【ネタバレ有り】カップリング・ノー・チューニング のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:角田光代 1997年9月に河出書房新社から出版
カップリング・ノー・チューニングの主要登場人物
本橋(もとはし)
主人公。19歳。ピザ屋のアルバイト店員を退職して現在は無職。
坂本春香(さかもとはるか)
本橋の高校の頃のクラスメート。予備校生。
佐山友子(さやまともこ)
20歳。ビデオ屋のアルバイトを辞めて現在は無職。
カジ(かじ)
友子の彼氏。
カップリング・ノー・チューニング の簡単なあらすじ
高校を卒業してアルバイトに明け暮れていた本橋が欲しかったのは、自分だけの愛車です。購入した中古車に「ネモ号」という愛称を与えて、気の向くままにドライブ旅行へと繰り出していきます。道中で3人の女性たちを助手席に乗せることになりますが彼女たちとも深い仲になることはなく、目的のないまま旅は続いていくのでした。
カップリング・ノー・チューニング の起承転結
【起】カップリング・ノー・チューニング のあらすじ①
高校を卒業した本橋はピザ屋で働いてバイト代を15万円貯めて、パチンコ屋の裏にある中古車センターでシビックを購入しました。
兄の中古のレコードコレクションを勝手にトランクの中に詰め込んで、「ネモ号」と名付けた白い車に乗り込んで高校時代の友人たちに会いに行きます。
坂本春香は高校1年生から2年生までのクラスメートで、現在は予備校に通いながら大学合格目指して勉強中です。
1日だけという約束で彼女を乗せましたが、3日たっても春香は一向に降りる気配を見せません。
昨夜はラブホテルに宿泊しながらも、一線を超えることは出来ませんでした。
1年後に送る予定のキャンパスライフから高校生の頃のどうでもいいエピソードに、更に遡って小学生時代の思い出話まで。
延々と自分の話をする春香に、本橋はウンザリしてしまいます。
ようやく春香から解放されたのは、伊勢丹立川店での買い物に付き合わされてデパート内のバーでビールとサイコロステーキを奢らされたあとのことです。
【承】カップリング・ノー・チューニング のあらすじ②
晴香と別れたバーで本橋は、たまたま隣りに座っていたカップルの女性の方に「逃げよう」と声をかけられました。
店を飛び出してネモ号に乗り込んだ彼女は、自らの身の上話を打ち明けます。
名前は佐山友子でさっきまで一緒にいた恋人はカジ、カジと北海道のヒッピー村で暮らすつもりだった計画、カジの暴力に耐えきれずに遂には逃亡を決意。
カジが追って来られないくらい遠くまで行きたいという友子は、道中でお酒を飲んでばかりです。
東名高速道路沿いをひたすらに南を目指すドライブの間、宿泊代もガソリン代も彼女は払うことはありません。
執念深いカジがハーレーダビッドソンにまたがって追い付いてきたのは、浜松市に入って浜名湖でほっとひと息ついていた時です。
最初に殴りかかったのは友子の方で、暴力的という点では彼女も負けてはいません。
取っ組み合いのケンカの末にふたりは仲直りに成功したようで、カジは本橋に特上のうな重をご馳走してくれました。
【転】カップリング・ノー・チューニング のあらすじ③
ハーレーに2人乗りして遠ざかっていく友子とカジを見送った後、本橋は海沿いを走りたくなったので国道1号線から有料道路に入りました。
このまま行けば名古屋に辿り着きますが、本橋は静岡県より先には足を踏み入れたことがありません。
静か過ぎる車内は寂しくて、誰でもいいので助手席に居て欲しい気分になってしまいます。
そんな本橋の目の端に映ったのは、「大阪」と大きく書いた紙を掲げて陸橋の上に立っている女性です。
中途半端に後ろに束ねられたぼさぼさの髪の毛、作業着のようなパンツにすり切れたビーチサンダル、身の回りの品物一式を詰め込んだデイパック。
薄汚れた服装に可愛げもない彼女は、東京からここまでをヒッチハイクで来たと言いました。
旅館の下働きから牧場の手伝いまで、ありとあらゆる職種を日本全国でこなしてきたという彼女の経歴は本橋にとっては驚きです。
運転を代わってくれるという彼女の申し出に甘えて、本橋は助手席に移り静かに目を通します。
【結】カップリング・ノー・チューニング のあらすじ④
目が覚めるうどん屋に駐車していて、間もなく大阪に入るというこの辺りで彼女はユースホステルを見つけて1泊するようです。
割り勘にしてふたりでお得に泊まりたいという本橋の提案にも、彼女は応じることはありません。
ミニ天丼付きのうどんセットに七味唐辛子をたっぷりとトッピングしてぺろりと平らげた彼女は、名前を名乗ることもなく夜の闇の中へと消えていきます。
駐車場の出口にひとりで残された本橋は、さっきまで彼女が素足に突っ掛けていたサンダルが空き缶専用のゴミ箱に捨てられているを発見しました。
彼女の自由気ままな生き方が羨ましくなり、自分が履いていたお気に入りのスニーカーをゴミ箱の穴に強引にねじ込みます。
大型衣料店にスーパーマーケット、川と田畑に住宅街。
この先にはビックリするようなものはなく、何処かで見たような景色が並んでいるだけでしょう。
しかし本橋は暗闇に覆われたこの道をどこまでも走ってみたくなり、裸足のままでネモ号に乗り込むのでした。
カップリング・ノー・チューニング を読んだ読書感想
生まれて初めて自分だけの車を手に入れて見せびらかしたくてたまらない、主人公・本橋のはしゃぎっぷりには共感できました。
目的もなく中古のシビックに乗り込んで、当て所なく走り回る姿も微笑ましく映ります。
助手席に座ることになる、3人の女性たちが実にバラエティー豊かです。
自分の事ばかり喋る同い年の坂本春香、恋人に嫌気がさして逃げたはずなのに未だに彼に未練がましい佐山友子、名前すら名乗ることなく幻のように消え失せていく年上の女性。
彼女たちと過ごす短くも忘れがたい時間と、三者三葉の別れのシーンがほろ苦いです。
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