【ネタバレ有り】株価暴落 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:池井戸潤 2004年3月に文藝春秋から出版
株価暴落の主要登場人物
坂東洋史(ばんどうひろし)
白水銀行審査部調査役。スーパー一風堂の与信審査を担当している。
二戸哲也(にとてつや)
白水銀行企画部。エリートの出世頭。坂東と一風堂への対応で対立している。
犬鳴黄(いぬなきこう)
スーパー一風堂爆破事件の容疑者。
滝田君男(たきだきみお)
蒲田署の刑事。黄と因縁がある。
山崎信夫(やまざきのぶお)
黄の同級生。黄の友達のふりをしていたが、黄のことが嫌い。
株価暴落 の簡単なあらすじ
一風堂スーパーで起こった爆弾事件。犯行声明が出され、殲滅を宣言された一風堂は株価が下落、客足も遠のき大ピンチを迎えます。経営状態が不安な一風堂の融資を担当する白水銀行坂東は、一風堂の融資を巡って行内で二戸と対立。そんな中一風堂の出店計画に関連して自殺者が出ていることを知ります。その死に白水銀行も関わっているらしいことが行内の資料から察せられます。一風堂の融資について検討するべく事件についても調べ始めます。
株価暴落 の起承転結
【起】株価暴落 のあらすじ①
白水銀行審査部に努める坂東は自分が融資審査を担当しているスーパー、一風堂で爆弾が爆発し死者が出たというニュースを見ます。
一風堂は全国各地にスーパーマーケットを出店している会社です。
しかし経営実態は有利子負債一兆を超えており、銀行内で経営再建について話し合いが行われてきました。
一代で一風堂を全国展開させた創業者で現会長カリスマを持つ風間のワンマン経営方針などは、行内でも意見の割れるところとなっていました。
企画部のエースニ戸は一風堂への対応に関して坂東と対立していました。
破綻懸念を訴える坂東と、再建のため一風堂支援を訴え続ける二戸とは度々ぶつかっていました。
しかしこんな事件があれば一風堂はさらなるピンチに立たされたと言っても過言ではありません。
ニュースを受け株価は下落。
スーパーへの客足も落ちていくことが予想されます。
一方坂東の元にやってきた一風堂の友部と広報の財前は脅迫メールが来ていたことを相談しに来ます。
こんなメールが公になれば客足はさらに落ち業績悪化を心配する財前。
そして銀行に一風堂の株価の買い支えを依頼してきます。
隠ぺいするはずだった脅迫メールは警察によって発表されました。
一風堂殲滅と書かれた脅迫文に加え、警察発表で同等の事件が各視点で起こりうると発表され店舗への客足は悲惨なものとなります。
株価もじりじりと値下げを続け、経営破綻が坂東たちの頭によぎりました。
大きな取引先である一風堂の業績は銀行にも大きな影響を与えます。
坂東は上司たちから一風堂の脅迫メールを公にするよう発言したことを責められます。
しかし仮に一風堂への融資を続け、白水銀行ももろに影響を受ければその責任を取るのは融資担当である坂東であることはわかっていました。
またこんな状況にもかかわらず、一風堂は業績の下方修正はなく、銀行の融資計画も変更がないことを坂東は不満に思っていました。
【承】株価暴落 のあらすじ②
坂東は行内からの情報で、一風堂と揉めていた店のことを知ります。
一風堂は安売りを全面に押し出したネオ一風堂を出店しています。
その中の一つの店舗が出店の際、地域商店街から強く反発を受けていました。
その反対グループのまとめ役であった安岡という男が自殺していました。
そして反対運動は無くなったのです。
その男の息子と詳細について坂東は調べ始めます。
坂東は当時主力銀行だった個人商店の安岡に対して、一風堂から働きかけがあり、白水銀行が安岡へ融資をすると口約束をしておきながら実際は融資しなかったのではないかと疑います。
安岡の息子である黄について調べてみると、親戚のところで面倒を見られており苗字が犬鳴に変わっていました。
地元住民に聞くと黄は、昔起こった教師宅への放火事件を起こしているというのです。
実際には証拠もなく、黄は否定していたので真相は藪の中です。
黄は白水銀行に口座を持っていたので、坂東はそこから彼の生活と普段の様子を推測していきます。
黄のアパートを見張る坂東は、そこに地元商店街の精肉店の息子で彼の同級生がいるのを見かけました。
下落し続ける一風堂株。
とにかく一風堂への融資をやめない主張をする二戸と意見が対立し続け、二戸は坂東へ捨て台詞を吐きます。
事件を調べる担当刑事野猿にもタレコミがあり、彼は安岡の息子黄について調べ始めるのでした。
黄の勤め先である会社で、爆弾の材料を購入した痕跡がありました。
会社では使用しない材料で、警察は黄を指名手配します。
黄はそれを察知して逃げ出すのでした。
そんな中、一風堂爆破事件の類似事件が起こります。
小売店のホームページから脅迫文を送りつけ、今回は金銭を要求してきました。
