【ネタバレ有り】殺人の門 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:東野圭吾 2006年5月に角川書店から出版
殺人の門の主要登場人物
田島和幸(たじまかずゆき)
主人公。裕福な歯医者の息子。性格はお人よしだが、祖母の死をきっかけに殺人を意識するようになる。
倉持修(くらもちおさむ)
小学校からの同級生。巧みな話術で周囲を翻弄する。読めない性格。和幸を悪徳商法の仕事へと誘う。
江尻陽子(えじりようこ)
アルバイト先で知り合った和幸の初恋の相手。
上原由希子(うえはらゆきこ)
セールス先の老人の近所に住む、美人で心優しい女性。
トミさん(とみさん)
和幸の祖母の世話をしていた家政婦。和幸の父と肉体関係があった。
殺人の門 の簡単なあらすじ
田島和幸は歯医者の息子として裕福な暮らしをしていたが、祖母の死が母の殺人によるものだという噂が流れ、人生が暗転していく。両親の離婚、父の廃業、転校先でのいじめ—。そんな中、小学生からの友人、倉持修が自分を騙していたと知り、殺意を抱くようになる。しかし、倉持の巧みな話術に惑わされ、何度殺意を抱きながらも、なかなか殺すことができない。何が真実なのか。殺意から殺人へ実行される瞬間とは。人間の微妙な心理を丁寧に描いた作品。
殺人の門 の起承転結
【起】殺人の門 のあらすじ①
祖母が死んだのは、和幸が小学校5年生の時でした。
父健介は歯医者を営んでいて、母峰子は祖母と折り合いが悪く、寝たきりだった和幸の祖母の世話は、家政婦のトミさんがしていました。
和幸は、トミさんの優しさに母性を重ねていましたが、トミさんは税理士の男とばかりでなく、父とも関係を持っていました。
そんな時、和幸は小学校で同じクラスになった倉持修と親しくなるのでした。
修は刺激的な人物でした。
そんな修に、賭け五目並べのガンさんを紹介された和幸でしたが、お金に困り、死んだ祖母の手から財布を盗んでしまいました。
そのとき、開くはずのない祖母の目が睨んでいたように思えたのでした。
祖母の葬式で和幸は吐いてしまいます。
その後「母が祖母を毒殺した」という噂が流れ、和幸は殺人に興味をもちはじめます。
両親が離婚し、父の元で暮らす和幸のもとに、「呪いの手紙」が届きます。
それは、中に書いてある人物に呪いの葉書を送り、自分が呪いたい人物の名前を書いた手紙を三人に出せというものでした。
和幸は気になりつつも放置していました。
しかし和幸の元に「殺」と書かれた葉書が次々と届きました。
それは、誰かが「呪いの手紙」に和幸の名を書いたということでした。
父は飲み歩き、ホステスの志摩子に貢ぎ、あげくに、志摩子の恋人に頭を殴られ、手が動かなくなってしまいました。
歯医者の休業を余儀なくされた父は、更に飲んだくれます。
和幸は呪われたことを思い出します。
貧乏になり、公立の中学に進んだ和幸に、木原という友達ができました。
木原に「賭け五目並べはサクラがいる。」
という話を聞き、修のことを思う和幸でした。
そんな中、歯医者の廃業、引越しが決まりました。
荷物を整理する際、和幸は診療所で毒薬を手にいれました。
転校する和幸に、木原がサイン帳をくれたのですが、そのサイン帳には、呪いの葉書と同じく、「和幸」を「和辛」と間違えた修のサインが入っていたのです。
【承】殺人の門 のあらすじ②
転校先でいじめられ、修の毒殺を計画しますが、インチキ五目並べのこと、呪いの手紙をお金に変える方法を意気揚々と語る修に、殺意が喪失します。
高校生になりアルバイト先で江尻陽子に惹かれていく和幸でしたが、修が現れ、三人でお茶をしてから陽子の様子が変になり、アルバイトの最終日、陽子は修が恋人であると仄めかしました。
一方、ホステスの志摩子を見つけた父が包丁を研いだのを知った和幸は、父の殺意と殺人に興味を持ちます。
父を追いかけた先で、父の殺人を期待したのですが、父は志摩子の言い訳に丸め込まれてしまうのでした。
しばらく経ち、新聞に陽子の自殺が載りました。
陽子の母からの電話で陽子が妊娠していたことを感じ取り、修を呼び出しますが、陽子とは会っていないというのでした。
嘘をついていると確信した和幸は、修に罰を与えようと誓うのでした。
父はまた志摩子に貢ぎ始めます。
和幸は志摩子にお金がないので別れるようお願いし、不甲斐ない父への殺意が湧きました。
また志摩子への殺人も考えるのですが、決心できませんでした。
ある日、父が包丁と共に消えていました。
、志摩子のマンションで、何もない部屋にボーゼンと胡坐をかいている父を見た和幸は、拾った包丁を振りかぶるのですが、父が笑いながら泣いているのを見て、殺せなくなるのでした。
父が失踪し、独身寮つきの工場で働く和幸は、陽子と同じクラスだった子に、陽子が泣きながら流産しようとしていたと聞きました。
倉庫で手に入れた青酸カリを持って修に会いますが、陽子と関係はもったけど陽子は売春していたと言われ、悩みます。
修に誘われネズミ講のサクラに行った先で藤田という嫌な先輩を入会させます。
