【ネタバレ有り】ボトルネック のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:米澤穂信 2009年10月に新潮社から出版
ボトルネックの主要登場人物
嵯峨野リョウ(さがのりょう)
本作の主人公。嵯峨野家の次男。亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れるが、自分が存在しないパラレルワールドに迷い込んでしまう。
諏訪ノゾミ(すわのぞみ)
主人公の恋人。元の世界では主人公に似た暗い性格で、東尋坊で死んだ。パラレルワールドでは明るく活発で元気に生きている。
嵯峨野サキ(さがのさき)
生まれてこなかったはずの主人公の姉。知的で明るい。パラレルワールドでは主人公の代わりに存在していると考えられる。
ボトルネック の簡単なあらすじ
二年前に東尋坊の崖から転落死した恋人を弔うために東尋坊に訪れたぼくは、謎の声に導かれるようにして崖から転落した。しかし次の瞬間、住み慣れた地元の街にいた。とりあえず自宅へ戻るが、そこには存在しないはずの姉、サキがいた。自分が生まれてこなかった世界に迷い込んだことに気づいたぼくは、自分が存在しないほうが世界がうまく回っていることに気づかされていくのだった…。
ボトルネック の起承転結
【起】ボトルネック のあらすじ①
恋人であった諏訪ノゾミは、二年前に東尋坊の崖から落ちて死んでいました。
主人公、嵯峨野リョウは、ノゾミを弔うために東尋坊へと向かいますが、謎の声によびかけられるようにして崖から転落してしまします。
しかし、次の瞬間、リョウは住み慣れた街にいたのでした。
混乱するリョウは一旦家に戻ることにしましたが、自宅にいたのは知らない女性、嵯峨野サキでした。
サキは、リョウの自宅を自分の家であると主張します。
食い違う両者の主張でしたが、リョウもサキも、家族でしかしらない情報を持っており、両者が家族であるというのは疑いようもありませんでした。
この矛盾した状況に対して、サキはある結論を出します。
それは、この世界は今までリョウが住んでいた世界とは違う、パラレルワールドであるというものでした。
リョウが今まで住んでいた世界では、サキは水子として死んでおり、生まれてくることはありませんでした。
しかし、パラレルワールドではサキが無事生まれたため、両親からリョウが生まれてくることはなかったというのです。
【承】ボトルネック のあらすじ②
リョウはサキと共に過ごしていくうちに、自分がもともといた世界とパラレルワールドには、いくつかの違いがあることに気が付きます。
まず、もともといた世界では夫婦仲が壊滅的に悪かったはずの両親が、サキのいるパラレルワールドでは新婚のように仲がいいのです。
また、主人公は東尋坊を訪れたときに、実の兄が死んだという連絡を受けましたが、パラレルワールドでは兄は元気に暮らしています。
また、リョウにとって一番衝撃的であったのが、死んだはずの恋人、諏訪ノゾミが生きているということでした。
それだけではなく、リョウの知る諏訪ノゾミは笑うことのない少女であったのに、この世界でのノゾミはサキと似て明るく活発、よく笑う少女でした。
百八十度異なる人物像であるノゾミに戸惑うリョウでしたが、サキの言葉により、ノゾミは他者を真似る性格であることを知ります。
ノゾミは、もと居た世界ではリョウを、この世界ではサキにそっくりな性格をしていたのです。
リョウは、これらの違いが何かの役に立つのではないかと考え、自分がもと居た世界とパラレルワールドとの「間違い探し」を行うことにするのでしたが、その「間違い探し」にはある共通点があることに気が付いていくのでした…。
【転】ボトルネック のあらすじ③
間違い探しを行っていくうちに、リョウはこれらの違いがすべてサキの行動によってもたらされたものであることを知ります。
サキはとても理知的で明るく、創造力に富んでいて、かつ行動力ももっており、リョウとは全く異なる性格でした。
バタフライエフェクトというように、サキがする行動の一つ一つは、この世界にとって必ず良い方向になるのです。
そしてリョウは、サキが行った最大の功績を知ることになります。
それは、サキがノゾミの死を防いだというものでした。
リョウはノゾミが強風にあおられて崖から転落したものだと思っていましたが、サキはそれは風向きを考えるとありえないと断言します。
そして、実はノゾミの妹である諏訪フミカが、ノゾミが死ぬように陥れていたということが明らかになったのです。
諏訪フミカの策略に気づいたサキは前もってノゾミを保護していたためにノゾミの死を防ぐことができたのでした。
この事実を知ったリョウは、自分の無能さをひしひしと感じるのでした。
【結】ボトルネック のあらすじ④
間違い探しによって、主人公はこの世界の間違いが自分自身であることに気づいていくのです。
この本のタイトルにもなっているボトルネックですが、ボトルネックとは、ボトルの狭まった部分のように、小さな原因のせいで、全体がうまくいかない場合の、その原因のことを表します。
自分さえ存在しなければ、恋人も死ぬことはなく、兄も死ぬことはなく、両親も仲がよく、世界はすべてうまくまわっていったはずなのだということに絶望したリョウは、死にたいと望みます。
しかし、皮肉なことに、死にたいと心から願った瞬間、リョウは元の世界の東尋坊へと戻っていたのでした。
絶望したリョウはそのまま崖から飛び降りようとしますが、それを止めるかのように電話がかかってきます。
しかしその次に母から「帰ってこなくていい」とのメールが届き、リョウは再び悩まされます。
リョウが崖から飛び降りて死んだのか、それとも思いとどまったのかは明確には描かれていません。
ボトルネック を読んだ読書感想
「氷菓」の古典部シリーズで有名な米澤穂信先生には珍しく、切れ味の鋭い作品だと感じました。
この作品は米澤穂信先生が若いことに着想を得て、長い間考え抜いた作品であるそうですが、若い少年少女の悩みを色濃く反映しているのは、そのためだったのだと納得しました。
結局パラレルワールドが存在したのか、それともすべて嵯峨野リョウの妄想であったのか、作中では明らかにされていません。
また、崖から転落するように唆した謎の声や、最後にリョウの自殺を引き留めようとした電話の声など、作品の中には回収されない複線も多く含まれています。
これらの不確定要素は、読者の創造を掻き立てる要因になっているように思えました。
コメント
映画「素晴らしき哉、人生!」の逆パターンのようだ。