【ネタバレ有り】もうひとつの命 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:入間人間 2017年12月にKADOKAWAから出版
もうひとつの命の主要登場人物
魔女(まじょ)
何百年も生きている女性。赤い実を食べることで死んでもまた生き返る。
稲村(いなむら)
一度死んで甦った少女。昔は神童と周りから囃し立てられいた。
七里(しちり)
稲村の親友。正義感が強く真面目な性格。
藤沢(ふじさわ)
口数が少なく、謎めいた少女。野外学習で唯一木の実を食べなかった。
和田塚(わだづか)
独りでも生きていけるように努めている。趣味は庭の水やり。
腰越(こしごえ)
和田塚の友人で、よく料理を頼んでいる。昔、弟を亡くしている。
江ノ島
小学校の野外学習で行方不明となった少年。
もうひとつの命 の簡単なあらすじ
稲村は学校の屋上から飛び降りた。棺桶の中で眠っているはずの稲村が体を起こし生き返った。皆が葬儀場を去った後、藤沢はその場に残った四人に「覚えてる?」と訊ねた。それは小学校の遠足で出逢った魔女のことだった。魔女の言った「命をひとつあげる」という言葉を思い出す。命と願いをテーマにしたひと夏の奇妙な物語が始まる。
もうひとつの命 の起承転結
【起】もうひとつの命 のあらすじ①
学校の屋上から飛び降り自殺した稲村が、棺桶から顔を出して起き上がりました。
死んだはずの稲村に誰もが驚愕し混乱しました。
起き上がった稲村を見て腰越は小学校の野外学習で出逢った赤く大きなつばの帽子を被った魔女のことを思い出しました。
その日から世間は稲村の話題で持ちきりになりました。
腰越は千円の夕食を作ってもらうために和田塚に連絡を取りました。
テレビで稲村のニュースを観ている和田塚に魔女のことを訊ねました。
「昨日思い出した」和田塚も腰越と同じように甦った稲村を見て魔女のことを思い出していました。
小学校の野外学習で倒れていた魔女を見つけたのは藤沢でした。
まるで餓死しそうな魔女を助けると、魔女はお礼に一人ひとりに一粒の赤い木の実を渡しました。
『命の恩人に返せる恩義は命だけよ。
あなたたちに命をあげたわ』魔女は微笑みながらそう言いました。
夕方、スーパーに向かった腰越は藤沢と七里のペアを見かけました。
藤沢に話しかけようとしたとき、彼の視界は歪み地面へと倒れました。
【承】もうひとつの命 のあらすじ②
稲村が死ぬ一週間前のことです。
まだ昼間の熱が残る夕方、部活帰りの七里は自転車の後ろに稲村を乗せて彼女の家まで送っていました。
稲村の冗談を聞き流して帰ろうとする七里を稲村は呼び止めました。
振り返った七里に稲村は唇を重ねました。
「稲村さんがいないのは寂しい?」怨敵である藤沢が七里にそう訊ねました。
稲村が甦り世間の注目を浴びて七里の隣からいなくなってから藤沢が付き纏うようになりました。
最初は嫌がっていた七里も徐々にその状況を受け入れ、藤沢と行動を共にするようになりました。
弁当泥棒が出るなどの他愛もない会話をしていると、慣れ親しんだ声が七里の名前を呼びました。
「なんで七里が? そいつはぼくを突き落として殺したやつなのに!」甦り有名人となった稲村は七里の手を握る藤沢を指差して叫びました。
翌日、七里は駅前で待ち合わせると自ら彼女の右手を取り海へと向かいました。
波の打つ浜辺で七里はハサミを取りして決意しました。
【転】もうひとつの命 のあらすじ③
稲村の復活を目の前で見た翌日、和田塚は江ノ島のことを思い出しました。
腰越の夕食を作った帰りに和田塚は夏休みぐらい違う道を通ってみようと考えて、別の道を選びました。
それは夕暮れの黄昏で、沈む夕日が道から見渡せる海をオレンジ色に染めていました。
黄昏を背負い野暮ったい人影が近づいていました。
「どこだ」強い臭いを放つ浮浪者は和田塚の真後ろに来ると、和田塚に訊ねました。
戸惑い恐怖を抱いた和田塚を浮浪者は刃物で刺しました。
目を覚ました時、濃紺に微かな星が散らばった空が広がっていました。
お腹に刺さったナイフは転がっていて、浮浪者は消えていました。
逃げた浮浪者に憤る和田塚を車のヘッドライトが照らしました。
和田塚は振り返りすれ違った車を目で追いました。
運転席には誰も乗っていませんでした。
自宅に一度帰宅した和田塚でしたが、すぐに友人の腰越の家に向かいました。
明りは点いているのに誰も居ませんでした。
和田塚は逃げるように家を飛び出して、走り疲れた頃に気付きました。
「俺は、独りらしい」
【結】もうひとつの命 のあらすじ④
藤沢が稲村を突き落とし、そして甦り世間を騒がせている頃に魔女は藤沢の下へとやってきました。
団地の六階に位置する藤沢の小さな部屋の窓際に魔女は座り込んでいました。
魔女が誰かの下にやってくることは分かっていたけれど、予想よりも迅速な対応でした。
「私のことを待ってたでしょ?」魔女は藤沢が江ノ島を絞め殺すところから魔女の千里眼で見ていたと明かしました。
手段を択ばないあなたの方がよっぽど魔女よと藤沢に言いました。
目の前の魔女が全て知っていることが分かった藤沢は、隠すことはやめて木の実について訊ねました。
藤沢の仮説を聞いた魔女は、唸って「順番が違う」と甦る順序を説明します。
まず命が失われて、そして木の実が次の命になるのだと。
木の実が身代わりになるわけではないことを説明しました。
生まれ変わるだけなのだと魔女は言いました。
その日から魔女は藤沢の部屋の押入に居候するようになります。
そして、歪んだ愛情が交差していきます。
もうひとつの命 を読んだ読書感想
たった1人の少女によって巻き起こされる奇妙な物語でした。
奇妙な体験を共有する五人が、それぞれの死と願いによって交差するストーリー展開は面白かったです。
それぞれの話の中で出てくるちょっとした出来事が他の登場人物には大きく関わっている伏線は驚きと感心がありました。
結局何の力も持たない魔女は、木の実を渡すことと藤沢の部屋に住み着いたこと以外はほとんどストーリーを牽引することはありませんでした。
しかし、彼女の言葉の節々に重みが含まれています。
魔女はどこかで終わりを探していたのかもしれません。
きっと寂しくなったのだと思います。
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