【ネタバレ有り】麒麟の翼 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:東野圭吾 2011年3月に講談社から出版
麒麟の翼の主要登場人物
(加賀恭一郎)
加賀恭一郎シリーズの主人公。すぐれた洞察力をもつ警察官だが、なぜか本庁から日本橋署に異動してきた。日本橋に興味をもち、日本橋界隈で起こる事件に首をつっこみ、数々の難事件を解決していく。
(青柳武明)
カネセキ金属に勤務する、日本橋での事件の被害者。息子の悠人とは、なかなかコミュニケーションが上手にとれていない。建築部品メーカーである会社では、製造本部長を務める。
(青柳悠人)
武明の息子で、本作品のキーマン。中学時代まで水泳部に所属していたが、なぜか高校では水泳を続けなかった。そのことが原因で父親とうまくいっていない。
(八島冬樹)
日本橋事件での容疑者でありながら、事件の直後に車に引かれて死亡してしまった。福島県にある児童養護施設で育った。
(中原香織)
冬樹の恋人であり、冬樹と同じ児童養護施設で育った。
麒麟の翼 の簡単なあらすじ
加賀恭一郎の働く日本橋で、また新たな事件が起きます。今回の事件はなんと「日本橋の麒麟像の真下で男性が刺殺されていた」という事件でした。容疑者もすぐに見つかり、単なる強盗殺人だろうと警察が動き始めた時…いくつもの不可解な事実が明らかになります。加賀恭一郎シリーズらしい「ウソ」をテーマにした作品。読み終えたときに見えてくる真実が、読む人の心に突き刺さります。
麒麟の翼 の起承転結
【起】麒麟の翼 のあらすじ①
日本橋でとある事件が起きました。
被害者の名前は青柳武明です。
建築部品メーカーのカネセキ金属に勤務していて、そこで製造本部長をしています。
その人が日本橋の麒麟像の真下でフラフラと歩いているところを、巡回中の警察官が目撃します。
その後、被害者は死亡しました。
同じころ、日本橋の近くで以前カネセキ金属で派遣社員として勤務していた八島冬樹が、挙動不審な動きをしていたため警察が声をかけたところ、道路に飛び出してそのまま車にひかれました。
その後、意識不明の重体となりますが、彼の荷物から青柳の財布が見つかったため、警察は、八島が強盗目的で青柳を刺し逃走したと断定して、容疑者としました。
さらに、八島はカネセキ金属で派遣社員として勤務していたとき、勤務中にけがをしていましたが、派遣社員だったため労災を申請できず、労災隠しをさせられました。
その逆恨みを含めて刺殺したと警察は捜査を進めていきますが、事件に首をつっこんだ加賀の眼には何か不自然な点がいくつか見つかります。
【承】麒麟の翼 のあらすじ②
加賀が独自の調査を進めていく中でいくつかのことが分かってきました。
まずは、八島と同棲していた中原香織に話を聞きました。
八島と中原は福島県の出身で同じ児童養護施設で育ちました。
そのため、東京に二人で出てきても、なんのつてもなく、生活は苦しいままでした。
話を聞いていくと、事件当日、八島は中原に「面接に行く」と言って家を出ていたことが分かりました。
そして、穴の開いた靴下ではなく、新しい靴下を探していたそうです。
このことから始め加賀は、八島が青柳に対して、労災隠しのことをネタに仕事を紹介するよう声をかけたのではないかと推理しました。
しかし、誠実な性格の八島が、靴下を気にしてまで会いに行く相手に対して、そんな行動をとるのか疑問に感じます。
また、調査を進めていく中で、被害者である青柳がなぜか水天宮に千羽鶴をもっていっていたことが分かりました。
しかもこれは家族にばれないようにおこなっていたのです。
この行動の謎を追っていくにつれて、青柳の息子が意外な形で事件に関わっていたことが分かったのです。
【転】麒麟の翼 のあらすじ③
実は、はじめに千羽鶴を水天宮に奉納していたのは、息子の青柳悠人だったのです。
なぜ父親が代わりにやりはじめたのか、息子に問いただしたところ、新たな真実が見えてきたのです。
息子はあるとき偶然、長野県に住む意識不明の少年、吉永のことを紹介するブログ「キリンノツバサ」の存在を知りました。
吉永が中学生のとき、水泳の事故で意識不明になったことを知り、水にまつわる神様である水天宮に千羽鶴を奉納していたのです。
そして、悠人がパソコンでそのブログにアクセスしているところを偶然父親の武明が見つけてしまい、それ以降悠斗は千羽鶴の奉納をやめてしまいました。
ブログの管理者である吉永の母親もその水天宮参りをとても喜んでいたので、武明は自分のせいで悠人が水天宮参りをやめてしまったことを知り、自分が代わりに続けようと決意したのです。
そして、父親はある真実にたどりつきます。
実はその意識不明の少年は、悠斗の中学時代の水泳部の後輩であり、悠人と同じリレーのメンバーだったのです。
あるときその少年が事故で意識不明になっていたことを父親は思い出します。
さらに悠人はそのころを境に水泳をやめてしまったので、何かつながりがあるのではと、中学時代の顧問の元を訪ねます。
【結】麒麟の翼 のあらすじ④
加賀は、ここまでの真実を知り、さらに悠人を問い詰めました。
そこで実は、事件当日被害者の青柳武明が会いに行ったのは八島ではなかったことが分かりました。
武明は悠人の中学時代の同級生であり、リレーのメンバーだった杉野に会いに行っていたのです。
そして、さらに中学時代の顧問に話を聞きに行ったところで事件の本当の姿が明らかになります。
悠人が中学時代、後輩だった吉永のせいで大会に負けてしまいます。
先輩だった悠人たちは特訓と称し、吉永に過酷な練習を課します。
そのせいで、吉永は水の中で意識不明になってしまったのです。
そしてその事件をなんと顧問は、3人の将来のことを考えてと、吉永一人で起こした事故だとしてしまったのです。
自分たちが起こした事件をもみ消してしまった3人は、その後何ごともなかったかのように日々を過ごしていました。
そんな真実を知らなかった父親は、リレーのメンバーだった杉野に会いに行ったのです。
自分たちの事件が明るみに出ることを恐れた杉野は日本橋の近くで、武明のことを殺してしまいました。
そう、中学時代の顧問が過去の事件をもみ消したことで、教え子が新たな事件を起こしてしまったのです。
刺された後、武明は息子たちに何かを伝えようと、日本橋の麒麟像の下まで向かっていたところ力尽きてしまったのです。
金に困っていた八島は事件の一部始終を目撃し、落ちていた武明の財布をそのまま盗んでしまっていたため今回の事件の犯人と疑われていたのでした。
麒麟の翼 を読んだ読書感想
誰かのためと思ってつくウソが、その人の人生を狂わしてしまうということを切に感じる作品でした。
悠人たちの顧問だった糸川は彼らの将来を案じて、ウソをつきます。
しかし、そのことによって、杉野は「何かまずいことがあったら隠してしまえばいい。」
ということを学んで、ついには殺人まで犯してしまうのです。
私たちは生きていく中で、向き合いたくない苦しいことに直面することがあります。
しかし、誠実に向き合うことがどれだけ大事か、またそんな人間でありたいということを糸川という、まさに「反面教師」から教えてもらえる作品です。
加賀恭一郎シリーズを通じてテーマとなっている「ウソ」から見える本質に迫るすばらしい作品でした。
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