【ネタバレ有り】続 横道世之介 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:吉田修一 2019年3月に中央公論社から出版
続 横道世之介の主要登場人物
横道 世之介(よこみち よのすけ)
主人公。就職氷河期のために進路が定まらず、大学を卒業してからもパチンコとアルバイトで食いつないでいる。
コモロン(こもろん)
世之介の友人。一流証券会社に入社したものの、ついていくことができずに退職。自己啓発系のセミナーにハマってしまう。
浜ちゃん(はまちゃん)
世之介とパチンコで出会う女性。世之介に背中を押されて寿司職人を目指す。
日吉 桜子(ひよし さくらこ)
コモロンの近所に住むシングルマザーの女性。世之介と付き合うことになる。
続 横道世之介 の簡単なあらすじ
「横道世之介」の続編です。世之介が大学を卒業して、パチンコとアルバイトで食いつないでいるところから物語は始まります。学生時代の友人コモロンと交流する中で、浜ちゃんや桜子といった女性たちと仲良くなり、家族同然の付き合いをするようになります。世之介のアルバイト先は数回変わり、時には正社員雇用の話もやってきますが、なかなかぅまくいきません。桜子と交際することになり、なし崩し的に桜子の実家で車修理の手伝いをするようになり、時折事件は発生しつつも平和な日常が続きます。
続 横道世之介 の起承転結
【起】続 横道世之介 のあらすじ①
就職先が見つからなかった世之介は、パチンコとアルバイトで食いつないでいます。
ある日、パチンコ店の開店直後の台を巡って世之介とある女性がトラブルになります。
その日は女性に狙っていた台を取られてしまうのですが、後日、世之介が通っている散髪屋にその女性がやってきます。
どうしたものかと思っていると、女性は散髪屋で「丸刈りにしてくください」と告げます。
散髪屋の主人も不思議に思い、世之介に女性が丸刈りにしてもらうところを見届けるように言います。
丸刈りとなる過程を見届けた世之介は次第にその女性と親しくなり、女性を浜ちゃんと呼ぶようになります。
浜ちゃんは男性社会である寿司職人を目指していたのです。
丸刈りにすることにより、女であることを捨て、寿司屋に弟子入りすることになりますが、やはり周囲の職人からの風当たりは強く、苦労を強いられます。
しかし、世之介から定期的に元気をもらい、自分の夢を見捨てずに努力を続けます。
数年後、浜ちゃんは独立し、「女が握る寿司」という興味本位だけではなく、純粋に寿司の腕前を認められるようになります。
従業員を数人抱えるようにもなり、店も軌道に乗ってきたころ、海外のホテルに出店しないかという打診をされます。
最初は自信のなさの裏返しで、オファーをしてくれたホテル側に出店の条件をたくさん突きつけますが、それを一つ一つ達成してくれるホテル側の熱意に負け、海外に自分の店を出店することを決意するのです。
【承】続 横道世之介 のあらすじ②
世之介は頻繁に学生時代の友人であるコモロンと遊びます。
ある日、コモロンの家にいくと、ベランダから見える近所のマンションに、美人が見えます。
双眼鏡で美人を観察する世之介ですが、コモロンに女性には子どもがいることを告げられます。
しかし、美人のことが忘れられない世之介は、コモロンを引き付けてマンションまで行きます。
マンションの階に目星をつけて、女性が住んでいると思われる部屋の前をうろうろしていると、少し空いた窓から女性の子どもが苦しんでいるのが見えました。
とっさに世之介が部屋に押し入ると、子どもがビー玉を喉につまらせているのです。
世之介は子どもをひっくり返してビー玉を吐かせて助けます。
その後日、世之介とコモロンが市民プールに遊びにいくと、その親子もプールに来ていました。
そこから、その女性・桜子と息子・亮太と世之介との交流が始まります。
桜子は美人ですが、元ヤンキーで怖いところもありますが、世之介とは気が合いました。
また、亮太も世之介にとてもなついたため、世之介は亮太の父親代わり、兄代わりとしてかわいがるようになります。
桜子の実家にも顔を出すようになり、仕事が決まらない世之介は次第に桜子の実家の車の修理会社の手伝いを始めることになります。