入会がばれ会社をクビになった藤田に和幸は刺されますが、死よりも激痛に恐怖を感じるのでした。
退職し住むところに困った和幸に、修は同居の話を持ち出します。
修の本性を知るために和幸は同居します。
【転】殺人の門 のあらすじ③
修を信頼し始めた和幸は、修の紹介で金のセールス会社に入りますが、会社ぐるみで強引なやり口を行なっている悪徳企業でした。
房江という老女の寂しさに付け入る修に嫌気が差す和幸でしたが、修を殺すことができません。
修は自分も騙されたと弁解します。
和幸は退職し、部屋を出て家具の運送をします。
房江宅を訪問し、自殺を知り線香をあげる和幸でしたが、房江の写真に嘔吐するのでした。
セールス先の老人牧場の近所に住む上原由希子に好意を持っていた和幸は、力になりたいと申し出ますが、断られます。
そんな中、詐欺罪で破産宣告した会社の金を、和幸の名前で盗んだ男がいると聞き、修を自ら裁こうとしますが、平穏な日々の中、忘却していきました。
ある日、家具屋に修と婚約した由希子が現れました。
殺人のチャンスを狙う和幸でしたが、由希子から同級生の関口美晴を紹介され付き合ううちに修を恨むことを滑稽に感じはじめ、美晴と結婚しました。
しかし結婚後美晴は散財し、家庭は荒れます。
そんな時、家具屋の客寺岡理栄子と浮気します。
理栄子が家に来たと美晴は和幸を責め、更に散財、ついに離婚します。
多額の借金を背負わされた和幸は、修に株と不動産の会社を手伝うよう誘われます。
一番信用ができる人間だからと照れながら言う修を信用し、役員として出社すると、やはりその会社は怪しいのでした。
一方、理栄子の部屋は別人の家でした。
和幸は、飲み屋で働く理栄子を見つけ、郵便物から村岡公子が本名であると知ります。
そして郵便物の盗み見に通う中、美晴と二人で仲良く写っている写真を見つけ、美晴の実家で美晴の兄から、金遣いが荒い性格、キミコという風俗譲の友達、修と付き合っていた過去を聞き、激怒します。
修は株価が暴落し雲隠れしていため美晴の家へ行き、手紙泥棒だと罵る美晴の態度に、本気で首を絞めますが、修が仕組んだことだと聞くと、修への殺意へと変わるのでした。
【結】殺人の門 のあらすじ④
修は未だ失踪中でした。
修からの呼び出しに、殺意を持って会いに行く和幸でしたが、お金を用意し、この世でただ一人信用できる親友だといって立ち去る修に、混乱していました。
しかし、渡された封筒の宛名を「辛」と見間違え、修を追いかけナイフを出そうとした瞬間、修は別の男に襲われました。
先に刺されてしまったと告白する和幸に、刑事は、横取りされて悔やんでいるようだ。
殺人には引き金が必要で、それがないと殺人者となる門はくぐれない。
くぐらないほうが良い。
と言います。
会社の悪事がばれ、家具屋も辞め、やり直そうとする和幸は、植物状態の修を一生懸命看病する由希子を見守っていました。
そんな中、見舞客としてきた美晴は、修が言ったことが本当だと言います。
また、佐倉洋平という名刺をもった英国紳士風の見舞客がきて、それは賭け五目のガンさんだと気付きます。
話をする中、修が生まれながらにお金持ちである少年に嫉妬し、嫌ってはいなかったが、不幸になることを望んでいたと知ります。
そして、成功する為の捨て石は心から信用できる人間にすること。
幸せは望むが役に立たないほどには幸せにしない。
と聞きます。
歯医者一家の不幸は偶然ではないという言葉が気になった和幸は、名刺先を訪ねます。
部屋に入ってきた茶髪の中年女をよく見ると、トミさんでした。
昔からトミさんはガンさんと付き合っていて、和幸の母に祖母のごはんに白粉を入れろと言われたことを話していました。
全てを理解した和幸は、病院に駆けつけ、寝ている修の顔を見ながら、おまえだったんだな。
呪いの手紙—見事だったよ。
と心で呼びかけます。
「だけどもう終わりだ」「さよならだ、倉持」と呟いた和幸でしたが、修の目が和幸を見て「そうはいくものか—」と言ったように感じ、死んだ祖母の財布を盗った時の目の恐怖が蘇り、それから逃れるため修の首を絞め続け「おれは殺人の門を越えたのだろうか—」と自問するのでした。
殺人の門 を読んだ読書感想
さすが東野圭吾だという作品です。
全てが布石、まさかの展開に、読み進めることをやめられなくなります。
一人称で、人間のなんとも言えないドロドロした感情をうまく描写しています。
お金を騙し取る方法も細かく描かれていて、その緻密さに目を見張ります。
主人公の和幸は倉持修を恨みながらも、いつも口車にのせられ信じてしまいます。
そして、なかなか殺せません。
和幸の弱いところを修は巧みについてきます。
修の人を惹きつける性格、二人の奇妙な友情、そして殺人。
最後に殺人の門を開いたのは、動くはずのない死者の目への恐怖でした。
それは、祖母、房江、修の「目」というより、和幸本人の「恨まれている」という心の闇だったのではないかと思うのです。
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