川村元気「世界から猫が消えたなら」のあらすじと結末ネタバレ

世界から猫が消えたなら

【ネタバレ有り】世界から猫が消えたなら のあらすじを起承転結で解説!

著者:川村元気 2012年10月に小学館から出版

世界から猫が消えたなら の簡単なあらすじ

主人公の『僕』はある日病院で医師に1週間の余命宣告をうけます。

 その夜、自宅に主人公と同じ顔の悪魔が現れある取引をもちかけてきます。

その取引とは『この世界から1つだけ(あるものを)消す。その代わり寿命を1日得ることができる』というもの。

それを聞いた僕は生きるためにものを消すことに決めるのでした。

悪魔は、まず最初に電話を消そうと提案してきました。ここで言う消すとは概念そのものを消すと言うことです。この世界から電話というものがそもそも無かったかのように無くなり、忘れ去られると言うことでした。電話が使えなくなってしまうと思った僕は最後に数年前に別れた元恋人に連絡することにしました。

そして世界から電話が消えました。

それから悪魔は”映画”、”時計”を次々に消そうと提案してきます。主人公は悩みながらも、死にたくないという一心で了承し、悪魔はその代償として主人公の寿命を1日、1日と伸ばしてくれました。

主人公は世界からモノが消えるたびに元恋人、親友との思い出も失っていきます、そして失ったモノの大切さに気づいていくのでした。

そんな中、悪魔の力で突然愛猫のキャベツが人間の言葉を話すようになります。

驚く主人公に悪魔は次に世界から猫を消そうと提案してきます。

主人公は悩みます、猫を消せば自分はもう1日長く生きることができます、しかしそうするとキャベツとの思い出を、そしてキャベツ自身の命も失ってしまいます。

主人公は苦悩し、悩み抜いた結果、「猫を消さない」と決めるのでした。
この時主人公は自分の死を受け入れたのです。

自分に残された時間がわずかだと悟った主人公は亡き母が願っていた、自分と父とのわだかまりを解くことにします。主人公は父に手紙を書き、直接渡すために郵便配達員の制服に着替え父のところに向かうのでした。

