「おひさまのブランケット」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|山本文緒

「おひさまのブランケット」

【ネタバレ有り】おひさまのブランケット のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:山本文緒 1990年7月に集英社から出版

おひさまのブランケットの主要登場人物

渡辺野々子(わたなべののこ)
ヒロイン。高校卒業後に都内で独り暮らしをしながら予備校に通う。

井沢周太郎(いざわしゅうたろう)
野々子の幼馴染み。県立高校の野球部からプロ野球入り。ポジションはキャッチャー。

渡辺美衣子(わたなべみいこ)
女子高校生。野々子と同じ予備校に通う。

咲坂秀幸(さきさかひでゆき)
周太郎のチームメイト。ポジションはピッチャー。

おひさまのブランケット の簡単なあらすじ

井沢周太郎と渡辺野々子は同じ町で生まれ育っていつも一緒にいましたが、高校生になった後もお互いへの想いを打ち明けることができません。やがて周太郎は念願の甲子園出場を経てプロ野球選手、野々子は大学進学を目指して上京。それぞれの道のりを歩み始めたふたりの間に、ひとりの情熱的な女の子が割り込んでくるのでした。

おひさまのブランケット の起承転結

【起】おひさまのブランケット のあらすじ①

幼馴染みのふたりが辿っていく道のり

幼稚園の頃から問題児だった井沢周太郎は、小学4年生の時に少年野球のチームに入ることによって言葉遣いや礼儀作法を覚えていきます。

親同士が仲の良かったこともあり、渡辺野々子は野球を始めたばかりの頃の周太郎とキャッチボールや三角ベースをしてよく遊んでいました。

高校生になったふたりが通うのは、地元の県立北川高校です。

周太郎は野球部に入って甲子園を目指し、野々子は受験勉強に励みながら東京の国立大学への合格を目指し。

野球部は周太郎とバッテリーを組むエースの咲坂秀幸の活躍もあって、見事に地方大会を勝ち抜いて甲子園出場を果たしました。

11月のドラフト会議では東京に本拠地を置く東日ファイヤーズから、咲坂はドラフト1位・周太郎は6位で指名されます。

志望大学に不合格となった野々子が選んだのは、上京して独り暮らしをしながらの浪人生活です。

球団の選手寮へ引っ越した周太郎とは、予備校に通いながらもしばしば連絡を取り合っては会っていました。

【承】おひさまのブランケット のあらすじ②

心地よい三角関係

予備校の授業を受けていた野々子は、隣の席に座っていてたまたま苗字が同じだった渡辺美衣子と知り合いになりました。

高校3年生で短大を受験する美衣子の勉強を見てあげているうちに、彼女が今現在夢中になっているという「王子さま」を紹介されます。

当日になって美衣子が連れてきたのは、ファンレターを送って返事が来るようになったという周太郎です。

思わずその場を逃げ出してしまった野々子は、それから2週間は予備校にも姿を現しません。

周太郎と美衣子は咲坂にも声をかけて、仲直りをするために4人で近所の遊園地に遊びに行くことを提案しました。

渋々ながらもついてきた野々子は美衣子とふたりっきりになった時に、周太郎とはまだキスもしていないことを打ち明けます。

野々子のことを放っておけない美衣子、周太郎を包むブランケットになりたい野々子、美衣子のことを子供扱いしている周太郎。

3人の不思議な関数は、その後も暫くの間は続いていきます。

【転】おひさまのブランケット のあらすじ③

恋のペナントレース

遊園地に行ったときはこのまま成り行きに任せることにした美衣子でしたが、どうしても周太郎のことが頭から離れません。

寮まで押し掛けた美衣子は周太郎に対して1ヵ月の猶予を与えて、美衣子と野々子のどちらが好きな方を選ぶことを迫ります。

野々子は自分が選ばれなかったら田舎に帰って地元の大学に入ると言い出してしまい、美衣子に至っては水商売にでも風俗にでも身を落とす覚悟です。

プライベートではふたりの女の子に振り回されっぱなしの周太郎でしたが、イースタンリーグでの実績が認められて咲坂と一緒に一軍登録が決まりました。

優柔不断で自分では決めることが出来ない周太郎は、全てを野球の神様に託します。

もしも今度の試合で周太郎に打順が回ってきて三振かアウトだったら野々子と付き合う、ホームランかヒットだったら美衣子と付き合う。

日曜日のデーゲームのチケットを2枚手に入れて美衣子と野々子にそれぞれ手渡し、後は本番での出場機会を待つだけです。

【結】おひさまのブランケット のあらすじ④

勝利の女神が微笑んだのは

周太郎の東日ファイヤーズの対戦相手は、昨シーズンのペナントレースの覇者・太平洋アクタスです。

休日の昼間ということもあって、スタジアムは多くの観客で賑わっていました。

この試合に先発した咲坂は、6回2失点と上々の結果を残してマウンドを降ります。

6回の守備の時にファイヤーズのベテラン捕手が負傷退場したために、急遽マスクを被ることになったのが周太郎です。

8回の表にバッターボックスに入る前に、周太郎は外野スタンドから声援を送る野々子と美衣子の姿を見つけました。

周太郎がヒットかホームランを記録したら自分が選ばれないにもかかわらず、野々子は大きな声で「打て!」と叫びます。

思わずぼうっとしてしまった周太郎は、相手ピッチャーが頭部付近に投げ込んだボールを避けることが出来ません。

救護室で意識を取り戻した周太郎が見たのは、ふたりで抱き合ったまま泣き続けている野々子と美衣子です。

「デッドボールの時は、どちらかを選んだらいいのかな?」と、周太郎は笑顔で問いかけるのでした。

おひさまのブランケット を読んだ読書感想

甲子園に出場してプロ野球界入りを果たしたふたりの選手が登場しますが、野球のルールに詳しくないという著者らしく肩の力の抜けたストーリーになってしました。

幼馴染みの渡辺野々子との、仄かなロマンスも描かれていて微笑ましかったです。

野々子と正反対のキャラクターを持つ渡辺美衣子との間に芽生えていく、敵対関係とも友情とも違う奇妙な繋がりも心に残ります。

「おひさまの毛布にくるまって、楽しいことしか考えなかった子供の頃とは違う」というセリフ通りに、大人への階段を昇っていく少年少女たちの青春にほっこりさせられました。

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