「JR上野駅公園口」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|柳美里

「JR上野駅公園口」

【ネタバレ有り】JR上野駅公園口 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:柳美里 2014年3月に河出書房新社から出版

JR上野駅公園口の主要登場人物

カズ(かず)
主人公。福島出身の肉体労働者。67歳の時に家を出て、上野でホームレスとなる。

森節子(もりせつこ)
カズの小学校時代の同級生。21歳の時にカズと結婚。

森浩一(もりこういち)
カズの息子。レントゲン技師の国家試験に合格。

森洋子(もりようこ)
カズの娘。仙台に嫁ぐ。

シゲ(しげ)
カズのホームレス仲間。

JR上野駅公園口 の簡単なあらすじ

1964年開催のオリンピックの前年に出稼ぎでやってきたカズは、地元の福島に残した家族を養うために肉体労働に明け暮れる毎日です。若くして息子を失い退職後には妻との死別に見舞われたカズは、人生に絶望して出奔してしまいます。全てを捨てた流れ着いた先の上野公園で、カズは過酷なホームレス生活を送ることになるのでした。

JR上野駅公園口 の起承転結

【起】JR上野駅公園口 のあらすじ①

全てを捨てて上野に向かう

カズは1933年に福島県相馬郡八沢村で生まれて、妻の節子との間に娘・洋子と息子の浩一を授かりました。ふたりの子供を育て上げるためにカズは30歳の時から東京に出稼ぎに行くことを決心して、翌年に控えた東京オリンピックで使う競技場の建設現場で土方として働き始めます。当時のサラリーマンの月給と同じくらいの20000円を毎月仕送りして、お酒を飲むこともなく博打や女遊びに走ることもありません。

妻と子供たちが待つ八沢村へ帰るのは、1年のうちに盆と年末の2回だけです。1981年の3月、息子の浩一が21歳の若さで病死してしまいました。

60歳で出稼ぎを辞めて郷里に帰り悠々自適の隠居生活を送る予定でしたが、7年後には節子が65歳で亡くなってしまいます。独り暮らしの祖父を心配して洋子の娘・麻里が同居してくれるようになりましたが、21歳の女の子を何時までもこの家に縛りつける訳にはいきません。

「探さないでください」と置き手紙をしてカズが向かったのは、東京の上野です。

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【承】JR上野駅公園口 のあらすじ②

上野でサバイバル生活を送るカズ

鹿島駅から常磐線に乗り込んで終点の上野駅で降りたカズは、公園口改札から表に出ました。

東京文化会館の軒下で雨宿りしつつ、その日は身の回りの物を詰め込んだボストンバッグを枕にして一夜を明かします。カズが段ボールとブルーシートを使って小屋を建てた場所は、摺鉢山と名付けられたホームレスが集まるテント村です。

上野には老舗のレストランが幾つもあって、閉店後に裏口に入ると売れ残った惣菜を手に入れることが出来ました。

毎週金曜日と土曜日には教会のボランティアによる炊き出しがあるために、食べ物に困るということはありません。

カズはアルミ缶を集めてひとつひとつハンマーで叩き潰し、1個2円ほどで廃品回収業者に買い取ってもらい小銭を稼ぎました。チケットの転売業者から並び屋の仕事を依頼された時には、日当1000円の臨時収入になります。徹夜で行列に並んでいる時に知り合いになったのが、シゲというニックネームで親しまれているホームレスです。

【転】JR上野駅公園口 のあらすじ③

シゲの身の上話と突然の死

シゲは彰義隊や西郷隆盛を始めとする上野の地理歴史にやたらと詳しく、昼間は言問通りを隅田川沿いに行った先にある図書館で郷土史や文化財に関する本を読んでいました。

いつも身綺麗にしているために、ここに来る前はインテリで、公務員や教職などそれなりの職に就いていたことでしょう。

1度だけカズはシゲの小屋に招待されて、ワンカップ大関とするめやピーナツなどのおつまみをご馳走になりました。

エミールという名前の猫を撫でながら、シゲは問わず語りに自身の身の上話を始めます。

カズと同じく1933年生まれで今年72歳になること、40歳の時に妻との間に息子を授かったこと、大きな間違いを犯して家族に迷惑をかけてこの場所に逃げてきたこと。

シゲは他の誰かと秘密を共有することを求めているようでしたが、カズは彼に対して過去を打ち明けることはありません。

シゲが自分の小屋の中で冷たくなっていたという話を聞いたのは、それから1ヵ月ほど後のことです。

【結】JR上野駅公園口 のあらすじ④

同じ年に生まれた2組の親子

死に場所を探して上野へ来たはずのカズでしたが、気が付くと5年の歳月が流れていました。

2006年11月20日、カズは朝の6時から小屋の解体を始めてリヤカーに家財道具一式を積んで移動準備に追われていました。

JR上野駅公園口の日本学士院で行われる芸術振興会に皇族が出席されるために、午前8時半から午後1時までは擂鉢山には立ち入ることが出来ません。

午前9時頃には雨が降りだし始めたために、不忍池の周りの遊歩道を当て所なく彷徨い歩きます。

国立科学博物館の方角から金の菊紋を付けたトヨタ・センチュリーロイヤルが近づいてきたのは、午後1時過ぎのことです。

周辺は私服警官や観光客で混み合っていましたが、通行人の間から辛うじてその姿を見ることができます。

後部座席の開いた窓から笑顔で手を振っているのは、カズと同じ1933年生まれの天皇陛下です。

カズは浩宮徳仁親王と同じ1960年の2月23日に生まれて、生きていれば46歳になっていたであろう息子の浩一のことを思い出すのでした。

JR上野駅公園口 を読んだ読書感想

1964年の東京オリンピック開催前年に出稼ぎにやって来た主人公が、2020年のオリンピック招致を目指す21世紀の東京でホームレス生活を送っている姿が痛切です。

「山狩り」と呼ばれている行政による段ボールハウスの撤去作業や、少年グループによるテント村への襲撃事件など異質な存在を排除してしまう不寛容な風潮には考えさせられました。

ある日突然のふとしたきっかけから、誰しもがホームレスへと転落してしまう可能性があるのかもしれません。

同じ1933年に生まれながらも、対極の人生を歩んできたふたりが一瞬の邂逅を果たすラストが圧巻です。

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