【ネタバレ有り】Q&A のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:恩田陸 平成19年4月に幻冬舎から出版
Q&Aの主要登場人物
笠原 久芳(かさはら ひさよし)
新聞社でサツ回りをしている。スーパーマーケットMの情報を聞き、いち早く現場に向かった。
タクシーの運転手(名前表記なし)
以前、Mの事故の調査をしていたが、退職してタクシーの運転手となる。
奇跡の子(名前表記なし)
Mの事故を奇跡的に生き残った少女。母親が立ち上げた教団の教祖になる。
Q&A の簡単なあらすじ
この物語は、Q&A形式で進行します。ある冬の日、スーパーマーケットMで、原因不明の事故が発生します。すべての階で、いきなり客が逃げ出そうとし、大パニックになったのです。エレベーターに人が殺到したせいで、多くの子どもが老人が亡くなりました。後日原因を調査したものの、各階に不審な人物はいたものの、原因となるようなものは見つかりませんでした。
Q&A の起承転結
【起】Q&A のあらすじ①
新聞記者の笠原久芳がその事故を知ったきっかけは、テレビのニュースでした。
大スクープだと思い、スーパーのMに向かって自転車を走らせますが、途中で出会う人々はみんな事故の原因を知らないようです。
通行人に話を聞きながらスーパーを目指していくも、「火事だ」と言う人や、「毒ガスがまかれた」という人など、要領を得ません。
スーパーの近くに来ましたが、たくさんの人が逃げようとしていて、なかなか店に到着することができません。
また、特に煙が出ていたり、ガスがまかれているような様子でもありません。
しかし、スーパーの中は閉鎖されていて、中には入れませんでした。
次の日、新聞はどこもスーパーMの事故が一面になっていましたが、やはり、事故の原因は不明なままでした。
笠原はQ&Aの聞き取りに対し、誰も死ななくてよかったのに死んだ、あまりにも不気味な事件だったと語ります。
笠原の姉夫婦は毎週このスーパーで買い物をしていたため、この事故に巻き込まれていました。
幸いにも、笠原の姉が腕の骨にひびをいれただけですんだことに、笠原は安堵しました。
【承】Q&A のあらすじ②
次のQ&Aの回答者は、消防士の男性です。
彼は消防士という、危険に身をさらす仕事をしていますが、家族を大切にしています。
しかし、彼は消防士になって二年目に、両親を病で次々になくします。
特殊な仕事を終えて、家に帰ると安らぎを感じていただけに、彼にとって、家族の不在は大きなストレスになりました。
彼はそれから一年ほど、家に帰れなくなるほど精神を病み、カウンセリングに通うようになります。
そんな時に、今の妻と出会い、少しずつ心が回復し、Mの事件が起こる前には完治しているかのように思えていました。
Mの事故が起きたとき、彼の家族は無事でした。
しかし、彼は再び家族を失うかもしれないという恐怖に怯えるようになります。
一度心を病んでいるだけに、自分でもその恐怖を抑えることができなくなっていくのです。
彼の妻もそれを理解しているので、できる限り彼が安心するように接してくれるのですが、彼の気持ちは安らぎません。
そしてついに、彼は家族を失うくらいなら自分が家族を殺してしまおうという発想に至り、彼は自分の妻と息子を絞殺するのです。
そして悪びれもせず、聞き取りの調査官にそれを話すのでした。
【転】Q&A のあらすじ③
この物語の前半では、Q&Aの質問をする立場の人間については語られてきませんでしたが、後半になって一人、元質問をしている調査官が登場します。
彼は、Mの事件を調査しているうちに、回答者の影に怯えるようになります。
というのも、回答者は事故によって何らかのトラウマや心の闇を抱えており、彼はその部分に寄り添わないといけない仕事内容であったことから、どんどんその闇に侵食されるようになるのです。
心が駄目になる寸前に彼は仕事を辞め、タクシーの運転手になりました。
そこでは、闇を抱えていない一般のお客ばかりを乗せるので、少しずつ彼の心は癒されていきます。
ある日、タクシーに一人の男性が乗り込み、事故現場のMの跡地まで行ってほしいと告げられます。
タクシーの運転手はMのことを思い出したくないので嫌がりますが、お客の言うことなので従います。
会話をしているうちに、運転手は過去に自分がそのMの調査に関わっていたことを話します。
Mの事故は政府による実験だったということ、学校やオフィスビルでも同じような実験をしようとしていたが、あまりにもMの事件が大規模すぎたために中止になったことを冗談めかして話しますが、乗客は政府が送り込んだスパイでした。
秘密を話してしまったタクシーの運転手は暗殺されてしまいます。
【結】Q&A のあらすじ④
Mの事件はたくさんの犠牲者を生みましたが、無傷で生き残った女の子もいました。
その女の子は事故現場から発見された時、堂々とした態度で、手にはぬいぐるみを持っていました。
そのぬいぐるみは血を流していましたが、女の子に怪我はなく、周囲の犠牲者も圧死が大多数だったので、誰の血かはわからないままでした。
後日、彼女の母親は娘を特別な存在だとして宗教を立ち上げ、布施を巻き上げるようになっていきます。
元トップセールスウーマンであった母親の口はうまく、Mの事件の関係者はどんどんその教義に取り込まれていきます。
しかし、女の子が成長するに従って、教団は大きくなり、分裂が始まります。
女の子をできるだけ表に出さずにおきたい母親と、できるだけ表に出して、女の子のありがたみをわかってほしいその他の教団幹部。
ある日、彼女は他のメンバーに連れ出されそうになりますが、その時に、未来の自分がやってきて、Mの事故について教えてくれます。
女の子が生き残ったのは、体が小さくて陳列棚の下にもぐりこめたから。
ぬいぐるみについた血は、その陳列棚の下にやってこようとした、他の女の子を蹴り飛ばしたからなのでした。
Q&A を読んだ読書感想
新しいホラー小説だと思いました。
Q&A形式で話が進んでいくので、とても読みやすかったのですが、あとからじわじわくる怖さがありました。
原因がわからない事故や災害ほど、怖いものはないと思いました。
また、Mの事故によって、人間のいつもは隠されている本能に近い部分が解放されていくシーンがとてもリアルで、本当にこの事故を経験しているような気持ちになりました。
また、こんなにもおぞましい事故ですら、宗教にして金ずるにして利益を生むというシーンは、人間の貪欲さをひしひしと感じました。
絶対に実現してほしくない出来事のひとつです。
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