【転】株価暴落 のあらすじ③
黄は見つからないまま、類似事件の操作に乗り出した野猿。
一風堂には金を要求しなかったことが引っかかります。
犯人たちの希望通り、指定口座に現金を振り込みます。
受け取りに来た犯人たちはあっさりと現金を引き出しに来て捕まります。
黄の姿はありませんでした。
一風堂の事件に関しては否認する四人組の容疑者たち。
ニュースを見て驚いた山崎は滝田と会っていました。
友達のふりをしていたものの黄がずっと嫌いだった山崎。
そして滝田はかつて黄が疑われた放火事件を担当した刑事でした。
今度の件で生意気な黄を捕まえてやろうとしていたのです。
山崎は滝田に幼女への婦女暴行事件のことを知られていて、逆らえないのもあったのです。
滝田は山崎を使い黄をおびき寄せようとしていました。
黄から連絡があった由希は山崎が味方ではないと忠告します。
一方野猿は二つの事件は別物だと思い一つ一つ状況の洗い出しをはじめます。
黄が関わったと思われるネオ一風堂のボヤ騒ぎの防犯カメラをチェックします。
はっきりとそれには黄が写っていました。
しかし野猿は所轄の刑事であるはずの滝田からこの件に関してなにも連絡がなかったことを不審に思います。
一方坂東は、安岡商店の件で二戸が一枚噛んでいたことを知ります。
そして坂東を追い詰めるべく二戸は査問委員会を動かそうとしているのでした。
滝田に不信感を抱いた野猿は滝田のことをマークします。
そして彼が山崎と連絡を取り合っているのを知ります。
人事から再度一風堂の件で吊るし上げられた坂東。
懲りずに融資をやめる主張をし続けます。
そんな中、一風堂の友部から風間たちの更迭を計画していることを聞きます。
経営方針が変われば可能性があると考える坂東。
坂東はもしそうなれば今後も融資を検討していくと友部に答えるのでした。
【結】株価暴落 のあらすじ④
一風堂の改革を掲げてきた友部。
定例役員会で風間の根回しを行い当日を迎えます。
しかし土壇場で賛同者たちはいなくなり、友部は会社を去ることになりました。
由希は顔見知りである滝田に黄のことを相談しようと考えます。
由希に黄を呼び出せて、二人で一風堂の店に行くよう支持します。
滝田の筋書きでは、黄は一風堂を爆発させ恋人と死ぬのです。
しかしうまくいきません。
彼をつけてきた野猿に滝田は捕まります。
一方一風堂への融資は頭取判断で見送られることとなりました。
坂東の元へ、滝田たちを逮捕した野猿がやってきます。
山崎、そして山崎の知人で黄の同僚だった高田も捕まりました。
黙秘する滝田の動機を銀行員の視点で見て欲しいという野猿。
坂東は一風堂の株価を値下げさせ、空売りして巨額の富を得ることが目的だったのではと仮説を立てます。
それに添い調べてみると、滝田は財前と組んでいたことがわかりました。
財前も逮捕され事件は解決し、あとは坂東の査問委員会だけとなりました。
更迭されるかもしれないと思っていると、友部がやってきます。
坂東に恩義を感じていた友部は、坂東の窮地を聞きつけ急いで資料を持ってきたのです。
二戸は風間の会社の顧問としてコンサル料を受け取っていました。
その会社は実態のない幽霊会社です。
これで二戸を追い詰められると思った坂東は資料を持って査問委員会に乗り込むのでした。
株価暴落 を読んだ読書感想
本作は株価と、一企業と銀行の関係、そして爆弾テロによる事件と、三つの要素を盛り込まれたミステリーです。
巨大グループスーパーの一風堂で爆弾事件が起こり、犯人から犯行声明が出されます。
事件が解決しない限り一風堂の経営は苦しくなる一方、株価は下落、主力銀行である白水銀行は、一風堂に対して融資をどうするか迫られます。
経済の血液とも言われる資金。
一風堂のような大企業もまた、資金という血液を循環させる役割を果たしてきました。
一風堂が倒れれば、関連企業、取引先、そして雇用、多くの問題が発生します。
しかし一風堂がその血液を循環させるために、息の根を止められた人々が存在するのも事実なのです。
資本主義である日本経済。
経済のルール、会社のルール、そして個人の利益と個人の感情、それらが複雑に絡み合って事件は発生します。
そしてそこに介在する金の番人のバンカーたち。
作者お得意のバンカーたちの行内人事における愛憎が事件に絡んできます。
優秀な人材が集まる銀行。
その中ですでにふるいにかけられ続けノーミスで出世レースで同僚たちとしのぎを削るバンカーたち。
冷静でありながらも人事調整、根回しなどをこなし、さらに相手を陥れるために手を回し、そして主力取引先とも調整を行います。
取引先ともやり合い、恨みと憎しみを生み出しながらの業務。
経済の血液を循環させるためにはこの厳しさが求められるのでしょう。
お金の力の強さについて考えさせられます。
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