「サブマリン」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|伊坂幸太郎

「サブマリン」

【ネタバレ有り】サブマリン のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:伊坂幸太郎 2016年3月に講談社から出版

サブマリンの主要登場人物

陣内(じんない)
主人公。 家庭裁判所の主任調査官

武藤(むとう)
陣内とチームを組む家裁調査官。

小山田俊(おやまだしゅん)
脅迫事件を起こした高校生。

棚岡佑真(たなおかゆうま)
無免許での人身事故を起こしたフリーター。

永瀬(ながせ)
陣内の大学時代の友人。 妻・優子と介助犬のラブラドールレトリバーと暮らす。

サブマリン の簡単なあらすじ

家裁調査官の陣内は、部下の武藤とコンビを組んで脅迫事件を起こした少年・小山田俊の試験観察で大忙しです。パソコンが得意な俊の機転と陣内たちの行動力によって、小学生襲撃事件を未然に防ぐことに成功します。一躍時の人となった陣内でしたが、以前に彼が更生させた元少年との再会によって次なる事件へと巻き込まれていくのでした。

サブマリン の起承転結

【起】サブマリン のあらすじ①

反抗を未然に防いだお手柄調査官

小山田俊は脅迫文をあちこちに送ったものの、実際に死者や怪我人を出した訳ではありません。

15歳という年齢も考慮されたために、少年院送致ではなく「試験観察」の処分が下されました。

家庭裁判所調査官の武藤が自宅にまで面会に行くと、俊はネットに書き込まれた小学校襲撃の犯行予告を見ています。

万が一でも犠牲者が発生したら後悔すると思い始めた武藤が相談した相手は、職場の上司である陣内です。

陣内は何処からか「防犯」の文字がプリントされた蛍光色のベストをふたつ手に入れてきて、予告現場の埼玉県内にある小学校まで武藤と共に乗り込みました。

ふたりがパトロールをしていると、刃物を持った男が車から飛び出してきます。

犯人を取り押さえた陣内のフルネームは次の日の新聞記事に載り、一躍時の人です。

陣内がこれまでに更生させた元少年たちが次々と挨拶に訪れる中でも、若林という青年は10年前に交通事故を起こしてひとりの人間の命を奪っていました。

【承】サブマリン のあらすじ②

交通事故と憎しみの連鎖

若林が起こした事故の犠牲者は当時まだ小学生だった栄太郎でしたが、現場にはもうひとり彼の親友である棚岡佑真という名前の少年がいました。

その棚岡は19歳の時にジョギングしていた中年男性を暴走した車で撥ねてしまい、現在は東京少年鑑別所に収用されています。

若林の話を聞いた陣内がさっそく向かった先は、鑑別所内で調査官と少年が面会する調査室と呼ばれている場所です。

10年前の交通事故と今回の事故とは繋がっていて、棚岡が亡くなった友の無念を晴らすために車で若林に体当たりしようとしたことも陣内にはお見通しでした。

たまたま棚岡が運転する車の前にチワワが飛び出してきたために若林は命拾いをして、まるっきり無関係の男性が巻き添えになってしまったのが事件の真相です。

自らが犯した罪を償う覚悟を決めた棚岡にも、 たったひとつの心残りがあります。

栄太郎が生前に愛読していたマンガが未完のままで、作者も近年は新作を発表していないことでした。

【転】サブマリン のあらすじ③

逆恨みの暴走

鑑別所から帰り道、武藤と若林は陣内の友人宅に招かれました。

永瀬という盲目の男性は陣内とは大学生の頃からの付き合いになり、先日の事件現場を通りかかったチワワの飼い主とも顔見知りです。

初対面でいきなりお邪魔した武藤と若林に対しても、永瀬は戸惑うことはありません。

アイスクリームが食べたいと陣内がいつもの我が儘を言い出したために、4人は近所のスーパーマーケットまで買い物に出かけます。

薄暗い夜道を歩いていた一向に、突如としてスピードを出した黒色の自動車が突っ込んできました。

襲撃者は以前に盲導犬を連れて地下鉄に乗っていた永瀬に、「犬なんて乗せるな」と差別的な暴言を吐いて周りの乗客たちから顰蹙を買った見ず知らずの男です。

自分自身が招いた電車でのトラブル以来、 彼は公共の交通機関を利用することが出来なくなってしまいます。

永瀬を庇おうと咄嗟に彼の前に立ちはだかった武藤は、逆恨みした男に腹部をナイフで刺されてしまいました。

【結】サブマリン のあらすじ④

10年越しの祈り

社会復帰の一環として救急救命士の資格を取得していた若林の活躍によって、 武藤は一命を取り留めました。

怪我の具合が落ち着いてようやく退院した武藤は、鑑別所の調査室で棚岡佑真と向き合ってます。

棚岡はあと2日後に少年審判を控えていましたが、特に緊張した様子は見せていません。

武藤が入院している間に陣内から受け取った、 思わぬプレゼントが心の支えになっているようです。

執念深い陣内は栄太郎が交通事故に巻き込まれて亡くなった10年前から、 例のマンガの続きを書くように作者に迫っていました。

商業誌での連載は既に打ち切りとなって別の仕事をしていたマンガ家でしたが、陣内の余りのしつこさに根負けしてこの度作品を完成させた次第です。

職務を逸脱してまでマンガを読ませてくれた陣内に、棚岡は「あの人、馬鹿なんじゃないですか」と声を震わせます。

その頃陣内は被害者を悼んでたくさんの花束が並べられた歩道の脇で、目を閉じて手を合わせているのでした。

サブマリン を読んだ読書感想

2004年に刊行された「チルドレン」に登場する、ふたりの調査官と12年ぶりに再会したかのような気分になってしまいました。

前作ではプライベートを語ることがなかった武藤が、保育園に通っている長男や2歳年下の長女について言及するシーンには味わいがあります。

「失言を繰り返す政治家の隣にいる秘書の気分」と愚痴をこぼしつつ、破天荒で見境がない陣内にブレーキをかける役どころがピッタリとハマっていました。

相も変わらず自由気ままな独身生活を送りながらも、罪を犯してしまった少年たちと真剣に向き合っていく陣内の姿も感動的です。

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