマネジャー。

ココナッツ の簡単なあらすじ

桜井実乃は中学校が夏休みになると、父の豹助が立ち上げたばかりの何でも屋を手伝わされるために忙しくなります。ある時にロック歌手・黒木洋介のボディーガードを頼まれますが、彼の高校の時の同級生は実乃がひそかに憧れている僧侶の永春です。コンサートが近づくにつれて、実乃は永春と洋介の隠された過去を知ることになるのでした。

ココナッツ の起承転結

【起】ココナッツ のあらすじ①

何でも屋に持ち込まれたボディーガード依頼

桜井実乃は4年前に急病で母親を亡くして以来、父の豹助と1つ年上の姉・花乃の3人で暮らしている中学2年生の女の子です。

豹助は今年の春になってこれまで勤めていた銀行の渉外課を退職して、何でも屋「ヒョウスケお便利商会」をオープンしました。

行方不明の犬の捜索に始まって、豆腐屋の仕込みの手伝いから野球チームの欠員補充まで多種多様な依頼がお店には持ち込まれてきます。

今回の仕事は人気のロックシンガー、 黒木洋介のコンサートチケットを手に入れることです。

夏休み期間中ということで実乃も徹夜で行列に並ばされていると、見知らぬ若い女性が豹助に話しかけてきました。

とりあえず名刺を手渡しておくと、後日その女性・佐々木桃子が事務所まで訪ねてきます。

彼女の依頼は来月地元で凱旋記念のコンサートを開く洋介を、 脅している犯人の正体を突き止めることです。

もともと桃子も洋介もこの町の出身で、ふたりは高校生の頃から24歳になる現在までお付き合いをしていました。

【承】ココナッツ のあらすじ②

ロック歌手と坊主は恋敵

洋介は熱狂的なファンに追いかけられているために、久しぶりに帰郷しても実家に帰ることなく駅前のホテルに泊まっていました。

フロントには厳重な警備が引かれているために、そう簡単には部外者は近づくことはできません。

洋介と桃子の他にも、もうひとり高校時代からの知り合いがいます。

彼の名前は永春というお寺の住職の息子で、母が死んで以来何かにつけて実乃の力になってくれるのも彼です。

小学生時代の実乃にとっては「頼りになるお兄さん」でしたが、近頃ではそれ以上の存在になっていました。

洋介の過去について詳しく聞きに来た実乃に対して、永春は桃子も含めた3人の関係を打ち明けます。

高校では同じブラスバンド部に所属していた3人でしたが、洋介と永春は同時に桃子のことを好きになってしまいました。

永春が高校を卒業した後すぐに出家したのは、桃子が洋介をえらんだからです。

永春の紹介のお蔭で、ようやく豹助と実乃は洋介と面会することができます。

【転】ココナッツ のあらすじ③

強欲マネジャーと息子を思う父

テレビに出ている時こそ金色の長髪を逆立てて紫色の口紅を塗りたくった派手なメイク姿でしたか、洋介の素顔は思いの外好青年でした。

「黒木洋介」はあくまでも芸名で、 彼の本名・熊田洋介には豹助は聞き覚えがあります。

洋介の父親・熊田大五郎とは銀行員時代の同僚に当たり、使い込みの疑いがかけられていたことで有名です。

マネジャーの小野は契約金だのCDの買取代金だのいろいろ理由をつけて、かなりの金額を要求していました。

お人よしで世間知らずな大五郎は相手に言われるままにお金を渡していき、ついには銀行員としての一線をこえてしまいます。

思い詰めた大五郎は横領したことを白状して楽になろうと思いますが、芸能界で成功した息子のことを思うとどうしても警察に行けません。

父の手帳に「マネジャーを殺す」と書いてあるのを見た洋介は、自分が何者かに命を狙われているとうそをつきます。

桃子を通じて豹助を雇ったのも、ボディーガードではなく大五郎が殺人を犯さないための監視役にするためです。

【結】ココナッツ のあらすじ④

夏の終わりと実乃の大きな宿題

コンサート当日、実乃と豹助はスタッフパスを胸につけていたために裏口からホールに入ることができました。

本番中に舞台裏で小野を刺そうとした大五郎を、何とか取り押さえます。

逮捕された大五郎は何とか執行猶予で済みそうでしたが、小野の方が余罪が多いために実刑判決は免れないでしょう。

騒ぎの影響でコンサートは途中で取り止めとなり、次の日のスポーツ新聞の一面は「黒木洋介、失踪」です。

ワイドショーや週刊誌はしばらくの間洋介の話題で持ちきりでしたが、いつの間にか忘れ去られていきました。

実乃が永春から「洋介が来てる」と電話をもらったのは、夏休みの宿題に追われていた8月29日のことです。

お寺の境内で、洋介ははにかんだような笑みを浮かべています。

実乃のお蔭で父が人殺しをしないですんだと感謝する洋介は、歌手を引退して桃子とふたりでやり直す覚悟です。

これから桃子の両親にあいさつするという洋介は、いつか実乃と永春が結婚した時に4人で再会することを誓うのでした。

ココナッツ を読んだ読書感想

自由気ままに生きていくヒロインの桜井実乃と、シングルファーザーとして娘を育てていく豹助との関係が微笑ましく映りました。

地元の人たちの厄介ごとを何でも引き受けていく、便利屋としての活躍にも心温まるものがあります。

人気のミュージシャンの護衛を頼まれたことから巻き込まれいく、予想外の騒動も面白かったです。

1度は恋を諦めて頭を丸めながらも、世俗への未練を断ち切ることができない詠春のキャラクターにも好感が持てます。

高校の頃から続いていた三角関係に、実乃が加わることによってバランスのとれたふた組のカップルへと変わっていくラストが心地よいです。

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