【ネタバレ有り】蹴りたい背中 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:綿矢りさ 2003年8月に河出書房新社から出版
蹴りたい背中の主要登場人物
長谷川初実(はせがわはつみ)
ヒロイン。 高校1年生。陸上部に所属する。
にな川智(にながわさとし)
初実のクラスメイト。帰宅部
佐々木オリビア(ささきおりびあ)
モデル。27歳。
小倉絹代(おぐらきぬよ)
初実の中学生の頃の親友。
蹴りたい背中 の簡単なあらすじ
長谷川初実はクラスメイトとの交流がまるでありませんでしたが、理科の時間に同じグループになったにな川智と親しくなります。にな川は初実が中学生の頃に1度だけ言葉を交わしたことがある、ファッションモデルの佐々木オリビアにすっかり夢中です。徹夜をしてチケットを手に入れたにな川は、初実と一緒にライブ会場で憧れの人との対面を果たすのでした。
蹴りたい背中 の起承転結
【起】蹴りたい背中 のあらすじ①
長谷川初実が高校に入学してから2ヶ月が経ちましたが、いずれの派閥にも所属することはありません。
理科の授業中に5人で1班を作ることになり、同じくひとりで余っていたにな川智と一緒に適当なグループに入れてもらいました。
顕微鏡を使った実験にも参加することなく、にな川は熱心に若い女性向けのファッション誌を読んでいます。
雑誌のページの中でスタイリッシュなジーンズを着てポーズを決めているのは、初実が中学生の頃に駅前の無印良品で目撃した 「オリチャン」 こと佐々木オリビアです。
オリチャンと会った時の状況を詳しく説明して欲しいと頼まれたために、初実は放課後になるとにな川の家まで遊びに行くことになりました。
にな川の家は古ぼけた平屋造りの一軒家になり、彼の自室にまでたどり着くには一旦庭に出てから階段を上らなければなりません。
母屋にいるであろうにな川の両親にも顔を見せることもなく、初実は薄暗いにな川の部屋に上がり込みます。
【承】蹴りたい背中 のあらすじ②
にな川の机の下にはプラケースが置いてあって、中には雑誌のバックナンバーからオリチャン愛用のアクセサリーやブラウスまでが収納されています。
自分が絶対に着ることはない女性用の衣類をコレクションしている男子高校生の胸の内を、初実は到底理解することは出来ません。
挙げ句の果てににな川は初実のことを放ったらかしにしたまま、 イヤホンを付けてオリチャンが出演するラジオ番組に夢中です。
もの哀しく丸まった背中を見ているうちに、気がつくと初実は足の裏でにな川を蹴ってしまいました。
背中の蹴られた部分を摩っていたにな川でしたが、初実が帰る頃には再びオリチャンとふたりっきりの世界へと旅立っていきます。
帰り道にコンビニに寄って立ち読みした雑誌には、完璧なスマイルを浮かべるオリチャンが写っていました。
MUJIカフェで外国人らしき恋人とふたりでコーンフレークを食べていた、 記憶の中のオリチャンと重ね合わせようとしますが上手くいきません。
【転】蹴りたい背中 のあらすじ③
にな川が4日続けて学校を休んだのは、期末テストが終わってもう少しで夏休みに入る頃でした。
遂には登校拒否に突入したかと心配した初実は、お見舞いをしてみることにします。
相変わらず陽射しのない部屋で寝そべっていたにな川は、チケットぴあに徹夜で並んだために風邪をひいたとのことです。
今度の土曜日の夕方に開催されるオリチャンのライブに初実も誘われましたが、対して興味もないモデルのイベントにふたりっきりで出掛ける気にはなれません。
初実が電話をかけたのは、中学生時代に仲が良かったものの今ではすっかり疎遠になってしまった小倉絹代です。
当日は初実が遅刻してしまったために、 開場時刻ギリギリにライブハウスに駆け込みます。
舞台の上に立つ本物のオリチャンを食い入るように見ているにな川、曲も知らないはずなのにリズムに乗って楽しんでいる絹代。 ふたりや周りの観客たちの盛り上がりと比べると、 初実は自分だけが居場所の無さを感じてしまいました。
【結】蹴りたい背中 のあらすじ④
帰りの電車にはなんとか間に合いましたが、目的の駅に着いた頃には既にバスはありません。 私の自宅も絹代の家も駅から歩いて帰るには遠すぎたために、にな川のところに泊めてもらうことにしました。
お客様用の布団を初実たちに譲って自分はベランダで寝ると宣言したにな川は、風呂上がりの女子高校生ふたりに遠慮しているのでしょう。
午前3時過ぎには同じ布団にくるまった絹代の寝息が微かに聞こえてきましたが、初実は目が冴えてしまい眠ることができません。
ベランダの隅っこに見えるのは、 ふたりに背中を向けてぐったりとしているにな川です。
ベランダと部屋の境目に移動したにな川の隣に、初実も寄り添って明け方の空を眺めます。
ライブに一緒に来てくれたのが嬉しかったこと、楽屋口で生のオリチャンを見た時に今までで1番彼女を遠くに感じたこと。
同じ景色を見ながらも全く別のことを考えているにな川の背中に、初実はそっと自分の足を伸ばして指先を押し付けるのでした。
蹴りたい背中 を読んだ読書感想
高校生活がスタートしてから僅か2ヶ月の間に、教室の中で複雑なネットワークを築き上げていく少年少女たちの姿がリアリティー溢れていました。
いずれのグループにも所属することなく、自由気ままな毎日を送っているヒロインの長谷川初実が清々しいです。
授業中にも関わらず女性ファッション誌を読みふける、冴えない男子生徒・にな川智との恋愛とも友情とも違う不思議な関係も心に残ります。
ライブ会場でようやく憧れの人・佐々木オリビアとの対面を果たしながらも、決して手が届かない存在であることを痛感してしまうラストが切ないです。
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