【ネタバレ有り】大地のゲーム のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:綿矢りさ 2013年7月に新潮社から出版
大地のゲームの主要登場人物
私(わたし)
物語の語り手。 教育学部の女子大学生。音楽研究会に所属。
リーダー(りーだー)
政経学部の男子大学生。 学生理事。
マリ(まり)
私の友人。 映画サークルに所属。
ニムラ(にむら)
マリの元恋人。 映画サークルの部長。
大地のゲーム の簡単なあらすじ
ごく普通のキャンパスライフを送っていた「私」の平穏無事な日々は、あの夏の日の大地震によって一変します。混乱に包まれた大学に突如として現れたのは、「リーダー」と呼ばれているひとりの大学生です。彼や新しくできた友人のマリと共にかつての日常を取り戻していく私でしたが、1年以内に再び来るという地震の恐怖に怯えているのでした。
大地のゲーム の起承転結
【起】大地のゲーム のあらすじ①
あと2日で夏休みというよく晴れた日、僅か2分間でこの国の半分を破壊する巨大地震が発生しました。
大学で宗教学のテストを受けていた私は、防災法に従って学内での待機を命じられます。
地震から2日後、空腹を抱えていた学生たちに支給された救援物資はハンバーガーと炭酸酒だけです。
構内のどこかには緊急用の食糧や衣類が眠ったままになっていましたが、 大学の理事会が止めているために全員に行き渡ることはありません。
そんな時に備蓄倉庫の封鎖を突破したのが、リーダーと呼ばれている男子大学生でした。
真夜中に仲間たちと共に倉庫に忍び込んで、物資を運び出して配って歩く姿はサンタクロースさながらです。
相変わらず軟禁状態が続くなかで、学生たちはふたつの派閥に別れていきます。
呆然と過ごす者、復興と安全のために活動する者。
リーダーは学生を見捨てて自宅へ帰った教授たちの代わりに、「活動する者」として、 自分たちが寝泊まりする学館の秩序を整えていきます。
【承】大地のゲーム のあらすじ②
音楽研究会に所属していた私がビラを配っている時に、声をかけてきたのは映画サークルの女子学生・マリです。
よそのサークルの広告塔を頼まれた私はぶっきらぼうに拒否するものの、その後マリとは打ち解けていきました。
彼女はサークルの部長を務めていて学力も高く真面目なニムラとお付き合いをしていましたが、彼は震災で両親を亡くして以来すっかり人格が変わってしまいます。
ストーカーと化したニムラがキーホルダー型のナイフでマリに切りかかろうとしたのは、地震発生から9日目のことです。
帰るところのない学生たちの一時的な宿泊所として開放されている14号館の前で、ニムラは袋叩きとなってしました。
打ち所が悪かったらしく眠るように死んでいったニムラの遺体は、どこか遠い場所で起きている事件のような気がしてまるで現実感がありません。
震災の影響で猛烈に忙しい警察は、御座なりの捜査と関係者への事情聴取を終えて正当防衛としてこの事件を片付けます。
【転】大地のゲーム のあらすじ③
開催が危ぶまれていた大学祭も例年の秋から12月26日へずらして行われることが決まり、私たちのサークルは夜明け前から屋台の準備を始めます。
出店と共にもうひとつの大きなイベントは、正門内広場での政治演劇とリーダーの演説です。
大勢の歓声に迎えられて演説は始まりましたが、緊急地震注意報のベルが鳴り響いて中断されてしまいました。
朝礼台から降りてどこかへ消えていくリーダーを追いかけて、私は避難シェルターへ突進する人波に逆らって走り出します。
リーダーがいたのは大学創立200周年を記念して建てられた、学内を見下ろすタワーの小部屋です。
避難民が溢れて狂乱の騒ぎになっているシェルターに、 リーダーは行くつもりはありません。
1度目の大地震に耐え抜き耐震工事も終わった大学に残ると宣言しましたが、いつもの人を惹き付ける魅力はなくどこか空虚さが漂っていました。
私は不安に襲われながらも、リーダーに別れを告げて建物の外へ飛び出します。
【結】大地のゲーム のあらすじ④
学祭の真っ只中に特例警報ベルが鳴ってから20分後、大学全体がこの世のものとは思えないほどの地響きに襲われました。
死者数は20000人、負傷者数は130000人、倒壊した建物は1910000棟。 夏の大地震と比べると犠牲者は幾らか減りましたが、1度目の地震でがたが来ていた建物や道路の傷は深くライフラインの復旧のめどは立っていません。
私は逃げる時に足を負傷して入院を余儀なくされために、マリが代わりに避難所を回ってリーダーの行方を探してくれます。
一向に彼の消息が掴めないまま、倒壊した記念タワーの中で発見されたのはリーダーの遺書です。
自分はあらゆる場面においても死ぬ覚悟はできている、 もし死んだら故郷の海に遺骨を撒いてほしい。
リーダーの力強い筆跡を見ていた私は、どこかで彼が生きているような気がしてきます。
大学の取り壊しが決まって臨時キャンパスが設置された田舎町へと引っ越した私は、リーダーの思い出と共に縁もゆかりもない土地で生きていくことを決意するのでした。
大地のゲーム を読んだ読書感想
未曾有の首都直下型地震が、リアリティー溢れるタッチから映し出されていました。
大規模災害における学生たちのパニックばかりではなく、全てにおいて後手に回る大学側の対応についても言及されていて考えさせられます。
崩壊したキャンパスに突如として現れる、巧みな弁舌と天性のカリスマ性を兼ね備えたリーダーの姿がミステリアスです。
ある世代以上の方がこの本を読むと、全共闘が東大安田講堂で繰り広げた攻防を思い浮かべてしまうかもしれません。
地震と共に消えていくリーダーと、生き続けることを決意するヒロインとのコントラストが印象的でした。
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