【ネタバレ有り】薄闇シルエット のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:角田光代 2006年12月に角川書店から出版
薄闇シルエットの主要登場人物
ハナ(はな)
ヒロイン。26歳の時に古着屋をオープンして37歳の今は株式会社チェルシーの経営者。
武田泰文(たけだやすふみ)
ハナの恋人。フリーター。
チサト(ちさと)
ハナの共同経営者。
上条キリエ(かみじょうきりえ)
デザイナー。
持丸道子(もちまるみちこ)
キリエの秘書。
薄闇シルエット の簡単なあらすじ
ハナは37歳になったある日のこと、交際中の武田泰文から結婚を申し込まれました。自分よりも収入が少ないわりに上から目線の武田に愛想を尽かして、彼とは結婚には至ることはありません。その後も何人かの男性と出逢いましたが何れも長続きすることなく、順風満帆だった会社の経営でもひとつの転機を迎えることになるのでした。
薄闇シルエット の起承転結
【起】薄闇シルエット のあらすじ①
ハナは29歳の頃から、武田泰文とお付き合いをしていました。お互いが37歳を越えた春の終わりのある日のこと、武田が勝手に友人たちの前で結婚を宣言してしまいます。ハナは25歳の時に大学時代からの友人・チサトと下北沢に古着屋「チェルシー」を立ち上げて株式会社を経営していましたが、武田は未だにバイト生活です。「結婚してやる」という武田の上から目線にハナが違和感を抱いているうちに、ふたりは別れることになりました。ハナはその後チサトと「純粋恋愛の会」を作って、20代半ばの広告代理店勤務から40歳でミュージシャン志望のフリーターまでを相手にして合コンを繰り返しています。笹尾という34歳のコンピュータープログラマーとはその会で知り合いになり、メールのやり取りをするようになったのは7月半ばくらいからです。笹尾とはふたりっきりで会うようになって何度かデートをしてみましたが、新しい恋愛相手にはなることなく純粋恋愛の会も自然消滅してしまいました。
【承】薄闇シルエット のあらすじ②
チサトが中古ブランド品の店を駅の反対側でオープンさせると言い出し、経営方針の違いからハナと対立してしまいました。鑑定士としての勉強を始めたチサトは梅ヶ丘にある質屋の息子と仲良くなり、プライベートでも充実しているようです。
新しいお店の準備が忙しいチサトはチェルシーの方を自由に任せてくれますが、ハナ自身はこれといってやりたいことが見つかりません。クリスマスイブの夜にも特に予定がなく仕事を終えて早々と帰宅したハナに、父親から電話がかかってきます。母が倒れたという話を聞いたハナは自宅を飛び出して、高速バスでその日のうちに実家のある長野県に向かいました。心筋梗塞を起こして病院の集中治療室へ運びこまれた母は、意識を取り戻すことなく年内に亡くなります。葬儀を終えて遺品整理をしていたハナが見つけたのは、幼い頃に母が手作りしてくれた洋服です。段ボールの中から子供服を引っ張り出したハナは、自分のやるべきことが分かりかけてきました。
【転】薄闇シルエット のあらすじ③
着なくなった子供服をリフォームしてフェルトワークの絵本にすることを思い付いたハナは、チェルシーで働いているアルバイト店員のコネを使ってデザイナーの上条キリエにメールを送りました。
相手はファッション誌で取り上げられるほどの売れっ子で、見ず知らずの古着屋経営者のメールにはなかなか返信してくれません。
秘書を務めている持丸道子からようやく連絡があったのは2週間後のことで、広尾にあるキリエのオフィスで何とか面会に漕ぎ着けます。
ハナが持ち込んだ試作品を一目見たキリエは、デザイン協力ばかりではなく資金援助まで申し出てくれるほど興味津々です。
キリエが雑誌で紹介した途端に、チェルシーには問い合わせの電話が殺到しました。
ハナは母がこの世を去った後でも、彼女が作ってくれた洋服が布絵本となって生まれ変わっていくことに喜びを感じます。
最初は緊張して会いにいったキリエとも、販売戦略のやり取りをしているうちに今では飲みに行くほどの仲です。
【結】薄闇シルエット のあらすじ④
ハナと別れた武田はすぐさま若い女性と付き合い始めて、アルバイトから正社員登用に成功したそうです。
2月に行われた武田と彼女の結婚式にはハナも招かれて、祝いの言葉を送りました。
続いて6月にはチサトが質屋の息子と結婚したために自然とハナとは疎遠になっていきますが、ビジネスパートナーとしての関係性だけは変わることはありません。
布絵本の方は順調に進んでいましたが、キリエは有名作家とコラボレーション企画を立ち上げて大々的に出版していきます。
表紙にはキリエと作家の名前が大きくプリントされていますが、ハナの名前は奥付けのところに小さく原案者として載っているだけです。
武田もキリエもチサトもそれぞれの道のりを踏み出していましたが、ハナには辛うじて赤字を免れているチェルシーがあるだけで結婚の予定も恋人もいません。
誰の目も気にすることなく自分だけの欲しいものを手に入れるために、ハナはひとりで静まり返った夜の住宅街を歩いていくのでした。
薄闇シルエット を読んだ読書感想
アラフォー女性の切実な内面が、繊細なタッチから映し出されていました。
仕事にも行き詰まりプライベートでも冴えない日々を送っている、ヒロインのハナには感情移入できます。
母親の死に打ちのめされていたハナが、懐かしい手作りの洋服からフェルト絵本の制作を閃くシーンが印象深かったです。
同世代の女性たちが結婚・出産を選んでいく中でも、好きなことをとことん追い求めていく姿には心温まるものがありました。
本当の幸せは経済的な豊かさではなく周りの人たちと比べることでもなく、自分自身の生き方に価値を見いだすことなのかもしれません。
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