世界から猫が消えたなら の起承転結

【起】世界から猫が消えたなら のあらすじ①

突然の余命宣告

僕は4年前に母を亡くし、キャベツという名前の猫と暮らしている。

ある日風邪を拗らせて病院へ行くとステージ4の脳腫瘍と診断され余命は1週間も怪しいと宣告される。

病院から家に戻ると僕と同じ顔の悪魔が現れ『明日、あなたは死にます』といいそれを伝えにやってきたという。

僕は悪魔と『この世界からひとつだけ何かを消す。

その代わりあなたは1日の命を得ることができる』という取引をする。

消すものは悪魔が決めるといい、まず最初に僕が持っていた携帯電話を見て電話を消すことになった。

悪魔は最後に1回だけ消すものを使う権利があると言った。

僕は一瞬疎遠になっている父親の顔を浮かべるが結局7年前に別れた元恋人に電話をかけ、明日会う約束をした。

電話を切った後、悪魔がこの世界から電話を消した。

元恋人は映画館で働いていた。

彼女に会い『もうすぐ死ぬかもしれない』と告げた。

彼女は『最後に好きな映画をかけてあげるから一緒にみよう』と約束し明日の夜9時に映画館で待ち合わせをした。

彼女と付き合っていたころ毎日ように映画館に二人で通っていた事を思い出す。

夜になり悪魔が現れ次は映画を消すという。

僕はそれを聞いて倒れてしまう。

【承】世界から猫が消えたなら のあらすじ②

大切なものは失って初めて気づく

次の日の朝世界から映画が消えたら?と想像するが生きていなければ映画を楽しむことができないと考え僕は映画を消すと決意する。

最後の1本をなににするか映画好きの僕は悩み、レンタルビデオ屋で働く映画オタクのツタヤという親友に会いにいく。

ツタヤに『僕、末期がんで死ぬんだ』と告げ人生最後の1本を一緒に考えてほしいと頼む。

いろいろ二人で悩んだ末、チャップリンの喜劇ライムライトに決める。

ツタヤは『とにかく生きてほしいんだ』と涙を流し、僕も泣いてしまう。

午後9時になり彼女とDVDパッケージを開けると中身が空だった。

彼女と白いスクリーンを眺める僕は想像し僕の人生という映画を見る。

僕が生まれ、年を重ね父と口を利かなくなった事、母と先住猫『レタス』が死んだこと、キャベツと二人で生きていくと決めたこと、走馬燈のような映画が流れる。

帰り際彼女は泣きながら大きく手を振り僕もそれに応えた。

家に帰り悪魔が映画を消した。

僕は母がよく言っていた『大切なことは失ってから気づくのよ』という言葉を思い出し、今の自分の状況と重ねる。

無数の映画が自分を支えていたことに気づき、映画を失ったのが心底辛く、切なくなる。

悪魔は次に時計を消すと言い、僕は何も考えたくなくてその申し出を受けた。

【転】世界から猫が消えたなら のあらすじ③

キャベツと母

朝になると時間がこの世界から消えていた。

僕は時計屋の父を思い出し胸が痛んだ。

悪魔の力で愛猫キャベツが人間の言葉を喋れるようなり母が昔キャベツと一緒に時代劇を見ていたせいで語尾にござるをつけて時代劇風に喋った。

キャベツと散歩にでかけた僕はキャベツの気まぐれさにこんな事に毎日付き合っていた母は本当にキャベツを可愛がっていたんだろうなと考える。

しかしキャベツは母の事を忘れていた。

僕はキャベツに母との時間を思い出してほしくて4年前の家族旅行について話す。

母が病気になって行きたいと希望しキャベツも含め行った温泉旅行だった。

その時の写真を見てキャベツは思い出せないが幸せだった、という事だけは覚えているという。

僕は旅行の話で母は僕と父が仲直りする為に旅行に行きたいと行ったのだと気づく。

母は父と僕の為に最後の時間を使ったのだ。

僕は写真の中の母の顔を見て苦しく、悲しくなり涙した。

キャベツがいつものようにそばに寄り添い、膝に乗り座った。

それから悪魔の魔力が消えキャベツは人間の言葉を話せなくなった。

また悪魔が現れ次は猫を消しましょうという。

【結】世界から猫が消えたなら のあらすじ④

世界から僕が消えたなら

僕は猫の命か自分の命かどうするか決断することができず、明日中に結論を出すように悪魔に言われる。

彼女は僕宛ての手紙を差し出した。

それは母が今後あの子が本当に辛いことがあれば渡してほしいと彼女に預けた手紙だった。

手紙には”死ぬまでにやりたい10のこと”を書こうと思ったら全部あなたの為にしたいことだった。

母の愛に満ち溢れた手紙だった。

手紙の最後にはお父さんと仲良く暮らして下さいとあった。

その手紙を読み、僕は生前の母を思い出し涙する。

泣いている僕にキャベツは寄り添い『もう泣かないで。

猫を消せばいい』と自分を消して命を伸ばすことを提案する。

僕はそれを納得することはできず、僕にはキャベツがいない世界は受け入れられないと、猫を消さないと決心した。

自分の死を受け入れたのだ。

僕は遺書を書き、母が望んでいた父との和解を思い郵便配達員の制服に着替え自転車に乗り父のがいる実家を目指す。

懐かしい風景が目に入りあの町がどんどん近づいていく。

世界から猫が消えたなら を読んだ読書感想

主人公『僕』の視点で物語は進んでいきます。

『僕』の周りには大切な人やモノがあります。

しかし主人公は世界から何かを失ってから初めて大切だったと気づくのです。

しかも消えたモノはもう元に戻ることはないのです。

主人公の亡き母が残した『何かを得るには何かを失わなくてならない』、『ほとんどの大切なことは、失われた後にきづくのよ』という言葉が印象的で存在と消滅が全体のテーマだと感じました。

キャベツが主人公の母を忘れていた場面で主人公は動揺し、いずれ自分が消えてしまうという事が恐ろしいと感じます。

そしてまだまだ生きたい、何かを爪痕を残したいと生への執着が生まれます。

今まで淡々としていた主人公が初めて感情をむき出しにしたシーンでした。

きっと主人公は死ぬよりも元恋人、親友、キャベツ、皆の記憶から最初から存在しないように忘れられるのを恐れたのです。

猫を消す前に主人公が自分の命よりも大切なモノを失う前に気づくことができたのです。

消し続けて生きることも可能ですが、主人公は自分の命を伸ばす代わりに自分の思い出や周りの人を削るように生きていく。

というのが怖くなったのでしょう。

それから死への準備をはじめるシーンでは『自分が存在した世界と存在しなかった世界。

そこにできる僅かな”差”こそが僕の生きた”印”』と考えすごく穏やかな気持ちになります。

大切なものを見落とすことのないようにというメッセージ性を感じました。

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