桜子の兄・隼人とも交流を深めていくうちに、隼人が中学生の時に喧嘩した相手を植物状態にさせてしまったことを知ります。
隼人は毎週その相手・光司を毎週見舞っているが、容態は良くなりません。
【転】続 横道世之介 のあらすじ③
ある日、世之介が桜子の家にいると、光司の家から電話がかかり、光司の容態が急変したとの知らせが入ります。
そしてそのまま、光司は一度も目を覚ますことなく、帰らぬ人となります。
世之介と桜子一家は葬式に向かいますが、隼人はすさまじい落ち込みぶりでした。
光司の家族が引くほど隼人は泣きわめくのでした。
その日から、隼人は休みの日もやることがなく、街の飲み屋に居座り続けます。
そして、家を出てどこかに旅に出たいと考えるようになりました。
そして実際に、家出のような形で唐突に海外に行ってしまうのでした。
そのころ、世之介は趣味の写真が賞の佳作に選ばれたことがきっかけで、本気で写真に取り組むようになります。
賞の審査に関わったプロの写真家の事務所に出入りし、手伝いなどをしつつ、カメラを持ち歩いて、桜子や亮太の写真をたくさん撮るようになります。
世之介の写真は大きく評価されることはありませんでしたが、「善良な写真」という評価を受けます。
また、桜子は保険外交員の仕事を始めるようになり、少しずつ忙しくなります。
世之介に二回プロポーズされますが、世之介のことは好きでいるものの、世之介の社会的地位の不安定さなどを考えるとプロポーズを受けることはできません。
亮太も年齢が上がるにつれ、今までのように世之介と友達のように遊ぶことも少なくなっていきます。
亮太は走ることが得意なので、よく世之介と走りにいっていましたが、中学に入って陸上部に入ったあたりから、部活の忙しさのために世之介とどんどん疎遠になっていくのでした。
【結】続 横道世之介 のあらすじ④
それから十数年が経ちます。
亮太はずっと陸上を続けていました。
定期的に、冒険家の実の父親に会うこともあり、自分の生い立ちについて考えることも増えました。
そんな時に、実の父親から世之介が亡くなったという知らせを受けます。
世之介は、電車に飛び込もうとした女性を救おうとして、留学生の男性と一緒に線路に飛び込み、そのまま電車にひかれてしまったそうです。
亮太は世之介と過ごした幼少期を思い出して悲しみますが、記憶が曖昧になっていることに気付きます。
思春期になって世之介を煩わしく思ってしまったことだけが思い出されて後悔します。
そんな時、亮太のオリンピック出場が決定します。
亮太はもともとパラリンピックの盲人選手の伴走者として走ることが決定していたので、オリンピックの出場に少し躊躇しますが、両方出場することに決意します。
桜子や浜ちゃん、たくさんの人が見守る中で、亮太はオリンピックで見事完走します。
結果は11位と、メダルには届きませんでしたが、家族は大喜びです。
このころには亮太は結婚しており、妊娠中の妻もいます。
自分の幸せを噛みしめながら、亮太は世之介を懐かしく思い出すのでした。
後日のパラリンピックの伴走も、盲人選手は途中で転んでしまい、メダルは獲れませんでしたが、完走します。
そして、そのパラリンピックには、コモロンが仕事として関わっているのでした。
世之介の死は多くの人を悲しませましたが、世之介に関わったすべての人は、世之介の思い出を大切にしながら強く生きていきます。
続 横道世之介 を読んだ読書感想
前作に引き続き、世之介のキャラクターが光る内容でした。
世之介は突出した魅力や能力は持っていません。
もっと言うと、定職にも就いていない、ダメなほうの人間です。
でも、世之介の周りにはたくさんの人が集まってきます。
世之介はへなちょこだけど、一緒にいると安心できる人間なのです。
世之介の死の瞬間は詳しく描かれていません。
葬式などのシーンもありません。
だからこそ、人の命が奪われることの儚さが強調されるのだと思います。
大きな出来事も少なくて、日常系の小説ですが、人の人生の素晴らしさ、儚さ、苦しさが存分に詰め込まれた内容になっています。
舞台は東京なのに、世之介がいるだけでゆったりとした時間の流れを感じます。
世之介のような友人がほしくなりました。
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