「阿修羅のごとく」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|向田邦子

「阿修羅のごとく」

【ネタバレ有り】阿修羅のごとく のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:向田邦子 1999年1月に文藝春秋から出版

阿修羅のごとくの主要登場人物

綱子(つなこ)
長女。夫に先立たれてから再婚せずに、生け花の師匠として生計を立てている。現在不倫中。

巻子(まきこ)
次女。サラリーマンの夫をもつ主婦。息子と娘がおり、夫の浮気を黙認中。

滝子(たきこ)
三女。図書館司書をしており、堅物で潔癖。父親の愛人調査を興信所へ依頼する。

咲子(さきこ)
四女。喫茶店でアルバイトしており、ボクサーと同棲中。

恒太郎(こうたろう)
四姉妹の父親。長年連れ添う妻・ふじの他に長年愛人を囲っていた。

阿修羅のごとく の簡単なあらすじ

現役を引退した年老いた父親に愛人がいることが発覚し、家を独立した四姉妹は大わらわ。興信所を使って愛人の自宅を突き止めた姉妹は様子を窺いに出向きますが、そこには小さい男の子の姿があり、更に事態は深刻に。四姉妹それぞれも生活に問題を抱えており……。

阿修羅のごとく の起承転結

【起】阿修羅のごとく のあらすじ①

竹沢家

竹沢家は国立にある古い一軒家で六十八歳になる寡黙で厳格な父親・恒太郎と、母親のふじの熟年夫婦が住んでいます。

四姉妹はそれぞれ独立し、長女の綱子は夫に先立たれてからは再婚せず、生け花の師匠として生計を立て暮らしています。

次女の巻子はサラリーマンの夫を持ち、一男一女を育てる専業主婦をしており、三女の滝子は男っ気のない独り身で図書館司書をしています。

四女の咲子は喫茶店でアルバイトをしながら、両親に内緒でボクサーを志す青年と同棲中です。

それぞれ生活に忙しく家族で集まることも減っていた竹沢家でしたが、三女の滝子から姉妹に緊急連絡がはいります。

大事な話があるので今夜にでも話がしたいというのです。

その夜、急遽次女・巻子の家に集まった四姉妹は、滝子から父・恒太郎に愛人がいることを伝えられます。

代官山にある友人の家を訪ねた帰りに、たまたま父と中年の女性、それに十歳くらいの少年がいるところを目撃した滝子は興信所に依頼し、父の愛人について調べたのでした。

【承】阿修羅のごとく のあらすじ②

四姉妹会議

相手の女性は土屋友子という名の四十歳女性で、もうじき七十歳になる恒太郎とはずいぶん歳が離れています。

小学四年生になる息子がおり、恒太郎は毎週火曜と木曜に友子たちの家に通っていたのでした。

定年退職してから知り合いの会社を火曜と木曜手伝っているという話でしたが、実際は少しだけ会社に顔を出す程度だったようです。

にわかに信じがたい話でしたが、証拠写真も持っているという滝子に姉妹は信じないわけにはいきませんでした。

向こうの家族とは手を切ってもらうと息巻く滝子。

恒太郎が渋るようだったら、母のふじとは別れてもらうことも辞さないと強気な滝子を、姉妹はなだめます。

五十年間も夫に尽くしてきた母が報われないではないかという滝子の言葉に四女の咲子が横やりをいれます。

母のためと言いつつ、自分の不満をぶつけているだけでなかいかと、滝子の男っ気の無さを引き合いに出しおちょくるので、堅物の滝子は憤慨し口喧嘩がはじまります。

夫婦間の話に子供が口を出すのもいかがなものか、という意見もあり、その日結論は出ないまま、とりあえず母のふじの耳には決して入れぬよう話がまとまりました。

【転】阿修羅のごとく のあらすじ③

ふじ

愛人が発覚した後、四姉妹はそれぞれ母・ふじ本人に気づかれぬよう、ふじの様子を窺うようになります。

姉妹の心配をよそに当のふじは夫・恒太郎が外に愛人を囲っているとは気づいていないようで、のらりくらりしています。

姉妹は安心していましたが、ある日新聞に竹沢家で巻き起こっている愛人騒ぎを彷彿とさせる相談記事が掲載されます。

姉妹の誰かが投稿したに違いないと犯人捜しが始まりますが、名乗りでる者はありません。

ふじの目につかないよう姉妹は必死になって新聞を隠しますが、実はふじが犯人でした。

夫の裏切りにだいぶ前から気が付いていたのです。

夫の恒太郎に直接言うことはないものの、背広のポケットにミニカーが入っていることに気が付いた時など、阿修羅のごとき形相でミニカーを叩きつけ、鬱憤を晴らしていました。

ある日、次女の巻子が父親の愛人が住むアパート近くまで行った時、アパート前にふじの姿を見つけます。

ショールで顔を隠してはいるものの、それは間違いなくふじでした。

ふじに気づかれないよう物陰に姿を隠そうとした拍子に、子供用の自転車を倒してしまった巻子。

とその時、ふじがくずれるようにしてその場に倒れてしまいます。

【結】阿修羅のごとく のあらすじ④

夫婦

巻子は慌ててふじに駆け寄りました。

急いで救急車を呼び、アパートに愛人と子供といるであろう父の恒太郎に助けを求めました。

が、部屋から応答はありません。

隣家に住む女性が顔を出し、親子三人で出掛けていて留守だと言います。

恒太郎不在のまま、巻子はふじを救急車に乗せ病院へ向かいます。

その頃恒太郎は愛人の友子と息子を連れて、近所のアイスクリームショップにいました。

友子から結婚する話を打ち明けられ、八年間続いた関係も終わりを迎えました。

巻子は姉妹ふじが倒れたことを連絡しますが、恒太郎とは連絡がとれないままです。

ふじは顔色悪く目を覚ましません。

その夜、したたかに酔った恒太郎が巻子の夫に抱えられ病院にやって来ました。

そんな父親の姿を見た巻子は激高し、恒太郎に詰め寄ります。

母が倒れたのは、愛人のアパート前だったこと、夫の裏切りに気づいていたこと。

母に謝れと涙を流しながらわめく巻子。

言い返さず、恒太郎はうなだれたままです。

そしてふじは意識を回復しないまま息を引き取りました。

ふじがあの世へ旅立って、恒太郎は一人縁側に座り庭を眺めています。

声をかけるもいつも返事をしてくれたふじはもういません。

竹沢家は火が消えたように静かです。

阿修羅のごとく を読んだ読書感想

向田邦子脈本の『阿修羅のごとく』はテレビドラマで、後に文庫化された作品です。

登場人物たちの会話がいきいきテンポよく繰り広げられます。

今回は父親の愛人にまつわる話題にスポットを当てて書きましたが、綱子の雇われ先の旦那との不倫話や、巻子の浮気される妻の苦悩、滝子の興信所に勤める男性との不器用な恋愛、咲子のボクサーを志す彼氏を支える日々など四姉妹の生活が色濃く描写されていて読んでいて飽きさせません。

個人的には長年連れ添った妻を亡くし、愛人とも関係を解消した父・恒太郎の晩年の姿があまりに寂しく、読んでいて切なくなります。

ラスト二行は涙なしでは読めません。

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