【ネタバレ有り】東京の子 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:藤井太洋 2019年2月に角川書店から出版
東京の子の主要登場人物
仮部諌牟(カリベイサム)=船津怜
伝説のユーチューバー。現在は名前を変えて何でも屋として生活している。
雲野背文(セブン)
ITを使って主に大熊の仕事を請け負っている。
ダン・ホイ
ベトナム料理店店主。ベトナムから移民を積極的に受け入れている。
大熊大悟
船津怜に仮部諌牟の戸籍を与えた人物。違法すれすれの事業を展開する。
東京の子 の簡単なあらすじ
東京五輪が終わった3年後の2023年が舞台です。東京五輪を開催するために建造された施設跡に東京人材開発大学校(東京デュアル)が開設されました。東京デュアルは、学校で学びながら学内にあるサポーター企業で働き、手に職をつけることが出来る施設です。ここには、オリンピック前に制定された出入国理及び難民認定法(移民法)によって、海外からも大勢の留学生が来ています。仮部は、ダン・ホイから店で働く留学生を探しだし、店に戻るように説得して欲しいと依頼され、東京デュアルへと潜入します。留学生である女子学生を取り巻く状況から学生全体を巻き込んだデモ行進にまで発展してしまう物語です。
東京の子 の起承転結
【起】東京の子 のあらすじ①
主人公の仮部は、10年前まではパルクール・パフォーマーで伝説のユーチューバー「ナッツ・ゼロ」の船津怜という過去があります。
仮部は施設で育ちましたが、育児放棄した両親が探しに来るので、現在は別人の戸籍「仮部諌牟」を買い取りダン・ホイの店「724」を手伝いながら、その店の3階の1室で生活しています。
またこの頃、オリンピック前に制定された出入国管理及び難民認定法(移民法)によって、大勢の外国人留学生が日本に押し寄せています。
彼らは日本人の恋人が出来たり、仕事が辛く金銭的に厳しいことなど様々な事情から、時折仕事場やバイト先から逃げ出すことがあります。
仮部は逃げた彼らを見つけ出し説得して、大熊の元へと連れ戻す仕事を請け負っています。
その日も「724」で手伝いをしていた仮部に大熊から「逃げたミャンマー人を探して連れてきて欲しい」と仕事の依頼が来ます。
仮部は、友人・セブンのIT技術で見つけ出した情報から、ミャンマー人を追いかけ説得し、大熊の元へ連れ戻すことに成功します。
【承】東京の子 のあらすじ②
ある日仮部は、ダン・ホイから店で働く女性「ファム・チ・リン」が無断欠勤しているので、探し出して店に戻るように説得して欲しいと依頼されます。
彼女は、東京オリンピックの会場跡地に開設された東京人材開発大学校(東京デュアル)に通う学生だったのです。
依頼を受けた仮部は、東京デュアルへと潜入します。
東京デュアル内には、「724」の出張店舗も入っており、ファムは東京デュアルに通う傍ら、そこでアルバイトをしているのです。
まず仮部は、その店舗の店長である長谷川に会い、ファムが店に置いていったIDカードを手渡されますが、実はそのIDカードは、東京デュアルに通う学生寮へも入室することが出来るのです。
仮部は、ファムの素行調査のため、寮へ向かい部屋へ入ります。
そこには、夥しい数の本がひしめき合っていました。
ファムは、優秀な学生だったのです。
そんなファムには、水谷という日本人の恋人がいることがわかります。
次に仮部は、恋人の水谷に会うべく水谷が受講している授業へ潜入します。
その授業は、三橋という東京デュアルを設立した学長が行う授業でした。
三橋は授業で「ナッツ・ゼロ」の動画を使って授業をしていました。
そして、潜入している仮部が船津であることを見抜きます。
その縁で仮部は水谷の情報を得るために三橋の学長室へ行き、面会します。
【転】東京の子 のあらすじ③
三橋に会って水谷の話を聞いた仮部は、水谷が顔を出しているという学生のための労働組合(ユニオン)へと向かいます。
水谷は、仮部を見て逃げ出そうとしますが、あっさりと仮部に捕まります。
仮部は「ファムさんと連絡を取り、無断欠勤はマズいのでダン・ホイへ連絡して欲しいだけだ」と説明します。
水谷はファムに連絡し、仮部と面会することになります。
ファムは、仮部に「1週間時間が欲しい」といい、その事をダン・ホイへ連絡しました。
仮部はファムが休んでいる間、ファムの代わりに東京デュアル内の「724」の手伝いをすることになりました。
ファムは、東京デュアルがしていることは「人身売買にあたる」という持論を持ち、その撤廃を求めて活動しているのです。
また、同時期に大熊から東京デュアル絡みの仕事を依頼されますが、同じところで2件の仕事は請け負えないと断ります。
その頃東京デュアルでは学園祭のシーズンとなり、水谷が出入りするユニオンで模擬ストを行い、企業と交渉をするという企画が持ち上がります。
その企画を知ったヨーコが渡辺という男を連れてユニオンを乗っ取ります。
ヨーコは、ストを行いサポーター企業に対して、解雇制度をなくすように交渉するというのです。
これは、大熊絡みの仕事だったのです。
そのストの内容を聞いたファムは、水谷と話し合いますが、平行線のままファムは音信不通となります。
【結】東京の子 のあらすじ④
水谷が活動するユニオンは、ヨーコに完全に乗っ取られ、学園祭の催しの予定はストに代わり、この東京デュアルを設立するにあたって関わった首相官邸までデモ行進する運びとなりました。
その活動を止めるため、ファムはネットに「人身売買」の訴えを動画配信します。
それを受けて、仮部はファムと学長である三橋との会談の場を提案します。
三橋はファムの訴えを認め、改善するように約束します。
ヨーコはファムと三橋の会談を利用し、「ナッツ・ゼロ」の動画とファムの動画をネットで流し続けます。
仮部はファムを守るため、三橋にネット配信を止めるように説得し、セブンと水谷とともにデモを止めるために動き出します。
三橋は学生と話し合うことを条件に会見を行います。
デモを止めることに成功した仮部は、これまで過去を隠して生活していましたが、この事で船津怜に戻ることを決意します。
警察へ事情を話した仮部は、必ず戻ってくることを水谷とファムに約束し、「ナッツ・ゼロ」から「東京ニッパー=東京の子」として名を改め、再びパルクール・パフォーマーとして動画配信することを誓います。
東京の子 を読んだ読書感想
2020年を目前にした現在は、東京オリンピックを盛り上げようと選手・企業などが必死になっています。
オリンピックが終わった後の事など全く考えていない状態です。
そして移民法についても同様に、政治家たちは想像力が欠如し、若い日本人よりも外国人に日本の未来を託そうとしています。
そんな状況を見事な想像力と文章力で描いたこの作品は、すぐそこに迫っている未来像が克明に描かれています。
55年前の東京オリンピックとは時代背景が全く違っていて、景気回復には結び付かないことは容易に想像できます。
さらに外国人労働者を受け入れれば、日本人の労働者が溢れてしまうでしょう。
また、学生が大学に入るために奨学金を借り、留学生もまた日本へ渡航するために多額の借金をしています。
彼らは長い時間をかけてそのお金を返済していくのです。
このような過程を人身売買とした本作品は、東京オリンピック後の日本だけに限らず、現在の社会問題であることを教えてくれました。
そんな日本にメスを入れたこの作品を是非多くの日本人に読んで欲しいと思います。
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