「変人十二面相」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小林信彦

「変人十二面相」

【ネタバレ有り】変人十二面相 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:小林信彦 1981年11月に角川書店から出版

変人十二面相の主要登場人物

水沢ミキ(みずさわみき)
ヒロイン。小学2年生。漫画家の父と母と姉の4人暮らし。

内藤(ないとう)
漫画家。ミキの父のパートナー。

井戸(いど)
「びっくりコミック」の編集者。

内藤モヨノ(ないとうもよの)
内藤の母。

ジャクスン(じゃくすん)
映画評論家。

変人十二面相 の簡単なあらすじ

水沢ミキは飛び抜けた知能指数に恵まれながらも、ごく普通の地元の小学校に通学している女の子です。劇画のストーリー作家をしているお父さん、大洋ホエールズを愛して止まないお婆さん、地震が大嫌いなアメリカ人。個性豊かな家族や大人たちに振り回されながら、ちょっぴりおませな小学2年生の春夏秋冬は過ぎてゆくのでした。

変人十二面相 の起承転結

【起】変人十二面相 のあらすじ①

天才少女とにわか野球ファンの父

1980年4月、水沢ミキは小学2年生になったばかりでした。IQが高いミキは一時期私立の小学校へ編入することを周りの人たちから薦められましたが、のびのびと育てたいという両親の意向で近所の公立小学校に通っています。ミキの父親の職業はマンガ家でしたが、もっぱらストーリーを創っていて絵を描くことはありません。

コンビを組んでいる画家の内藤が作画を担当していて、只今の連載作品は野球劇画「すすめボトラーズ」です。1年前まではミキの父は野球のルールさえ知りませんでしたが、担当編集者の井戸がアイデアを持ち込んできたのがきっかけでした。

内藤が熱心なプロ野球ファンのために、あれよあれよという間に企画が進んでいきます。今ではミキの父の方がすっかり野球に夢中で、日頃の運動不足を解消するためにジョギングまで始めるほどの入れ込みようです。

ミキも朝から8キロほど付き合わされる羽目になり、静まり返った世田谷区内を父と娘は走ったり歩いたりするのでした。

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【承】変人十二面相 のあらすじ②

母の日に開かれる野球狂の宴

5月11日は母の日に当たるために、ミキは貯めてあったお小遣いで赤いカーネーションとブローチをプレゼントしました。

内藤は母親のために家を丸ごと1軒贈ったために、ミキたち親子も呼ばれて皆で隠居開きのお祝いに向かいます。

内藤モヨノは息子に輪をかけた野球好きで、家もごひいきの大洋ホエールズが本拠地を構える横浜球場の側に建ててもらう程です。

昨夜は大洋が巨人に1点差で破れてしまったために、モヨノの血圧が高くなってしまうほどの大騒ぎでした。

百人一首の世界に出てくるような外観、新しい建材をふんだんに使用している渡り廊下、豪華絢爛な和室。

マイペースなミキの父と違って内藤は何本も連載を抱えているからこそ、立派な建物を建てられるのでしょう。

ペナントレースの順位争いに一喜一憂しながらも、モヨノは孝行息子が可愛くて仕方がありません。

大人たちはビールで、ミキはキリンビールで乾杯しながら新築祝いの宴は夜遅くまで続いていくのでした。

【転】変人十二面相 のあらすじ③

地震の国で生きる外国人

夏休みが終わって新学期に入ったある日のこと、関東地方にマグニチュード4程度の地震が発生しました。

その直後にミキの家には、金髪で小柄の若い外国人男性が駆け込んできます。

彼の名前はジャクスンで、この近くに住んで日本映画の研究をしているアメリカ人です。

「日本沈没」や「地震列島」などの作品を観たばかりのために、すっかり怯えています。

その日は水沢家に泊まっていくことになりましたが、余震も続いておりひと晩中眠ることが出来ません。

すっかり参ってしまったジャクスンに、ミキの父はモヨノを紹介します。

1923年の関東大震災を生き延びたモヨノにとっては、昨夜程度の揺れは地震のうちに入りません。

モヨノがジャクスンに「タリスマン」と称して手渡したのは、キッチンに貼ってあったかまどの神様のお札です。

それ以降も軽い地震が何度かありましたがジャクスンは平気な様子で、モヨノから貰ったお札を握り締めながらジョギングをしていました。

【結】変人十二面相 のあらすじ④

大人の世界へ走り出すミキ

年末年始には印刷所が休みになるために、ミキの父は3回分くらいは連載を書き溜めなければなりません。

いつもは暇つぶしに遊びに来る内藤たちも姿を見せずに、父は仕事に追われていました。

長嶋茂雄の監督退任には、俄かプロ野球ファンながらもちょっぴり寂しそうです。

先日のジョン・レノン射殺事件には、ビートルズ世代として心を痛めています。

普段は「変人」などと揶揄される父の繊細な内面にミキが気が付いたのは、応接間のライティングデスクに隠されていた1冊のノートを手に取ったときです。

家族を養うために随分と我慢しているようで、大人の世界も結構大変そうです。

春休みになって3年生が始まる前に、ミキはローラースケートを買ってもらう約束をします。

怪我をするからダメ、自動車にぶつけるからダメ。

今までは頑なに拒否していた父が、どうして心変わりをしたのかは分かりません。

ミキは大人になることへの不安とときめきを半々にしたままで、春の訪れを待っているのでした。

変人十二面相 を読んだ読書感想

ずば抜けた知能指数を持ちながらも、自由気ままな日々を送っているヒロインの水沢ミキが可愛いらしかったです。

熱しやすく冷めやすい、ミキの父のキャラクターもユーモラスでした。

大人びた子供の眼差しを通して、大人に成ることが出来ない人たちの滑稽さが伝わってきます。

長嶋監督の辞任劇から山口百恵の結婚、伊藤律の復帰にジョン・レノンの暗殺。

物語の舞台となる1980年当時の世相が盛り込まれているために、ある世代以上の方たちには懐かしく思い出されるはずです。

今も昔も変わることのない、子供だけが持っている純真さには心温まるものがありました。

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